ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2016.03.17
平標山
カテゴリー:雪山

2016年3月17日

 

最近は一人で山に行くのがほんとうに億劫になっている。今回も天気が安定する週の前半、気持ちはテントを担いで山に入りたいと思っていた。なのに夜になると億劫になって「まあ、いいや」と寝てしまうこと2晩。これではまずいと日帰に切り替え、アクセスのいい谷川方面の山へ行くことに決めた。最近は家を出るまでが最大の核心だ。ひとたび行動を起こせばあとは無心になって山に向かえることは、わかっているのだけれど、最初の一歩が重い。

と、出だしからこんな心情の吐露では情けないのだけれど、今回はさらに出発してから本来なら好ましくない行動をとってしまった。出発してから歩き始めるまで、行き先が二転三転したのだ。平縹山はもともと予定した山ではなく、成り行きで登ってしまったのだった。

ちょうど去年の3月17日にタカマタギから日白山をへて二居まで日帰縦走した。今年同じようにできるかわからなかったけれど、タカマタギまでなら大丈夫のはずと出発。ところが電車で3月上旬の記録を読むと、最初はまさかの藪漕ぎとあった。雪が少ないのは織り込み済みだが、そこまでとはと、気がなえた。ならば二居から日白山に変更しようと越後湯沢駅のバス停へ。こんなとき、越後湯沢は転戦できるいい山がたくさんある。

スキーヤばかりの停留所で並んでいたら単独の登山者が来たので挨拶すると、平縹山に登るという。それを聞いて、そうか、そういう手もあるなと厚かましく切り出した。「あのーう、一緒に行ってもいいですか」。突然見知らぬ中年女性からこんなことを言われた年上の男性は一瞬驚いたようだった。もちろんそんなこといわずに黙って行ってもよかったのだが。。。こういう行動は以前の自分なら考えられないことだが、バスでおしゃべりしながら登山口へ。

平縹山はそれだけで登ろうと思った事はないが、日白山と繋ぐプランは以前から引き出しに入れてある。そこで急遽偵察山行にしようと理屈をつけた。地図もなく様子がわからなかったが、ひとたび別荘地の林道に入ると5年前に仙ノ倉北尾根を登ったとき下山路で歩いた記憶がよみがえった。

除雪終了点からもトレースは明瞭で、お互いのペースで進むことに。お礼を言って先に行ってもらう。ワカンを履いて雪道を進む。どんどん気温があがり暑い。1時間ほど平坦な道を行くと立派な標識があらわれ、ここから傾斜のある斜面を登る。途中からアイゼンに履き替えると安定感がぐっと増した。

途中から小さく張り出した尾根に乗ると夏道とはずれ、一挙にのぼって稜線に乗る。大きな山容の仙ノ倉山が正面に、その奥に万太郎山が見えるが例年のような白さではない。南面の山々も黒々としている。

意外と早く尾根にでたと思ったが、ここから山頂までが長く感じられた。だだっ広い雪原の緩やかな斜面をたんたんと登る。平縹山と仙ノ倉山が立ちはだかってその先の展望がないため、なんだか単調な登りに感じる。

もともと風が強くて雪が吹き飛ばされる山頂だが、早くも土が出ていて驚く。まずは北面の展望に目をやる。山頂から見る日白山周辺の山並みは穏やかながら意外と凡庸だ。棒立山は小振りながら確かにとんがっている。蓬沢奥の山並みはさすがに白さが違う。足拍子岳は驚くほど黒い。

土がでているので標柱はけっこう身長が高いことがわかった。単独のスキーヤーが西ゼンに滑り降りる所だった。たしかに気持ちのよさそうな大斜面が広がっている。けれど第二スラブの大滝は埋まっていないらしく登り返すとのこと。滑り降りるところを見物しながらテルモスのコーヒーをすする。どちらを見てもスキーに適した斜面がひろがっており、この山はスキーヤーの山だと思う。

最初は仙ノ倉山まで足をのばすことも考えた。時間もあり風も穏やかなので絶好のチャンスではあったが、大きくどっしりと構えた山の往復は単調にみえてそそられない。山頂脇の木道に腰掛けてゆっくりすることにした。

最初から予定していれば松手ルートを下ることもできただろうが、なにしろ今回は付け焼き刃。無難に来た道をもどることにする。大源太山に続く尾根を見渡しながら広い斜面を快適に下る。気持ちがいい。枝尾根の急斜面は雪が腐ってアイゼンでも時々滑る。嫌な所は早く通過したい一心で休憩も取らずにひたすら下る。

林道に下り立った所で時計を見るとまだ1時半だ。バスは4時ちょっと前の時刻しか見て来なかったけれど、このペースだと一本前に間に合いそう。そんなわけで多少飛ばし気味に林道を歩いてバス停にもどった。

予想以上に手軽に登れる山だったけれど、冬はスキーヤーの山だと思った。いまさらながら山には見て楽しめる山と歩いて楽しめる山があることがわかった。

思いつき的な行動ながら、歩き始めに同行させていただいた方にお礼したいと思います。そして、こういう気まぐれは慎むべきだと自戒の意味を込めてあえて記録に書く事にしました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA tairahyou8

登山口バス停8:25−稜線11:10−平標山12:10/12:40−バス停14:35