ブナの沢旅ブナの沢旅
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2015.05.07
浄土平〜谷地平避難小屋〜東大巓〜中大巓〜天元台
カテゴリー:ハイキング

2015年5月7-8日

 

前倒しのマイゴールデンウィークで自分なりに手応えのある単独テント泊山行を3回続け、雪山シーズンを充実して終えることができたと満足していた。去年の今頃は引っ越しの荷物整理に追われて山に行けず辛かったことを思えば、何という違いだろう、と。翌週からまた仕事で留守にするので家で雑事を片付けるつもりだった。

そんなときに吾妻に行かないかとyukiさんから連絡が入った。ずっと入山禁止だった浄土平が道路の開通とあわせて禁止解除になったのだという。手仕舞いモードになっていたことや日程の制約があったのでほんの一瞬迷ったが、小屋泊まりのゆったりしたプランだ。吾妻連峰は2年前に西大巓に登っただけだったので、1分後には身を乗り出し、行きまーす!となった。

クールダウン山行にしようと、すっかりその気になっていた所、ふたたび連絡が入った。バス便は今のところ土日だけで行くとしたらタクシーしかないが、わざわざ1万円ほどのタクシー代を出してまで行く所でもないなど中止をほのめかす。縦走なので車を使わず公共交通機関利用の予定だったのだ。でも、せっかくのチャンス。こんなことでは引き下がれず、タクシー代は自分が負担するから行きたいと申し出る。(結局タクシー代は折半という形で落着。ありがとうございました。)

当日は福島駅で待ち合わせ、相談通りタクシーで浄土平へむかう。平日なのにかなりの車が入っていたが、登山者は私たちだけのよう。初日は避難小屋へ移動するだけなので、のんびり支度をしてyukiさんお手製のシソおにぎりを頬張ってから出発。

しばらくは雪のない木道を進む。登山道に雪がつき始めるとルートがわかりづらくなるが、今回はついて行くだけなので気楽だ。最初の分岐で鎌沼に立ち寄る。どんよりとした空に青空が広がり始め、残雪に沼の青さが引き立つ。水辺に近づくと水面の下に融けきらない氷が張り出しており、そこだけが淡い水色に見える。一切経山北側にある五色沼は今の時期に「魔女の瞳」があらわれると聞いていたけれど、丸い沼の青い水の廻りが水面下の氷の淡い水色に縁取られ、まるで瞳のように見えるのだと、教えてもらう。いつか自分の目で見てみたい。

2体の石像が置かれた姥神からは樹林帯にはいる。登山道はほとんど雪で覆われており、漠然とした地形の樹林帯はルートも判然としない。今回は経験者と一緒なので安心だが、初めてだとわかりにくい。尾根を下るとしだいに谷筋が開け、沢を徒渉。靴を脱がずに渡れるギリギリの水量だ。水辺の湿地にはフキノトウが山のように咲き乱れていた。帰り道なら摘むのだが、今回は見るだけ。

三角屋根の避難小屋に入ると広々として、見たところきれいに使われていた。時間も早いので、ザックを置いて谷地平湿原へ向かう。沢の徒渉が2箇所あるので、様子を見ようというのだ。けっこう増水しており、まずは徒渉点をさがす。なかなかすんなりとはいかない。yukiさんのあとに続いてこわごわと渡るが、重いザックを背負って渡れるか不安になる。3箇所目の沢は雪で覆われて問題ないことを確認して小屋にもどる。

きっと誰も来ないだろうからと二人でザックの中身を目一杯広げる。隣に沢があるので水はいつも豊富な小屋だとわかった。水を汲むと、すぐに手がしびれるほど冷たい。宴会の準備がととのった所でまずはビールで乾杯。のんびりゆったり快適なのがうれしい。今回は一人テントの時と違って食欲がなくなるほど歩いていないので、つまみや何やらがすべて美味しくたくさん食べることができた。一人山行の次なる課題はこのあたりにありそうだ。

翌朝は目覚めた時間が起床時間。とはいえ早く寝たので5時前には起床。テント撤収の手間がないので6時には出発と手際がいい。すべてが格段の違いだが、まだしばらくは山小屋依存症になりたくないと思う。

朝の清々しい谷地平湿原をわたり、沢を徒渉する。昨日予行演習をしておいて良かった。2箇所とも意外とスムーズにクリアできた。あとは稜線に向けてひたすら茫漠とした斜面の樹林帯を緩やかに登って行く。

稜線に近づくと中吾妻山につづく緩やかで大きな山並みをみわたす。針葉樹林で覆われた山は黒々として、見慣れた落葉樹の山とまったく景色が違う。スケールも違う。ふう〜ん、これが吾妻連峰の山並みかと新鮮な気持ち。厳冬期には黒木の樹氷が見事なのだろう。来シーズンの雪山リストに入れたいと思う。

ひとたび登り詰めれば、あとは稜線漫歩。大きなポコのような東大巓を北側から巻いて進むと木道がでている弥兵衛平の湿原地帯となる。きれいに整備された日本庭園風で、緑が萌え始め花が咲き始めたらどんなにか素敵だろうと容易に想像できた。yukiさんによると、吾妻連峰の登山道は福島県と山形県で整備状況が雲泥の差らしい。山形県の整備はボランティアを含め多大の労力と費用を掛けているのに対して、福島県は尾瀬にお金をつぎ込むあまり吾妻は手薄なのだとのこと。それは今回少し歩いても感じられた。

会津や会越の山を歩くと必ず、遥か北東方向に白く浮き上がった飯豊連峰をみわたす。けれど今見える飯豊の山並みはもっとずっと間近だ。地図を見れば飯豊と吾妻は隣同士の山域。いままで馴染みのなかった山の位置をあらためて認識させられた。初めての山は楽しい。すべてを新鮮な気持ちで記憶に刷り込むことができるから。

藤十郎手前の標識で立ち止まる。ここがヤケノママの分岐、との声。中津川を遡行するとここに抜ける。2年前の秋の連休にyukiさんと中津川を計画したが悪天のため中止した。あのときは下流の白骨八丁入口あたりまで登山道をからめながら少し歩き、雨に打たれながら戻った。いつか遡行してここに立てるチャンスがあればいいなあと思いながら先へ進む。

中大巓が近づいた所で北側斜面をトラバースして進む。しばらくするとスキー場との境界を示すロープがあらわれる。けっこう急斜面だったが、yukiさんはロープにそってどんどんトラバースしていくのでトレースを見失わないよう必死でついていく。いい加減疲れてきた頃、見晴らしのいいゲレンデ上部にでた。ちょうどベンチ代わりになる岩があったのでランチタイム。

ここまでくればあとは下に見える建物を目指して下るだけ。緩やかな斜面を滑るように下る。天元台スキー場は今でも営業しており、何人かのスキーヤーが滑っていた。そのままゲレンデを下るつもりだったが、第二リフトの降り口まで下った所でリフト下山できないかと係員に聞いた所乗せてくれるという。

自分で言い出して喜んだのはいいのだけれど、いままでもスキー場のリフトでは冷や汗をかくことしばし。緊張してベンチに座った途端ザックが邪魔で体が投げ出されそうになり、大騒ぎして動いているリフトから飛び降りてしまった。係員は慣れているのか冷静で、リフトを止めて私を空身でベンチに乗せ、ザックを次のベンチに乗せてくれてことなきをえた。yukiさんは初めての目撃なので驚いたかもしれない。最初は徒渉が核心だと思っていたけれど、最後にまたやってしまった。

係員さんに手助けしてもらって最後のリフトに乗り継ぎ、ほとんど雪の消えたゲレンデを下った。言えた義理ではないが、2本で1000円とやや高め。ロープウェイ駅からは新緑まばゆい空中散策を楽しみ、湯本駅に降り立った。

夏のような日差しの中、バス停前の公営日帰温泉へ。念のため米沢行きのバスの時間を確認すると25分後で、そのつぎはさらに2時間後だという。どちらも諦めたくなかったので急いで温泉へ直行し、さっぱりして米沢行きのバスに乗った。

浄土平11:20〜谷地平避難小屋14:30/6:00〜東大巓9:30〜中大巓12:00〜天元台高原13:50