ブナの沢旅ブナの沢旅
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2015.05.25
森吉山〜ヒバクラ岳〜割沢森〜高場森〜中ノ又沢源頭部周回〜黒石川林道
カテゴリー:縦走

2015年5月25-26日

 

雪山も一段落した5月は、ブナの新緑を求めて東北の山を縦走するのが最近の慣行になっている。一昨年の神室連峰も昨年の船形連峰も残雪と新緑と花の縦走を楽しんだ。さて、今年はどこへ行こうかと考える間もなく、奥森吉が浮かんだ。まったくのグリーンフィールドよりは馴染みの山域を、季節を変えルートを変えて再訪するのも悪くない。

これまで奥森吉には3度足を運んでいるが、いつも10月だったので違う季節の姿をみたいと以前から思っていた。今年は雪解けが早いので、沢始めも期待できそうだった。とはいえ今の時期の現地の情報はほとんどなく、雪山でも沢でも対応できる装備でのぞんだ。

今回もマイルを使った無料航空券を利用して夕方大館能代空港へ飛び、レンタカーで現地へ向かった。日の長い5月末のこと、前回は暗闇でわからなかった森吉山ダムの全景を初めて目にすることができた。39年間の工事の末2011年に完成したロックフィルダムだ。10年前に見た沿道の景色との違いに驚く。

奥森吉の観光シーズンはまだ始まっていないため、宿泊した森吉山荘は閑散としていた。前夜のうちにおにぎりを作ってもらい、早朝に出発する。車の回収を考えると森吉山を西から東の奥森吉へと完全縦走するのは難しい。阿仁側は立又渓谷の林道が通行止めとのこと。そこでヒバクラ岳登山口を起点にヒバクラ岳から森吉山をピストンすることにして、奥森吉へ進み、中ノ又沢源頭部を歩道と沢をからめて周回し、最後は長い林道を歩いてヒバクラ岳登山口へ戻ることにした。

ヒバクラ岳登山口から歩き始めるとすぐにミズバショウの木道となる。うれしさに早くも歓声をあげる。その後も至る所にミズバショウが咲いており、季節を変えると新しい発見があることを実感する。青空にはえるブナの新緑はいまだ初々しさをとどめている。

しばらく登ると残雪が顕著になり、林層もブナから針葉樹に変わる。のっぺりした雪の斜面では登山道がわかりずらくなる。赤テープを探しながら進むが、ときどき見失ってうろうろする。登山道はヒバクラ岳を回り込むようについている。

湿原の稜線にでる。湿原はようやく雪解けが始まった様子。ヒバクラ分岐でザックをおろす。不要な装備をデポし、空身で森吉山へ向かう。森吉山はまだ雪がたっぷりついており、残雪期の雪山登山にタイムシフトする。当然登山道も雪で埋もれている。登りやすそうな斜面をキックステップで登る。振り返ると黒木のたおやかな山並みが広がり、ミニ吾妻のようだと思う。

山頂に近づくと薮もでてくるので登山道を探す。岩がゴロゴロする道をたどって広い山頂へ。連瀬沢を遡行して登った前回は紅葉の山並みを見下ろした。展望は霞んでいたが、淡い緑の山並みが果てしなく広がり、岩手山や八幡平、乳頭山を遠望。森吉山は1500mに満たない「低山」だが、四方に大きく裾野を広げた独立峰はそれだけで一つの山域をつくるほど豊かで多様な自然を抱える。

緩やかな雪の大斜面を快適にくだり、デポ地にもどる。ふたたび重いザックを背負って奥森吉の縦走路を進む。1280m峰の北斜面はいまだ雪山の容相だが、中腹からは芽吹いたブナ林が淡い緑のグラデーションをなして裾野に広がる。思わず足をとめ、ああ、この景色を見たくてやってきたのだと心でつぶやく。

低灌木の痩せ尾根を進んで1280m峰を越えると尾根が広がり、雪がついているところではしばしば道を失う。道を見つけてもかなり薮で覆われている。あまり歩かれていない様子だ。1100mまで下るとブナ林帯となり、道も明瞭で歩きやすくなる。しばらく気持ちよく下る。

割沢森手前の鞍部は地図からも予想できたが、だだっ広い台地となる。しかも全面雪で覆われていてたちまち方向を見失う。割沢森の方向に登れば尾根が明瞭になって登山道に合流するはずだが、雪と薮のミックスでまだ先が長い。これまでもルートファインディングで神経をつかい藪漕ぎもあったので、いい加減疲れてきた。完全に雪で覆われていればどこでも歩けるが、雪がないところでは道を外すと完全な薮になる。それが結構やっかいだった。相談の結果、水が作れる雪面台地で行動を終えることにした。

よりよい物件を探して多少うろつき、ブナに囲まれた平坦地でザックをおろした。なんだか疲れたが、ずっと思い描いていた残雪と新緑のブナ林のど真ん中で泊まれることを喜ぶ。さっそくテントを張り、手分けをして水作りと焚木集めに精をだす。

当初の予定通りには歩けなかったけれど、すてきなテンバに満足して乾杯。焚火のほのかに青い煙があたりに広がり、残照のブナ林を演出しているかのようだ。うるさかった虫もいなくなり、焚火が燃え尽きるころ日が暮れてテントに入った。

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翌日も快晴の気配。簡単に朝食を済ませ手際よく支度をする。雪面を拾いながら割沢森の尾根に乗ると思わぬところに登山道があった。最後に道を見失ったところからどのように繋がっていたのだろう。若葉マークの8年半前には何の苦労もなく歩いたのに、今回こんなに苦労するとは。。

悪沢森は樹林に囲まれた小さなポコだが、このあたりから標識が出始め道もさらにしっかりしたものになる。急斜面につけられた古い木の階段下ると雪の広い鞍部となる。ここは下山路につかう黒石川林道との分岐だ。コンパスで方向を確かめて高場森方向の道へ進む。

しばらくすると桃洞杉と呼ばれる天然杉の巨木があらわれる。学術的にも貴重な植生の天然杉であることを前回歩いたときに知った。高場森でザックをおろし、森吉山をピストンしたときのように不要な荷物をデポする。ここから歩道を南下して中ノ又渓谷の源流部を周回するのだ。

左手に近づいてきた桃洞沢の源頭部はどの枝沢もびっしりと雪で覆われている。2011年に詰め上げた地点は2本のブナが門を作っているところで、記憶にある景色とまったく違う。すべてが雪で覆われ明るくすっきりしている。簡単に雪面をくだって源頭部に立ってみた。見上げる尾根のブナ林がまぶしいくらいに美しい。季節を変えた再訪の醍醐味だと思う。

前回は尾根に上がってから対岸の枝沢を下ったが、あとで道があることを知った。今回はその道を下ることにした。細かな枝沢を横切りながら道が付いていた。降り立ったところはトウドウ沢(ややこしいが桃洞沢とは別の中ノ又沢の枝沢)出合い。ナメの岩盤が広場のようで、休憩するにはもってこいのところだった。そのうえ水辺にはミズバショウとリュウキンカ、キクザキイチゲのちょっとしたお花畑になっていた。

トウドウ沢は甌穴が多段の滝の容相をみせ、陽の光に輝いていた。再びこの場所にたてたことを喜び、二人でいいねーを連発する。雪の森吉山からブナの尾根を下り、水量豊かな沢へ降り立つという春ならではの展開がうれしい。ここで沢靴に履き替え、中ノ又沢本流へ進んでみる。

こちらは雪解け水で少し濁って水量も多め。ゴルジュが近づいたところで左岸のスラブに上がってトラバースするのだが、雪がついていて嫌らしい。足下に不安を覚えたので無理することもないと引き返す。前回はスラブのトラバースでステップが掘ってあったところだ。

出合いに戻り、沢がダメなら歩道探索をしようということに。いったい沢に下ってきた道はどのように続いているのだろう。地図では対岸に延びているが対岸は急斜面の草付きスラブ。ああだこうだと目を凝らし、ようやくルートを見つける。道があることを知らないとおそらく見つからないだろう。途中まで登ると古いトラロープがかかっていた。ひとたび尾根に乗り上げると、意外にもそこは別世界のすてきなブナの遊歩道。これでもかと、新しい発見の連続だ。沢をやめてよかったと言い合う。

金兵衛沢に下るところでは、眼下に雪で覆われた広い源頭部が広がる。とても美しい光景なのだが、これからどう進んでいいのか見当がつかない。地図とGPS、コンパスを総動員して方向を定め、地形を確認しながら歩いていくと、あった!昨日からこんなことの繰り返し。けれど明瞭な道を迷うことなくすんなり進むよりは何倍も面白いし、歩きがいがある。

佐渡杉分岐の標識までやってきた。これで前回歩いた地点へ合流だ。南へ下ると天然杉の巨木帯となり、さらに南下すると立又渓谷の源流部に沿った奥阿仁歩道となる。前回は佐渡杉探検から戻り、ここでコーヒーを入れていたら地元のキノコ狩りのグループに会った。それで彼らがどこからやってきたのか興味を持った。それが今回新しく歩いた道に繋がった。あれこれ思い出を交えながら、今回もお湯をわかしてコーヒーを入れた。

つぎの甚兵衛沢に下ったところでは、一部に水がでていてミズバショウの群生地になっていた。もう歓喜の連続で、なかなか先へ進めない。そして3本目の沢はトウドウ沢の源流部。ミズバショウやリュウキンカ、ショウジョウバカマ、キクザキイチゲが咲き乱れる沢沿いの道をたどり、高場森へ続く登山道に合流した。5月の奥森吉源流部は桃源郷のような光景が広がっていたのだった。

思いがけない光景の連続に足が進まずのんびりしたが、帰り道になって時間が気になり始めた。高場森で荷物を回収し、割沢森手前の分岐から林道へ続く道へ進む。そういえば前回も時間を忘れ、林道に降り立ってあと5キロの標識に啞然とした。幸いパトロールの車に拾ってもらい最後は樂をして戻ることができた。今回はどうだろう。

車が入らないことは少し歩いてわかった。途中の沢を横切る道が崩壊していたのだ。さらに進むと通行止めのサインとロープが張られていた。下山時の長い林道歩きは足にこたえて嫌いなのだが、沿道の花や森に目が慰められたせいか、それほど辛く感じることもなかった。

正規の車道にでたところでザックをおろし、のどかな山麓の景色や歩いた山並みを見わたしながら車止めの農道を歩いて登山口へ。ポツンと止まっている車を見てホッとし、ただいま〜と、ドアを開ける。久しぶりの11時間行動になってしまったが、雪と沢の二つのシーズンが交錯する良い時期に歩くことができた幸運に感謝したい。

デポしたザックを回収し、今宵の泊まり場を求めて野生鳥獣センターへ向かった。

(sugi、ako)

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25日 ヒバクラ岳登山口7:15−ヒバクラ分岐10:15−森吉山11:35−小池ヶ原13:50−950m鞍部幕営地15:10
26日 幕営地6:05−割沢森6:53−高場森8:07−トウドウ沢出合9:53/10:40−裏安ノ滝歩道−佐渡杉分岐11:55−高場森14:05−黒石川林道15:22−ヒバクラ岳登山口17:05

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