ブナの沢旅ブナの沢旅
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2015.05.27
赤水沢〜赤水峠
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2015年5月27日

 

奥森吉縦走後、野生鳥獣センターへ向かった。最初はこれまで何度かお世話になったキャンプ場の施設を利用する予定だったが、まだ閉鎖されて中には入れない。ならばと、翌日の入山地点に移動して適当な場所でテントを張ることにした。鳥獣センターも5月一杯は閉館している。屋外の水道場が使えたので軒先を借りた。

当初、3日目はきわめてポピュラーかつオーソドックスな桃洞沢〜赤水沢下降を考えた。桃洞沢は2度遡行してるが赤水沢下降はまだだった。でも地図を広げで思う。誰も行かないコースを歩いてみたいと。

赤水沢から玉川温泉に抜けるルートは以前から興味があった。今までは他に優先順位の高いルートあったので手が回らなかっただけのこと。今回で奥森吉縦走路は一応全ルートをカバーした。また桃洞沢へ行くのもどうかなー。兎滝がハイライトの赤水沢下降も、正直それほどそそられていない。そんなことを伝えるとsugiさんも同感の様子。というか最初から赤水峠を押していた。

そんなわけで、定番ルートだから抑えておこうという色気をすて、すごく地味だけど、ブナ林が美しいという赤水峠に決めた。最初は物足りないかとも思ったが、ひとたび決めると、その方がブナの沢旅らしいと思えてきた。

地元ガイドの解説によれば、戦前までは赤水沢から赤水峠は地元集落の住民が田植えを終えたあとの骨休みに通った湯治場の道だったという。つまり古のリゾートルートだったのだ。

朝起きると小雨模様。予報と違うといぶかしく思うが、これまでも晴れ予報がドタキャンされたことがあったので、念のため携帯電波が通じるキャンプ場の管理棟まで行って山岳予報をチェックする。雨に変わっていたら沢遡行は中止して観光しよう。そういえば前回もそうだった。けれど予報は曇りと晴れマークでとくに変わっていない。そうこうしているうちに雨がやんだので出発する。(こんなことがなければ1時間早く出発して、赤水峠から柳沢林道までいけたのに。。。)

ノロ川沿いの遊歩道はブナが美しい道だ。沿道の花の盛りはこれからの様子だが、それでもカタクリの群生や、なによりもシラネアオイを見ることが出来てうれしい。私にとっては花の女王様。一年に一度は謁見したい。

桃洞・赤水分岐から沢に下る。sugiさんを沢の世界に引き込んだ所だ。甌穴のナメ床を徒渉して赤水沢に入る。しばらくは沢沿いの遊歩道を進み、平ナメになったところで沢に下る。

広い沢幅一杯の舗装道路のようなナメがつづく。なにしろここは玉川温泉リゾートロード、そこいらの悪路より歩きやすい。両岸の急斜面のスラブを見上げると尾根には秋田杉が並んでいる。奥森吉はブナと秋田杉の棲み分けという興味深い植生をもつ。

ほとんど変化のない沢を進むと沢幅一杯が雪渓で覆われている。乗り越して沢に降りると再び雪渓。二箇所だけ両岸の地形的にデブリがたまりやすいようだ。

すぐに二俣となる。兎滝のある本流を分けて左の沢へ進むと一挙に沢幅が半減する。少し傾斜がでてきて、小滝ともいえない小滝と甌穴が連続する。こんな所も昔の道だったのか、以前は巻き道があったのか。そんなことをぼんやり考えながら進む。

倒木が行く手を遮る所でちょっとしたハプニング。倒木に乗りあげ、枯葉で覆われた地面だと思って着地したところで水没!一瞬のできごとだった。胸までつかり大騒ぎする。そこは深い釜だったのだ。sugiさんの代わりに犠牲になったと文句をいいながらほうほうの態で這い上がる。すっかり戦意喪失するが、しばらく休んで気を取り直し、吹っ切れた気持ちで先へ進む。

のっぺりして登れそうにない3m滝に近づくとクサリが付けられ、そのうえスタンス用にボルトが打たれていた。有りがたく使わせてもらう。

小さな二俣には柳沢林道を示す古いブリキの標識があった。左の小沢に入る。ここは沢沿いに道が付いており、しばらくはぬかるみの道を進む。ふたたび雪渓があらわれ、源頭部はびっしりと雪で覆われていた。

しだいに両岸が低くなり、ブナ林が広がる。最後は雪渓がきれ、沢は細い一条の筋となって森に消えている。フィナーレの小径を上がると、そこが赤水峠だった。予想していたよりも広く開放的な台地だ。ブナ林に囲まれた広場なので展望はないが、南東の端だけ一部が切り開かれ岩手山と八幡平方面をのぞむ。

赤水峠。この響きだけで歴史の郷愁をさそう峠にやってきた。奥森吉に1度や2度来ただけでは来ることもない、ひっそりとした地味な場所だ。まあ、地元ではガイドツアーもあるらしいので、東京方面からやってきた人間の、センチメンタルな自己満足だということはわかっているが。。。

さあここでゆっくりお茶をしようとsugiさんがガスを出して準備をしている間、少し先へ進んでみる。なかなかいい雰囲気の道が続いているではないか。一旦戻って一緒に850mの最高点まで歩くことにした。

途中、道の真ん中に真新しい熊の糞があり、あわてて笛を吹きながら歩く。すると今度はsugiさんが面白い看板があると言って足をとめる。読んでビックリ。「危険 これより奥は森吉町です遭難します−−−」と書かれていた。こんな書き方はないと、話題彷彿。

確かに何も知らないハイカーが玉川温泉方向からやってきて、赤水峠を越えて下っていけば沢になるので危険だ。ならばもっと言い方があるはず。それに赤水峠の手前でこんな看板をたてるのは、あのステキな峠に行かずに引き返せと言わんばかり。森吉町にけんかを売ってるみたいだという話になり、そもそも観光の田沢湖町とネイチャーガイド主流の森吉町では自然を楽しむ思想が違うのだろう。

尾根が痩せて両側が開ける地点には切り株ベンチがあり、かすんだ山並みの山座同定もどきをして峠に戻る。お茶でくつろぎながら想像をふくらませる。玉川温泉は冬期も開業している。ここを起点に赤水峠の境界尾根北にあるブナの山を繋いで歩くのも面白そうだ等々。

温泉を入れた帰路の時間を逆算すると、あまりのんびりはしていられない。紅葉の時期はさぞかしきれいだろうが、いったい赤水峠にまた来る機会があるのだろうか。なんとなく最後のお別れを感じながら峠を下る。

いくつかのナメ小滝を慎重に下り、赤水沢本流に戻る。これで一安心だ。滑らかな沢を気持ちよく歩いて左岸の踏み跡に上がるころ、雨が降り出した。あとは森の中を歩くだけなので多少の雨は気にならない。行きに気づかなかった花に足を止めながら最後の余韻を楽しみ、鳥獣センターにもどった。(ako、sugi)

野生鳥獣センター7:05−桃洞・赤水分岐8:00−赤水・玉川分岐9:25−赤水峠11:00/12:00−野生鳥獣センター15:10

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