ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2014.11.08
浅草岳
カテゴリー:ハイキング

2014年11月8日

 

 

大滝沢の遡行を終え、遊歩道を歩きながらテンバについて思案する。朝に遡行の順番を変えたときは野尻川にまわって白沢に入り、適当な所でテントを張るなどと軽く考えていたが、車にもどるまで、10m歩くごとに日和る気持ちが増幅し、ついに気まぐれの提案が口からこぼれる。

「もともと白沢を最初にしたのは大滝沢の後でがっかりしないため。明日白沢に入っても今日のような充実感はないはずだし印象がうすいと思うのよね。それに、焚き火ができないのならテントにこだわる意味ないわけよ。なんだか体が冷えちゃったし、このさい宿に泊まって明日はハイキングに切り替えるっていうのはどうかしら〜」

さすがにsugiさんは、あまりのあけすけな言いように少し呆れたようだったが、まんざらその気がないわけでもなかった様子。渡りに舟とばかり、まあそれも悪くないと了解してくれた。ハイキングの山はすぐに決まった。入叶津からブナの平石山をへて浅草岳へ。じつは先月白毛門に登ったとき、ほんとは浅草岳に行きたかった。でも電車だと2日必要なので気まぐれでは行けない山だった。

浅草岳ならば泊まるのは只見がいいと駅前の前回泊まった民宿へ。玄関をあけ、食事の支度中の台所に入って恐る恐る部屋はあるかと聞いてみた。素泊まりでかまわないというと、ご主人が部屋を整えてくれたうえ、奥さんが食事もなんとかしてくれると言う。予想外の展開にホッとするやらうれしいやら。風呂で温まり、食べきれないほどの料理でもてなしてもらい一日を終えた。

翌日は5時に宿を出発して入叶津の登山口へ向かう。私たちが一番乗りだと思ったが、結局入叶津のコースでは終日誰にも会わなかった。登山道に入り、まずは山神杉峠へ向かう。早朝のガスもしだいに薄れ、予報通り青空が広がる。

山神杉峠でザックをおろし、小尾根の先まで進んでみると、見渡す限りの雲海が広がり、壮観な眺めだ。たった数百メートルの標高なのに、低山の山並みが雲海から頭を出している様は貫禄十分。さすがに越後会津の山々だと感じ入る。

沼ノ平へ下る道は長いこと登山禁止となっているが、すばらしいブナのプロムナードが続いている。新緑のときと残雪期、それぞれステキな山歩きができた記憶がよみがえる。沼ノ平はかなり崩壊しているようだが、一度現地調査もかねて入ってみたいと思う。

山神杉峠からはしばらく、急斜面の山腹をジグザグに登って行く。途中登山道が崩壊している所もあるが、ロープが掛けられ踏み跡がしっかりしているので問題なし。傾斜が緩むとブナ林が広がり、待ってましたのブナロード。真っ青な空の下、落ち葉をサクサク踏みながらゆったりと歩を進める。転戦して大正解だったねと、頬が緩む。けれど白沢山をめぐる沢歩きも捨てたわけじゃない。またちゃんと準備をして出直したいと思う。

沼ノ平分岐の標識は熊に噛まれたのだろうか。不自然な割れ方をして半分ちぎれ落ちていた。2008年5月に沼ノ平からこの辺りに登り詰めたときはまだ残雪が豊富だった。新緑と残雪のコントラストが美しかった。けれど途中で道がわからなくなり、急斜面を這い上がったりヤブコギしたり、sugiさんが途中でメガネをなくしたりと、よちよち歩きのブナの沢旅だった。

そんな思い出話をしながら平石山へ。このコースは歩きやすい分、距離が長い。それほど展望がいい訳でもない。だから歩く人が少なくて静かだ。けれど私にとって浅草岳とは、入叶津から登る山であり続けているし、これからも変わらないだろう。

樹林帯を抜けると景色が一変する。だだっ広い斜面は一面雪で覆われていた。別世界に入り込んだようで、思わずの歓声。昨日沢納めしたばかりなのに、今度は雪山始めのようだと喜ぶ。雪面をトラバースして緩やかな斜面を登っていく。2010年4月には沼ノ平から猿崖、大三本沢右岸尾根をたどってこの雪面を快適に登った。登るにつれ川内山塊の山並みが広がる。ワクワクしてくる。

稜線に乗るとさらに展望は広がり鬼ヶ面の岸壁が迫ってくる。その奥には山頂が真っ白な中ノ岳が聳える。そういえば厳冬期に北岳からあの鬼ヶ面の上を歩いたなあ。あの岸壁の際で、samさんたらチキンゲームしようぜなんて言ったんだよ。いろんな思い出を抱えながら山頂へ。低灌木は一面樹氷に覆われていて美しい。

誰もいないことを期待したが、単独の男性が写真をとっていた。新潟側から入るともっと短時間で登れるらしい。男性が登山地図をしまう所を見逃さず、おばさん力を発揮して地図を借りる。これまで登った山々が目白押だ。いつも探す南会津の丸山岳と川内の矢筈岳。4月に行った狢ヶ森。あんなに素晴らしい山行だったのに、浅草岳から見ると山と言えるのかというほどの小山にしか見えない。雪をまとうとこうも変わるものなのか。そのギャップがこの山塊の魅力なのだと思う。

二人であれこれ思い出混じりに山座同定に夢中になっていると、突然「あのー、写真とりたいんですけど〜(どいてくれませんか)」の声。夢中になって単独さんの写真撮影を邪魔していたらしい。そうこうしているうちに新潟側からもハイカーが2組登ってきて賑やかになる。そろそろ下山の潮時のようだ。

雄大な展望を眺めながら広い尾根を快適に下る。そういえば避難小屋が見当たらないと思った所、下山して調べたら2008年9月に解体されたとのこと。好きな山といいながら、私たちは浦島太郎状態だった。同じ年の4月に雪に埋もれた小屋の屋根を見つけて小躍りしたことがなつかしい。

つきない思い出をいつまでも抱えながら来た道を戻って登山口に降り立った。急ごしらえの浅草岳だったが、ブナの沢旅のたくさんの思い出が詰まっている山だった。(sugi、ako)

asakusa1 asakusa2

入叶津登山口6:10−山神杉7:05/7:20−沼ノ平分岐8:30−浅草岳10:15/10:35−登山口13:45