ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.09.14
泉水谷小室川谷
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2014年9月14-15日

 

連休は各地の天気がまずまずの模様なので少し遠出の沢へ行きたいと思い、上信越国境周辺の沢を投げかけてみた。けれどkukenさんは体調に多少の不安を感じている様子。そこでパートナーが土地勘があっていつでもエスケープできる馴染みの奥多摩奥秩父方面で、かねてから私の沢リストに眠り続けていた小室川谷が浮上した。

具体的に調べると結構苦労しているパーティの記録が目にとまる。なんだかイヤな予感を抱きながら前日の夜にいつもの飯能駅に集合。最初に提案した上信越の某沢ではなく、kukenさんはもっと難しそうな小室川谷を選んだのだから、リーダーやってねーと、早くも弱気なおまかせ宣言。

連休中なのに三条新橋ゲート前には一台も駐車していない。意外に思いながら片隅にテントを張る。するとkukenさんがワインを取り出し、誕生日を祝ってくれた。もうこれ以上歳は取りたくないので忘れたい所だけれど、気に留めてくれていたことがとても嬉しかった。その上プレゼントまでもらったが、これはシーズンが変わったらお披露目しよう。

早朝外に出ると他にも何台か車が止まっていたが、釣り師とキノコ狩りの人達で、沢パーティはいない様子。こんなにいい天気の連休なのにといぶかしく思ったが、みなさんもっと遠くの沢へ繰り出しているのだろう。

しきりに不安がる私とは対照的にkukenさんはいたって暢気だ。というのも5月に小室川谷左岸尾根を歩いており、上流の山道横断点附近の雰囲気はいたって穏やかな「ちょろい沢」に見えたらしい。

林道を30分ほど歩いて小室向の標識から沢に下る。しばらくは川原歩きでウォーミングアップ。水量は多少多目ながら歩行困難ということはなく、ひとまず安堵する。滝が出始めるが直登できる滝は少ない。巻くのも難しそうな滝には必ずと言っていいほどトラロープがかかっている。さすがに人気の沢だ。しだいになんとかなるという安心感が広がる。

kukenさんはしきりに春に歩いた左岸道と沢の位置関係を観察している。そして30分ほど歩いた所で左岸の上を指差し、山道の石積みが見えることを教えてくれた。数年前に大崩壊したようだが、今ではしっかりとした踏み跡がついて問題ないとのこと。

続いてあらわれる右岸の古いワサビ田は苔蒸して自然に回帰している。心が落ち着く光景だ。一方、沢といえば、しだいにトロの多い廊下となり、薄暗い雰囲気のヘツリが多くなる。谷が左に曲がるといよいよS字峡の悪場だ。最初の6m滝を右岸から巻くとテラスに幾つもの懸垂支点。中にはとんでもない場所にあったりして興味深い。着地点が見えないのでkukenさんに先行してもらう。気をつけないと滝側に振られそうで緊張する。

懸垂で沢に下り、えいっ、と流れを飛び越えて左岸に渡る。谷幅はさらに狭く切り立った壁のゴルジュをへつって進み、最後の5m滝を巻くと松尾沢出合いだった。最初の核心を終えたが、思ったほど悪くなかったと言い合う。

松尾沢を過ぎると再び両岸が開けて川原となるが、長続きしない。ずっと川原歩きでもいいのにと、心の声。すぐに廊下状となり小滝が続く。石門ノ滝4mを前にしてはたと悩む。左壁に残置があるがとても登れる気がしない。だからといって両岸は切り立った壁で高巻きもできない。唯一の可能性は少し手前の左壁だが、下部はハング気味。少し上に残置ハーケンが見えたが、みんなどうやって登ってるんだろう。仕方なくkukenさんに肩をかして乗り上げてもらい、なんとか離陸に成功。するとなんていうことはない、スリングが上に放置されていたのだった。

誰ともわからない先行者に向かい、使ったお助け紐はちゃんと元に戻してから行ってよね!と苦言。じつは同日に単独の先行者がいるらしいことは足跡から察知していた。余談だが、私も以前逆の立場で同じ経験をしている。余裕がないままロープをたぐり寄せて登り、ロープをもとに戻すことを忘れてしまったのだ。そのときは後続する同行者がいたので注意をうけて気付いた。

とはいえ残置があっても苦戦。とくに2段目ののっぺりした土壁のような岩を這い上がる所で立ち往生となり、最後は品物のようになって引き上げてもらったのだった。情けないことこの上ない。そのせいでもないが、小室ノ淵は右岸を「簡単に」巻いて通過し、中ノ沢出合いへ。

初日は少なくとも中ノ沢を越えれば良しとしていたので、ひとまずノルマをクリア。ホッとしたところで休憩し、これからは開けてきれいな渓相になるのだという期待をこめ、ヘルメットを脱ぎ捨てハイキング帽にかえる。

中ノ沢を少し詰めると左岸道が横断し、容易に小室川谷出合いに戻れるらしい。朝話を交わした釣り師は逆に中ノ沢まで左岸道を登って上流を釣り歩くとのこと。なるほど、ね。

先へ進むとゴルジュとなるが下流ほど側壁はなく容易に進むことができる。幅広のナメ滝やナメもあらわれ別の沢に変身したようだ。深い釜を持つ10m雨乞ノ滝を右岸から巻いて沢に下り歓声をあげる。想像以上に規模の大きな4段30m滝のダイナミックかつ優雅な姿が目に飛び込んで来たのだ。

この滝を見たくて小室川谷に憧れていたようなもの。ようやく本物の姿を見ることができた。1段目の美しい末広がりのナメ滝上にいたkukenさんの姿が孤高の沢やという雰囲気でカッコいい。なんて絵になる光景だろうと、あわててカメラに収める。

1段目は水流の真ん中を幸せ気分で登り、2段目は少し水際をサクサク登る。3段目は右岸を巻くと4段目は左岸に残置ロープが見えたがそのまま巻いて滝上へ。巻いてばかりだが、それでも充分に楽しかった。

少し進むと山道横断点のテープがあらわれ、開けた段丘広場となる。横には小沢が流れて水場も近い。その上未使用の焚き木が山積みされている。急に大雨にでも降られてしまったのだろうか。時間的にはもう少し進みたい気もしたが、どうも適地はなさそうなので行動を終えることにした。

今回は久しぶりにツェルトを持って来た。沢の会に入会した10年前、秋の沢集中が平ヶ岳だった。私は一番やさしい恋ノ岐パーティに参加し、そのときに購入したもの。あれからなぜか1度も使うことがなかったが、ようやく陽の目をみることに。なにを今更と言われそうだが充分に快適で問題なかった。あえていえば、テントよりも設営に手間がかかるのと、虫がいるとどうだろうか。

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ここまでくれば翌日は楽勝と甘い見通しで、翌朝は焚き火でまったりとした時間を過ごし、いつもより遅く出発する。きれいなナメ滝が続き、薄暗いゴルジュを高巻いてばかりいた昨日とは大違い。

一連のナメ滝群が終わるとちょっと荒れた雰囲気となり中州台地にテンバ適地があらわれる。こちらもなかなか良さそうだが、沢から少し離れているので、隣に小沢が流れていた私たちのテンバの方がよかったなどと言いながら通過。すぐに蛇抜沢出合いとなる。

左の本流へ進む。斜度が増してぐいぐい高度を稼いでいく。水量はぐっと減るが1800m附近まで続いていた。気持ちよくどこでも登れる多段12m滝を越えると水量は細いけれど苔むした棚滝がつづく。しだいに足どりが重くなるが、高度計を見るたびに標高が上がっていくのがせめてもの慰めだ。

水流が途絶えたガレ沢を淡々と登る。最後は枝尾根に上がり獣道を拾いながら登山道にでた。息も絶え絶えの状態ながらすがすがしい気持ちでkukenさんと握手。沢装備をといてハイカーとなる。最後までとっておいたパイナップルが適度にもまれて熟成し、近年になく美味しく感じられた。少し元気を取り戻し、まずは大菩薩嶺へ。

人の多さに驚く。大菩薩は10年ぶりだが、最初に来たときは積雪期でほとんど人に会わなかった記憶しかなかった。ひっきりなしに老若男女のハイカーが往来し、まるで丹沢の塔ノ岳のようだ。

大菩薩嶺の標識を入れた写真を撮り、丸川峠へ向かう。樹林帯の道は歩きやすいが予想以上に長い道のりで時間がかかった。この間下山路をどうするか相談する。最初は大黒茂谷を下降するなんていう計画もあったがとんでもないことはすぐに判明。つぎに大黒茂谷左岸尾根の地図に出ている山道を下ろうという話が浮上。けれど二人とも疲れていたし、それほど時間が変わらないようなら長くても安心な林道歩きをした方がいい。

そうと決まれば丸川荘でドリップコーヒーを飲んで休むことに。時間も押しているので他に登山者もおらず小屋番のおじさんは暇そうにしていた。これからまだ長い道のりなので一番元気がでるコーヒーを注文したらコロンビア。

多目に入れてくれたコーヒーをすすりながら小屋番さんと話を始めると、次から次と止まらない。連休中に沢登りのパーティはいなかったとのこと。さらに昔の話にさかのぼり、90年台の半ばに奥多摩の谷に関するガイド本が出た直後の事情へ。ガイドブックのコースタイムを当てにして多くの入渓者を見たが、夜中に食べ物を求めたり泊めてほしいとやってくる人達が続出。さらに遭難者も出たりして大変だったこと、都の消防隊員も遭難したなど、生々しい話がてんこ盛り。こういう話は山荘に立ち寄る沢やの多くにしているらしく、当時はよほど苦い思いをしたのだろう。

そもそも沢のコースタイムほど当てにできないものはなく、登山道と違って条件次第で2倍にも3倍にもなってしまう。それは経験的にもわかっているので、私の場合はガイドに出ている沢は最低5割増しくらいに余裕を持たせている。今回も特にどこかで時間をロスしたとか苦労したとかはなかったけれど、登山道に出るまでに12時間ほどかかってしまった。

話は尽きないが先が長いので30分ほどで出発。大黒茂谷林道の近道は沢パーティみなが一度は考えるらしいが、歩きにくい山道が長く不明瞭ですすめられないとのこと。予定通り牛首谷へ下る。快適な登山道だ。kukenさんはいつもながら下りではキノコ目となり、いろいろと収穫しながら林道へ。ここからは泉水谷の美しい渓相で気を紛らわしながら長い道のりを三条新橋へもどった。(kuken、ako)

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三条新橋ゲート6:50−小室川谷7:50−中ノ沢出合−1230m山道横断点テンバ14:55//7:30−蛇抜沢出合9:10−登山道12:10/12:45−大菩薩嶺13:15−丸川峠14:30/15:00−牛首谷橋15:30−三条新橋ゲート17:30

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