ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.07.12
滝川豆焼沢
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2014年7月12-13日

 

台風の影響で週末の予定が立たなかったが、台風のおかげでめずらしく3連休になったというkukenさんを豆焼沢に誘った。急ごしらえの山行となったが、すでに2度遡行しているので様子がわかっている安心感がある。梅雨の最中であり、このところの大雨もあるので増水の程度が気がかりだったが、パワーのあるパートナーと一緒なので大丈夫なはず。

そそくさと支度をして前夜に飯能駅で待ち合わせる。便利なことに今では横浜から飯能まで乗り換えなしで行ける。過去2回は山梨側から雁坂トンネルを越えたが、今回は秩父側から入る。食事をして出会いの丘の駐車場へ向かい、軒下にテントを張って仮眠。

豆焼沢は人気の沢なので駐車場で他の沢パーティに会うかと思ったら意外といない。一組だけ若者パーティがいたので声をかけた所古礼沢に入るという。それも下流の滝川から遡行するのだと。ただでさえ水量豊富で大変だと思うが、若者はそれが楽しいのだろう。古礼沢はいつか遡行したいと思っているが、水流に弱いので下流はパスしないと無理だろう。

ヘリポートの裏から踏み跡をたどって山腹を進み、沢が見えてきた所で適当に斜面を下って沢に降り立つ。やはり水量は多めの印象だ。最初は小滝が続くが、どれも増水で真っ白。取りつく島もなく巻きながら進む。ちょっとした徒渉も水勢が強くて体力を消耗する。

幅広6m滝も水量多く威圧的だ。水しぶきを浴びて右岸にトラバースして岩壁を見上げる。ここは前回空身で登ったところだ。kukenさんが登り、ロープを出してもらう。それでもやっとのことで登る。ロープをつけたまま側壁をトラバース気味に登ったゴルジュの手前で行き詰まる。水勢が強くてとても進めない。足をすくわれるとすぐ滝下まで流されてしまいそうだ。こういうときはパートナーが頼もしい。対岸に飛び渡り、ここでもロープを出してもらう。

先が思いやられそうな気配を感じながらホチの滝へ。初めてのkukenさんは橋の下から大滝が落ちていることを珍しがっている。前回は滝壺の川原で休憩したのだが、増水で川原が水没している。楚々と優雅に水を落としていたホチの滝だったが、今回は豪快だ。明瞭な踏み跡をたどって右岸から高巻く。

その後も小滝が続くが、登れる滝は一つもなく高巻いたり水勢に手こずったりして時間がかかる。難しいというのではないけれど、とにかく全てに時間がかかるのだ。トオの滝に着いたときには疲れきってしまい、このまま山道をたどって戻ってもいいなんて、一瞬思ってしまう。

少し進むと前回泊まった広い川原があらわれるが、まだ時間があるのでとにかく大滝をめざす。滝がこれまでよりも大振りになってきた。前回の記録では、登れる滝が続いて楽しいなんて書いてあるところだ。なのに、どれ一つ取り付けない。幸いどの滝も巻き道ルートは明瞭で、悪い所には釣り師のトラロープがかかっていた。

しばらく行くとうっすらと焚き火の臭いがただよう。ほんのわずかだが明らかに焚き火だ。この辺りにテンバはないはずなのだが、あとで大滝上のテンバ適地からただよっていたことがわかる。こんなに遠くまで煙はたなびくものなのかと驚いた。

大滝に近づきドキッとする。見慣れている滝と様子が違うのだ。白煙をあげて怒り狂っているようだ。ガイドブックによく登場する美しい滝なのだが、水量多く近づくこともできずに啞然と見つめるだけだった。

ここも高巻きルートは明瞭。下降点の赤テープはなくなっていたが、ここを通過しないパーティはないので踏み跡はくっきり。滝上に降り立つと前方に2段6m滝が見える。一段目は簡単に進めるが2段目は両岸が手がかり乏しくて難しい。前回はもっと手前に巻き道があることを忘れていて、空身で苦労して登った。今回は最初から巻くつもりで、先行して1段目を登りかけたkukenさんを呼び戻す。

4段20m滝は左岸の巻き道をたどる。ここも前回は一気にすべてを巻こうと高巻きすぎたところ。小さく巻いていくとちゃんと巻きルートができていた。ここを越えた所で1日目の行動終了の気分となる。案の定焚き火の煙が顕著となり、テンバ適地に2人の中年男性がくつろいでいた。随分早い時間に到着したのは下流部を省略したからだろうか。

少し話を交わして先へ進む。両門の滝の手前にもテンバがあった記憶があるが、近づくと再び焚き火の煙がたなびいている。えっ、他にもパーティが入っていたのかと、ちょっと意外だった。出会いの丘で豆焼沢に出発したのは我々が最初のはずなのに。。。

別途テンバを探しながらの遡行となるが、幸い1630m附近の小滝の手前一段あがった所に平坦地を見つけた。石がごろごろしていたが、少し手を加えれば平坦だし広さも十分ある。ここで手を打つことにした。予想外の苦労をしつつも予定通り進めたことがうれしかった。疲れていたが快適なテンバにしようと急に意欲がわく。kukenさんがせっせと土を掘り起こす。石を取り除いて草をしくと上出来のねぐらが完成。テントを張り、つぎは枯れ木集めに精をだす。

なにしろ焚き火が目的のような山行なのだ。それほど豊富にはなかったけれど、火熾しをしているうちにkukenさんも昔の焚き火山行を思い出して気持ちに火がついたのか、せっせと太い倒木を集めてくれた。

やはり山は泊まるに限る。そして泊まるなら焚き火が主役だ。先月の笹ミキ沢では夕立にあって焚き火どころではなかったため、今回は焚き火にこだわった。

mameyaki1 mameyaki2

盛大に火を熾したので翌朝も熾火が生きていた。簡単に火がついたようで、朝もゆったりと焚き火にあたりながら食事してコーヒー飲んでと、心安らかな気分にひたる。ここまでくればもう増水に悩まされることもないだろうし残りの行程も短いので気分的に余裕がある。やはり余裕がないと楽しくないもの。

出発するとすぐに先行者のテンバがあらわれる。壮年の男性2人が焚き火でくつろいでいた。やはりトオの滝からの入渓で、私たちが下から遡行したというと驚いたらしい。彼らは2週間前に来たけれど、そのときはもっと増水していたための再チャレンジとのこと。

すぐに両門の滝へ。普段は左手の滝は水量が少なくスダレ状なのだが、立派な滝になっていた。近づくと右側の美しい60mナメ滝も真っ白く波立っており、とてもヒタヒタと歩く雰囲気ではない。これからつづくハイライトのナメはすべて水際を慎重に登った。ナメは水量が少なすぎるとさえないが、多すぎても楚々とした美しさがなくなり、バランスが大事だと思う。

最後の二俣ではたと迷う。右はガレているので当然左に進むべきなのだが、私がもっと上部の、前回間違った場所と勘違い。地図の現在地も勘違いしてkukenさんを惑わせてしまう。

多少のロスタイムはご愛嬌ということで左へ進むと沢幅は狭くなり、苔の棚滝が続く。ここからはほとんどが直登できるようになるが、一ヶ所だけ左岸の泥壁から巻いた。足下が崩れて登れずお助けを出してもらう。続くトイ状滝は水流をまたぐ所で水につかまりどっぷりシャワーを浴びる。好き好んで水流の中でフリーズして見えたらしいが、水勢で身動きできなかっただけのこと。

左手からきれいな幅広ナメが落ちているところで記憶が蘇る。前回間違えたのはここだったと。右手のガレ沢に進むとすぐにもとのしっとりとした雰囲気にもどり、苔むした滝が続く。最後の最後まで豊富に水が流れている。快適にどんどん登って行くと水タンクが見えて来た。

登山道についた。なんだかんだと大変だったけれど、遡行を終えてしまえば充実感でいっぱいだ。kukenさんとお疲れさまの握手で喜び合う。

ここで装備をとく。急に沢ではいなかった虫がよってきたので、すかさず防虫ネットをかぶる。水を吸った沢装備でずしりと重くなったザックを背負い、快適な登山道をたどって雁坂小屋へ。急に寒くなり、ガスが出ている。親切な小屋番さんに促され、小屋の中で食事をとる。

急に風が強く天気は下り坂の様子。黒岩尾根歩きやすいが長い。ザックの重さがこえる。kukenさんは久しぶりの泊まり装備で疲労が足にきているようだ。下って行くとマウンテンバイクの若者とすれ違う。東京からきて峠を越えて甲府に下るのだと。ヒエ〜。でも頑張ってと、そのカッコいい姿の写真を撮らせてもらう。

ゆっくり歩いたので後続の沢パーティに追い越され、さらに下ると見覚えのある若者達が早足に追い越して行く。あれっと思えば昨日朝に話をした古礼沢パーティだ。ええっ、もう下山。早いなあ〜。増水してたでしょと聞くと、泳ぎはしなかったけど結構流されたなんて言う。ヒエ〜と再び。でも彼らはそれも楽しいのだろうな。それぞれの楽しみ方があるもので、私たちだってそれなりにうんと満喫したもの。

林道終点に躍り出る。さらに車道を歩いて豆焼橋を渡り、ちょっとの登りに喘いで出会いの丘へ。kukenさん、久しぶりの沢泊、ほんとにお疲れさまでした。

mameyaki4 mameyaki5

三度目の豆焼沢だが、毎回違った印象を受ける。そして行くたびに難しく感じている。沢自体は同じでも、ついて行くか自分で行くか、増水しているか平水かなど、条件が違うとまったく違った沢になるものだと行くたびに実感させられる。

遡行中は荒れた所が目について、豆焼沢はこれで最後、さようなら〜なんて思ったり言ったりしたけれど、もうそんなことは忘れてしまった。豊富な水量と大滝、美しいナメや苔蒸した雰囲気の源頭部。また行ってもいいなんて気持ちが早くも芽生えている。

こいというものは〜♪ ふしぎ〜な ものですね〜♪

(kuken、ako)

出会いの丘6:50−豆焼沢出合7:15−ホチの滝8:45−トオの滝11:45−大滝下14:30−1630mテンバ16:10/7:05−登山道9:40/10:10−雁坂小屋10:25/10:55−林道終点−出会いの丘15:10

写真集

2011年7月15-16日の記録

2005年6月18-19日の記録