ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.07.30
楢俣川ヘイズル沢
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2014年7月30-31日

 

最近はスケジュール調整が山行最大の核心部となりつつあり、今回もぎりぎりセーフで7月に予定をたてる。引っ越し直後で慌ただしかったけれど、この機会を逃すと1ヶ月飛んでしまうので、目の前の現実を一時フリーズして山へ向かった。

慌ただしさのあまり混乱していたせいか、電車の時刻を間違え1時間も早く待ち合わせの上毛高原駅へ。遅れるよりはいいので駅でのんびりとした時間を過ごす。ちょうどいい頭の切り替えになった。

楢俣川は2年ぶり。すでに洗ノ沢、狩小屋沢、後深沢、ススケ沢を遡行しているほど、そのゆったりとした美しい渓相に魅せられている。じつはヘイズル沢も随分と早い段階で計画したことがあった。あのときは尾瀬の沢から入って狩小屋沢をくだり、ヘイズル沢を遡行して尾瀬にもどるという、意欲的というか欲張った計画だった。けれど悪天予報で計画を変更し、釜ノ沢西俣を遡行した。あれから5年。沢やあれこれに、ナイーブにもいろいろと希望をもっていたなあなんて、センチメンタルな気分になる。

楢俣ダムのダム湖に続く林道ゲート前で仮眠。2日目は午後から雨予報だったため、1日目にできるだけ進もうと早立ちを心がける。長い林道歩きは織り込み済み。すでに2度夏の炎天下を狩小屋沢出合いまで3時間の林道歩き往復を経験しているので、ヘイズル沢出合いの橋までが短く感じられた。

途中で車の音がしたので振り返るとミニバイクの単独釣り師だった。楢俣川本流に入るという。ヘイズル沢に行くと伝えると、途中のトラロープがかかった大滝までは行ったけれど、その上がどんなだか気になるんだよねぇと言って走り去った。釣り師は未知の渓のイワナに興味があるのだろうと、その好奇心に共感する。

林道がダム湖に近づくと荒れ放題の道が突然整備された道となり、巨大な土嚢袋が何十個も並べられている。最近工事が行われたようだ。大型ダンプが入れる地図に無い道があるはずで、どこから続いているのか興味津々。

早朝の湖はすがすがしく静寂そのものだ。しばらく湖岸を進んで行くと湖にポツンとカヌーが見えた。穏やかな湖面を気持ち良さそうに進んでいる。カヌーでバックウォーターまで入って沢登りというのをやってみたいなと思う。

ヘイズル沢出合いにかかる橋の上で沢装備をつけ、橋の手前左脇からまずは水量豊富な本流に降りる。すこし下ってヘイズル沢に入ると水量が減り内心ホッとする。

穏やかな平瀬を進んで行くと出口に小滝をかけたゴルジュとなる。水線通しで進もうとしたが途中から急に深くなったのであっさりと左岸のバンドをへつる。ヘイズル沢は岩盤が発達した明るい沢で、このあとも岩盤をへつる箇所がたくさんあらわれる。すでにさんざん書かれているが、これがヘイズル沢の名称の由来とのこと。

次々と10m前後のナメ状滝があらわれるが、ほとんどが直登または水際の岩盤を登れるので楽しい。水は陽の光で煌き、透明度がましている。久しぶりに、さんさんと太陽が降り注ぐ気持ち安らぐ遡行となる。

1000mを越えた所の、右岸の落ち口に顕著な岩柱が聳えている3段20m滝は傾斜が強く左岸から小さく巻いた。つぎの10m滝は左から登る。1075m の枝沢手前のゴルジュは沢が左に曲がると深くなり、出口の小滝も登れそうにない。巻き道を探すとゴルジュ入口の右岸の窪が垂直に近いけれど木の根を伝って登れた。小尾根に乗ると踏みあとがあって沢にくだる。

右手に階段状の美しい滝を落とした枝沢をすぎると再びゴルジュとなり、出口の滝は右岸を小さく巻いた。1130m二俣を過ぎると前方に豪快な大滝が見える。とても登れる滝ではない。少し手前から左岸の斜面に取り付くと一段あがった所に明瞭な踏み跡があった。しばらく踏み跡にそって進み、沢が見えてきた所で適当に斜面を下るとちょうど滝頭だった。

しばらく進むと右岸の一段あがった所に快適そうなテンバがあった。ここに泊まると翌日の行程が長くなるので、これは釣り師のテンバだねなどと言いあう。そしてようやく1180mの二俣へ。ここまでに一日たっぷり沢を楽しんだ気分になるほど、たるむところがなくナメとナメ滝の連続だった。

すぐに進むのがもったいなく、なんども足を止めて味わったおかげで時間もたっぷりかかった。こんなにすてきな沢なのにそれほど多くは遡行されていない。そもそも、楢俣川には良い沢がたくさんあるのに長い林道歩きが敬遠されているのか、最近はとくに遡行が少ないようだ。

一方ではかつて別の意味で遡行記録が少なかった(またはなかった)尾瀬の沢が人気急上昇の様子。確かに簡単で短くてきれいで手頃な沢なので、私もたくさん遡行している。でも沢旅とは違うのだな。

楢俣川はアクセスは悪いけれど、ゆったりとした渓とブナの森が沢旅気分を最高に盛り上げてくれる。けれど長いので日帰はきびしい。そもそも日帰ではもったいない。最近は諸般の事情で山行機会が減っているけれど、その分思い出に残る沢旅をしたいと心から願い、そう心がけている。

二俣から6mナメ滝をかける左俣へ進むと再び二俣となり、左には立派な16m大滝。けれどここは右沢へ入る。「奥利根の山と谷」では右沢の遡行記録はなく、1970年前半にいくつか砂防ダムが建設されたとの記述のみ。けれど以前調べたとき、この山域に多くの記録を残している山岳会(グループ沢胡桃)の記録から左俣右沢が一番遡行価値があると教えられた。

二俣までで大いに満足したけれど、左俣右沢に入ってからも予想以上に好感触で大きな滝が続く。ほんとにいい沢だなあ〜。すぐにあらわれた10m滝に一瞬ひるむが、sugiさんの資料によると左壁が登れるとのこと。確かに斜度があるが手がかりはある。ならばと、sugiさんに先行を促す。

下から見上げると恐ろしげなルートだったので少しハラハラしたが、なんとかフリーで登りきった。思わず拍手喝采。さてと、続く。途中でかなりシャワーを浴びないと登れない所で難儀する。sugiさんがロープを出すというので一瞬待とうと思ったが、自分も頑張らねばと、上からのコールを待たずに登った。ここまでが楽すぎたので、いいスパイスとなり、二人とも面白かったと満足げな様子。

その後はゴーロが続き沢は荒れた容相となる。炎天下のゴーロ歩きは辛く、一挙に疲れがでてくる。当初めざしていた1700m附近まではどうも無理そうだ。1400mの一段あがった所にテンバがあったので、少し早いけれど行動を終えることにした。翌日は午後から雨予報だったので少し不安はあったが、5時には出発することで妥協する。

夜も雨予報なので、まずはしっかりとタープを張る。まだまだタープ張りの初級者なので時間がかかったが、少しずつ慣れて楽しい。次は枯れ木集め。あまり無かったが、ありったけ集めると火はあっという間に熾きた。時間が早いので少しテントで横になったりして時間をつぶす。今回は何しろ準備不足。食料も簡素だったが、いつも食べきれないほどなのでちょうどよかったと言い合う。

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雨は降らず朝も晴れているなんてラッキー。でも油断は禁物と、予定通り5時に出発。するといきなり20m滝が目の前に。階段状にみえたが登ってみると見かけ程簡単ではなく、sugiさんはぬめった岩で腰がひけてしまったようだ。昨日果敢にシャワークライムでもっと難しい滝を登ったのに、別ルートで乾いた岩を登った私にロープを求める。とまあ、こんな風に私たちはいつも持ちつ持たれつなのだ。

前日の遡行に満足したので後半はそれほど期待していなかったが、大滝上からは小滝が続き楽しい。なかなかいい沢ではないですか〜と再び。

古い鉄製の堰堤があらわれ、そのあとも二つ続く。砂防ダムとのことだが、どうしてこんな所に三つも作ったのだろう。次第に傾斜がましてどんどん標高をあげていく。予定していた場所にはそれほどいいテンバはなく、昨日1400mで泊まって良かったと思う。

水が枯れ、いよいよ源頭部へ。稜線が見渡せる。1710m二俣を左へすすむ。基本は沢筋に忠実に進むと1780m二俣で大岸壁が立ちはだかる。左から回り込んで登って行くとヤブになったので岩稜が見える右にトラバース。すると下からすっきりとした岩稜帯が続いていた。たぶん最後に左に回り込まずに右へ行った方がよかったのかもしれない。いずれにしてもすぐに軌道修正できたので、まあ合格かなと思う。

あとは美しい山容の笠ヶ岳を時々仰ぎ見ながら稜線をめざす。後深沢の時ほどではないが、あちこちにお花畑が広がる。たどって来た沢筋を目で追うと楢俣湖が見える。あんなに遠くから沢をたどって尾瀬にやって来たと思うだけで充実感に満たされる。見上げると登山者が見える。

登山道は木道の工事中だった。なんだか急に現実的な光景がひろがる。後深沢を遡行して稜線に抜けたとき眼下に広がる尾瀬ヶ原に感動した。今回はフィナーレがちょっと滑稽だった。

私たちが尾根から登山道に下る所を目撃した工事の現場監督らしきおじさんに、登山道から外れているとこっぴどく怒られてしまったのだ。尾根を越えて来たといっても理解できないようで、こちらが何か言おうとすると逆効果だと察知。道迷いしたハイカーになりすまして平謝りしてことなきを得た。

機嫌もなおったようなので、沢登りをして尾根を越えてくる人達もいますよねと水を向けると、尾瀬に沢はない!と言う。そして、道に迷う所なんてあったかなあなんておっしゃるので、そそくさとその場を離れ、少し登山道を下った踊り場でようやく一段落。沢装備をとき、今度こそハイカーとなって鳩待峠に下った。(ルールはルールなので、沢登りといえど謙虚に対応しなければならないことは自覚)

当初は笠ヶ岳経由で湯ノ小屋に下山する予定だったが、天候しだいでは鳩待峠に下ることも想定。けれど登山道に抜けるまでに時間もかかり、暑さでバテてしまった。二人であっさりとコンセンサスができ、エスケープルートの鳩待峠へ下ることにしたのだった。

明るく開けた美しい渓と森。楢俣川の沢旅はいつもすてきな思い出をプレゼントしてくれる。またきっといつか本流を奥へとたどり、山を越えて平ヶ岳へ、なんて妄想をいだきながらタクシーで湯ノ小屋へもどった。

(sugi、ako)

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林道ゲート5:20−ヘイズル沢出合7:45/8:05−二俣12:30−1420mテンバ14:30//5:00−1780m二俣−登山道10:30/11:00−鳩待峠12:40

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