ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.05.25
旗坂キャンプ場〜氾濫原〜大倉山〜三峰山〜船形山〜升沢〜旗坂キャンプ場
カテゴリー:縦走

2014年5月25-26日

 

今年の冬は関東地方での大雪や天候不順のため東北の山に行く機会がなかった。このままシーズンを終えてしまうのも寂しいので、五月中旬に東北で雪山収めをすることにした。そして以前大鷲倉沢からたどった和賀岳から羽後朝日岳への縦走を計画した。和賀岳から羽後朝日岳は積雪期限定の藪尾根だが、連休明けの時期ならば稜線は残雪に覆われているはず。

と、もくろんでいたところ、よく参考にさせてもらっている岩手のOさんが、五月初旬に羽後朝日岳をめざしながら藪であきらめたという記録がでた。4月下旬には残雪たっぷりだったのにほんの1週間で激減したらしい。う〜ん、どうしよう。私たちは2泊3日という余裕の日程だったので藪を覚悟して行けなくもない。でも、そこまでこだわってどうしても今年行く理由もない。。。ならば代わりにどこへ?

あれこれ悩んでいるうちに予定していた日程が悪天候となって延期。その後はスケジュール調整がつかず五月中の東北行きがあやしくなってきた。残念に思う気持ちとなんとかしたいという気持ちが重なり、互いにやりくりして日程を短縮した。そんな過程で2年前の3月に縦走した船形山が急浮上。新緑まばゆいブナの山旅に気持ちを切り替え、ようやく実現した山行となった。

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前夜東京駅で待ち合わせ、仙台駅からレンタカーで現地へ向かった。いつも使っているJRの駅レンタは8時までなので、今回は10時まで営業している日産レンタカーだ。仙台は大都会なのでこういうときに選択肢が多くあって助かる。

途中の道の駅で仮眠後、早朝に旗坂キャンプ場の駐車場へ着いておどろく。すでに多くの車が駐車しており大勢の登山者が支度をしていた。お巡りさんまで出動しており登山届けを出すよういわれる。季節が変わるとこうも違うのかと船形山の人気に感心したのだが、後に山頂小屋で一緒になった登山者から25日は山開きだったことを知った。

コースは2年前と同じく升沢コースと長倉尾根をたどり、大倉山から旗坂キャンプ場に周回。前回は積雪期だったので地図をみて適当な尾根を下ったが、今回は予報で2日目が下り坂だったことや日曜日の升沢コースの人出の多さを予想(的中!)して逆回りとし、藪尾根はたどれないので普段は伏流帯の氾濫原を経由して大倉山へ向かうことにした。

もうここまで書いてしまえば、あとは写真集で十分な気もするが、安易に流れる癖をつけない為にも続けなければ。。。

駐車場から林道を歩くとすぐに登山口へ。ここが升沢コースの入口だが4回目にして初めて無雪期の緑に覆われた登山道の様子を知る。林道は桑沼までくねった長い道でつづいているが、その通りにたどって大倉山の登山口へ向かうとかなりの距離になるので、林道が氾濫原に一番近づく所でショートカットする。氾濫原は地元ではよく歩かれているようだが、ほとんどが桑沼側から入山している。

氾濫原の北側から林道に抜ける道があるらしいのだが、取り付きがわからなかったので適当な所でヤブ尾根にあがる。ヤブはたいしたことはなく植林された所には作業道らしき踏み跡もある。しばらく進むとしっかりした道に出合うがすぐに不明瞭になる。コンパスで方向を確認して進むと小川に出合い、対岸に標識があった。このあたりが氾濫原だった。

どうということはないが雰囲気のある所で、のんびり焚き火でもして泊まりたいなあと思ったら、案の定比較的新しい焚き火の跡があった。ここからはずっと登山道をたどる気楽な山歩きだ。一休みして道標が示す方向に進むと、あたりはニリンソウのお花畑となり、シラネアオイも咲いている。予想外のことで嬉しくなる。曇り空だったが太陽の光が差し込んだらきっともっとすてきな雰囲気の別世界になるのだろう、なんて思いながら進むと徒渉点へ。

雪解け後の今の季節は水量が多く、しばらく徒渉できそうなところを探すがみつからない。結局靴を脱ぐが、そんなこともあろうかとネオプレーンのソックスを持って来た。徒渉後は急斜面の尾根を登るが、登山道なのでジグザグによく整備されている。

大倉山の東屋についたときは懐かしかった。2年前は大倉山から北に伸びる尾根がみつからずうろうろしたあげく、東屋から覗き込んだら岩壁の下に尾根が見えて一瞬焦った記憶がある。地図ではなだらかな尾根にしか見えなかったからだ。

大倉山からは荒れた所のまったくない快適な登山道を進む。途中で東側の展望が開け、眼下に桑沼が見える。まさに一面新緑のブナ林に囲まれた静寂の世界だ。

ゆったりと広がるブナの森の中を一筋の道がつづいている。どの場面を切り取っても写真に収めたくなる様な光景だ。北泉ヶ岳との分岐点から長倉尾根へ向かう。しばらく行くと水源の標識がたつ広場となる。広場のすぐ下で沢水の音が聞こえる。

今回は水場や残雪の様子がわからなかったので各自が3リットルの水を担いできたが、ここの水源は涸れることがなさそうだった。行けども行けども美しいブナ林の緩やかな尾根がつづく。日曜日だというのに長倉尾根は歩く人も少なく、前夜山頂小屋に泊まったという男女2人パーティと山菜採りの男性とすれ違っただけだった。

三峰山への登りにさしかかった1200m附近から残雪があらわれ、登山道も不明瞭になる。けれど新緑がさらに初々しくなり残雪と萌え始めたばかりの若葉のコンビネーションが美しい。これで青空だったらもっと素晴らしかったのにという本音は心のうちにしまい込み、十分幸せな気持ちにひたる。

低灌木帯の稜線に出ると展望が開けるが風の影響を直接受けるようになる。三峰山は風の通り道なのか厳冬期でも背の低い標識が出ていた。あたりの山並みの斜面にはかなりの残雪があり、意外にも日本海より太平洋側の斜面に多い。今年の太平洋側の大雪のせいか。ここでザックをおろしてひと休み。

後白髪山の分岐あたりはとてもたおやかな地形で、2年前はこのあたりの雪尾根の美しさに魅せられ、とても印象に残った所。前回は棒がちょこんと出ているだけの蛇ヶ岳だったが、棒の下にはしっかりとした標識があった。三峰山と違ってここは雪が溜まるようだ。

船形山の山頂小屋が次第に近づいてくる。山を始めたのが遅かったのに行きたい山が多いため、同じ山に何度も登ることは稀なのだけれど、船形山は特別だ。小屋を目の前にして思わずまた来ましたよ〜と声がでる。

中に入ろうとした所で、あっ、人がいる。小屋には単独の若者がくつろいでいた。互いに誰もいないだろうと思っていたといいながらしばし話し込む。昼間は山開きの大にぎわいで人があふれ返っていたとのこと。コースを逆にしてよかったぁ。

一階は狭いので私たちは二階にねぐらを確保する。ほぼ予定通りの時間で行動を終えることができた。やはり登山道があると楽だし時間も読めるねと、二人ともいいようななんとなく物足りないような、微妙なところ。

早めに宴会をはじめてほぼ食事を終えかけた6時少し前、突然可愛らしい女の子の声が聞こえ階段を上がってくる音がする。びっくりしてYさんが階段をのぞくと、そこに若い女性が。こんな時間に一人で登って来たのだ。聞けば、高速バスで朝についたのだけれどレンタカーで移動する前にどうしてもシャワーを浴びたくて順番を待っていたら遅くなり、歩き始めたのが12時半だったとのこと。もう、おばさんはそれを聞いて二度びっくりする。

老婆心で食べる物はあるかとかなんとか心配したが、下で先客の男性と話をしている所では、私よりもうんとたくさん一人で山に登っているようだった。う〜ん、人は見かけによららいもので、残雪でコースが不明瞭になる初めての山に一人で昼過ぎから登ってやってきた女性の度胸に、無謀と思うよりは感心してしまう。シュラフに入ってからも階下の若者達の会話が聞こえてくる。中年組は二階に引っ込んでよかったなどと思いながらいつの間にか寝入る。

翌朝は階下の若者達が早くから起きて支度をしている様子だったので、私たちもつられて4時に起床、早めに朝食をとる。天候は予報ほど悪くなく朝日が出て来たので外にでてしばらく春霞の山並みを眺めていた。若者は早々と出発の支度ができているのに話し込んでいる。一緒に下山したいのかな〜なんて勘ぐったりして。女性がいつまでたっても支度を終わらせないのでついに出発第一号に。

つづいて私たちも一足先に6時前に出発する。升沢コースは何度か歩いているので視界がよければ大滝野営場経由の別コースで下ろうと思っていたが、風が強く展望も霞んでいるので升沢コースを下ることにした。

蛇ヶ岳の分岐からはたっぷりと残雪がついた広い尾根となりアイゼンをつける。沢も完全に雪で埋まっているのでかえって歩きやすくあっという間に升沢小屋へ降り立つ。あたりは芽吹いたばかりのブナ林だが、この辺りからしばらくは雪原をトラバースするように進むので登山道がわかりずらい。赤テープと番号標識を頼りに進む。

三光の宮を過ぎるとブナ林がさらに美しくなる。時間も早いのでお湯をわかしてコーヒータイムとする。時折薄日がさす高曇りで森の中は風もなくとても穏やかだ。ただ、立ち止まると虫がよってくるのが難点で、じつは昨日から休憩ごとに虫にたかられていたのだった。

下るにつれシロヤシオやタムシバ、オオカメノキなどの花々が沿道をかざる。今の時期は白い花ばかりだが、ブナの新緑が主役の森には華やかな彩りよりも清楚な雰囲気ですてきだと思う。

ブナの森に目を奪われ立ち止まってばかりいても、10時には駐車場についた。帰路に温泉の当てはなかったけれど、少しくらいドライブしてでも探しながら帰ろうということに。途中の沿道に小さな手書きの標識を見つけた。台ヶ森温泉とある。どこだかわからない道へすすみ不安になったところで畑仕事のお年寄りに尋ねるとすぐに教えてくれた。

里山の森にひっそりたたずむ一軒宿の温泉は小さいけれどとても気持ち良く、貸し切り湯に浸る。数百年の歴史がある温泉とのこと。さっぱりして仙台に向かうと雨が降り出し、タイミングの良さを喜ぶ。いつもの牛タン定食でお腹を満たし、短いながらも心行くまで新緑の山歩きができたことに気持ちを満たして帰路についた。

旗坂キャンプ場6:15〜氾濫原7:45〜大倉山8:50〜三峰山12:50〜蛇ヶ岳〜船形山15:10/5:50〜升沢コース〜旗坂キャンプ場10:00