ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.03.02
三国トンネル~キワノ平ノ頭~三国峠
カテゴリー:雪山

2014年3月2日

 

ついに雨でも山に行くようになったんだね、と言われながら前夜のうちに上毛高原駅近くの道の駅へ向かう。先週武尊牧場スキー場へ向かって関越道を走ったときはマイナス6度を示していたが、今回はほぼ同時刻で2度の表示。このところ暖かい日が続き沿道の雪もだいぶとけていた。

山に行かないと生きていけないなどと大仰な言い方をしたものだからkukenさんが気にかけてくれ、悪天ながら今週も山へ。最初は小出俣という話もでたが、今の時期日帰りはきびしく展望が期待できないため再検討。そこで1ヶ月前に別ルートからめざした稲包山へ三国峠側からたどることにした。

言うまでもなく条件的には小出俣と同じはずなのに、このあたりの心境はちょっと複雑。小出俣は3年前にマナイタグラ山稜を歩いたときの出発点で素晴らしい展望だった。だから天気のいいときに取っておきたいと思ったのだ。

夜中に降った雨は朝になるとほぼやんでいた。天気が悪くて士気が下がったのか前夜入りしたのに出発が遅くなり、三国トンネル出口脇にある駐車場から歩き始めたのは7時半を回っていた。

相談したわけではないが、二人とも稜線に乗るルートは登山道のある三国峠経由ではなく、トンネル上から枝尾根を登ってムコタ沢ノ頭にショートカットする尾根に線を引いていた。登りやすそうな所から取り付くが最初はかなりの急登で、しかも笹の斜面なので蹴り込むと滑りやすく所々難儀する。

雪庇の切れ目からムコタ沢ノ頭の北尾根に乗り上げる。少し進むとようやく傾斜が緩み尾根が広がる。ガスで視界は悪いけれど樹氷のブナ林が斜面をおおい幻想的な雰囲気だ。今年に入りこれまで全勝の青空山行だったので、凍てつく厳冬期のブナ林がとても新鮮に感じられた。

ムコタ沢ノ頭は雪庇の張り出しが顕著で取り付けず、北面の樹林帯から巻いて通過。いったん尾根に戻るが、南面は発達した雪庇がずっと続いている。クラストした斜面の上に新雪が乗っているため気が抜けない。急斜面のトラバースを前にアイゼンに履き替える。

どんよりとした空模様で視界はないが、時々小雪が舞うくらいでわりと穏やかだ。ピッケルを刺しながら最後の急登をやり過ごすと再び尾根が広がり、小山の上に標識が見えた。キワノ平ノ頭についた。

当初は稲包山をめざしたのだが、稜線に出てからの状況からすぐに無理だろうと感じた。暗黙のうちにキワノ平ノ頭が目標となり、今その地点に至った。ここまでで充分に達成感が得られるほど登りがいのある道のりだった。

思えばこの稜線は日本列島の水流を南北にわける分水嶺。大雪庇が延々と続く稜線がキワノ平ノ頭の先に霞んでみえる。歩いた距離は微々たるものだけれど、厳冬期のこのような天候では充分納得できる到達点だった。

稲包山を軽く考えていた。思ったよりも大変だったというと、雪庇の張り出しがすごい稜線だと書いてあったでしょ、と返ってきた。1ヶ月前に三国スキー場側から歩いた時はゆったりと穏やかに見えたので、その延長でとらえてしまい、あえて調べることをしなかった。まあ、わかっていたら提案しなかったと思うから、かえってよかったなどと言い訳がましい。

ということで、ここで引き返すことにしたが、時間の余裕があるので帰りはムコタ沢ノ頭からさらに稜線をすすみ、三国峠から下ることにした。

最初は順調に下っていったが、ムコタ沢ノ頭を巻いているうちに往路の北尾根に引き込まれる。少し戻って進むべき尾根を探すが、巨大な雪庇の山に阻まれ視界も悪くて先がみえない。恐る恐る足下を確認しながら雪庇下の斜面をさぐり、無木立の急斜面をトラバースする。kukenさんが先行し、GPSで確認しながらついて行く。

本来の尾根に乗りあげホッとする。けれど決して楽な稜線歩きとはいかず、クラストした斜面の下りで足がとまる。kukenさんはシューのまま慎重に下ったが、自分にはとても無理だとアイゼンにかえる。すると今度は緩斜面で踏み抜きが頻繁になる。何度もアイゼンとシューを履き替えるのが厄介で、今回のような雪質のときはワカンアイゼンにすべきだった。

時々踏み抜きながら進んで行くと突然のように巨大構造物がガスの中から浮かび上がる。鞍部に鉄塔が建っていた。行く手には雪庇の急斜面がそそり立ってみえる。長倉山への急登だ。アイゼン歩行の踏み抜きで疲れた足を一歩一歩あげて長倉山へ。

これでもう登りはないと安堵する間もなく、痩せ尾根の雪の状態に手こずる。雪庇が崩れ落ちていたり割れているので笹藪を巻き気味に通過しようとするたびにズボズボと足をとられる。面倒がらずにシューに履き替えた方が良かったとは、あとの祭り。

二つ目の鉄塔が近づくと北面が開け車道が見えた。たった数時間のことなのに、なんだか下界が恋しかった。ガスでよく見えなかったが、三国峠は開けた広場のようだ。鳥居があるらしいがわからずじまい。ここからはトレースがあると思っていたが、まっさらな雪面にはトレースらしき窪みさえなかった。

適当に歩きやすい所を下ると道がみつかるが、完全に雪の斜面と化していた。もう嫌らしい所はないだろうと、ここでシューに履き替える。あとは淡々と下るだけで余裕がでてきたのか、今朝駐車場で挨拶をした登山者らしい男性は三国峠に登らずにどこへ行ったのだろうと話題になる。ひょっとして私たちのトレースが峠ではない変な方向に進んでしまったのでやめたのかもしれないなどと軽口をたたきながら自分たちの朝のトレースに合流。車に戻ると雪が降り出した。

ガスで展望はなかったし歩くのが大変だったけれど、無心に雪山に向き合うことができた。とても清々しい気持ちになれた。青空がなくても山の良さをもっと感じられるようになりたいと思わせてくれた山だった。

 

三国トンネル脇の駐車場7:40−ムタコ沢ノ頭10:20−キワノ平ノ頭11:30−長倉山13:50−三国峠14:40−駐車場15:30