ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.02.23
武尊山家ノ串東尾根
カテゴリー:雪山

2014年2月23日

 

先週予定していた家ノ串東尾根だったが、予想を上回る大雪で中止した。交通事情の制約によりメンバーそれぞれが近郊の山へ向かい、手軽に雪山気分を楽しんだ。とはいえそんな状態が2週続くと、やぱり思いは雪国の山へ。

一ヶ月前に尾瀬西山から武尊田代に下る尾根から見渡した家ノ串東尾根はなだらかなブナの尾根だった。そんなことが頭にインプットされていたので、山の相談をしているときに候補としてでた家ノ串東尾根に飛びついた。一度は中止となったが、鉄は熱いうちに打てとばかり再計画。

長いコースなので前夜発で武尊牧場スキー場の駐車場へ向かった。小雪が舞って寒いがトイレ横の空き地にテントを張って仮眠。今はないダンロップ製の古いテントにあらためて年季を感じた。

翌朝は6時半に出発。逢瀬橋まで下り、ここから除雪でできた雪の山を越えて西俣沢添いの林道へ入る。雪は適度にしまっているのでラッセルもなくシューで快適に進む。次第に日が射し始め、たっぷり積もった雪面の結晶がキラキラ輝いてみえる。予報では曇りだったが、また青空山行になりそうだ。kukenさんは、ぜったい青空に見守られているのだという。

林道歩きだけでも楽しいと、二人で影法師の写真をとりあったりなんだりで最初から浮かれ気分。1時間ほど林道を進み1140m地点に張り出した尾根にとりつく。すぐにミズナラの大木に足が止まるが、この辺りは一度伐採された二次林だ。しだいに尾根の傾斜がゆるむと尾根筋は伐採を逃れたブナの大木が多く見られるようになる。見上げれば真っ青な空。振り返ると日光白根を盟主とする日光連山が広がる。

1450mで家ノ串東尾根に合流すると尾根は更に広がり、イメージ通りのゆったりとした雪原歩きとなる。1550mポコからは更に開放的な台地状の尾根となり、ブナとダケカンバの大木があちこちに島のようにまとまって林立している。かなりの積雪量なのだろう。低灌木はすべて隠れているので雪面はとてもすっきりとして美しい。1月に隣の尾根を歩いたときより1m以上は雪が多い印象だ。

撮影大会の連続でなかなか先に進まないといいながら、楽しいシューハイキングがつづく。1650m付近からブナにかわってシラビソの針葉樹林帯となる。南面の荒砥沢対岸の展望が開け、前武尊と剣ヶ峰が聳え立つ。こちら側から間近に見たのは初めてで凛々しい。細くなった尾根は雪庇の張り出しが顕著となり、まるで障害物競走のようだといいながら波打つこぶを越えて行く。

1800m付近からは家ノ串山に続く尾根筋の全貌が見渡せるようになり、山頂直下の岩峰が射程距離となる。そして本当にあの岩峰を越えるのかと、半信半疑の気持ちとなる。1900mの肩でシューをアイゼンにかえる。これまでの尾根歩きで早くも満たされた気分になったが、kukenさんの関心は岩峰の通過にあるようだ。

休憩しながら対岸の尾根を見るとボーダラーが荒砥沢源頭に滑り降りている。あまりすっきりしたルートにはみえないが、ここは山スキーのコースになっているようで、剣ヶ峰のまき道をトラバースした鞍部からはシュプール跡が何本か認められた。人が見えたのでヤッホーと叫んでみたが、聞こえたかな。

家ノ串東尾根に行くことが決まってから装備確認のメールで雪崩対策が必要だと、今回は久しぶりにビーコンも装備。ロープも用意するというのだから、本来ならカラビナやシュリンゲを持参しなければならないのに軽く考えてしまった。一方のkukenさんはほぼフル装備の様相。のんきにも、気合いが入っているなあなんて思ってしまう。時間的に正午を回っていたので山頂へ抜けるのは難しいけれど、とにかく1時頃をめどに行ける所まで登ることに決め、あとに続く。

岩峰手前の急斜面は近づくと遠目よりも斜度があり、おまけに雪庇がハングしてまっすぐ登れない。まずはクラスト気味の斜面を登り、樹林の北面にトラバースして雪壁を登る。ピッケルを刺しながらの登攀は久しぶりなので緊張する。kukenさんもこうした雪山は久しぶりのはずなのに、なんだか嬉しそうに登っているようにみえる。ずいぶん登ったと思ったけれど、乗り上げた尾根はようやく最後の岩峰基底部だった。うっすらとガスに覆われた尾瀬方面の展望がまぶしく感じられた。

岩峰を見上げルートを探る。北面のトラバースしかないが、私はすでにお腹いっぱいの状態。時間がかかりそうだし、時間もリミットの1時に近づいている。ということで、タイムキーパーを仰せつかった私はあっさりと時間切れを伝える。kukenさんも納得で、今回はここまでとする。

下りも気を抜けない。最後の雪壁は垂直に近く感じる程だったので、安心のためにロープをだしてもらう。カラビナは?スリングは?ゼルバンは?と聞かれるけど何ももってこなかった。。。岩峰のトラバースがあるっていったよね、と一言。だってブナの尾根が歩ければいいと思っていたんだもんと、内心小さくなる。

片手でロープを掴みながらのクライムダウン。ぎこちなく遅々としているのでkukenさんに先行するよううながすと、私を残して先に下る方がよほど恐いなどといわれてしまう。前向きで下っていることを感心すると、アイゼンのエッジを信じれば大丈夫なのだという。だんだん調子が出て来た所で1900mの肩にもどった。ふうっ、お疲れさま〜

喉がカラカラで、シューに履き替え一休み。あとはゆったりとした尾根を戻るだけだ。一時うっすらと霞がかかった空は再び快晴となり、抜群の展望を楽しみながらの下山となる。たどった尾根を時々振り返るが、午後の残照が哀愁をさそい、ちょっとセンチメンタルな気分になる。きっと充実感と、腰が引けた情けない思いが入り交じった気持ちだったのだろう。

再びブナ林の気持ちのいい尾根となり、まっさらな斜面を滑り降りる。下りは早いが長いコース。よく歩いたなあと思いながら林道に降り立った。さらに林道をてくてく下り、車道の登り返しにぐったりしながら駐車場にもどった。

今年に入って三度目の武尊山麓。麓にスキー場がないので積雪期でも登られることは稀のようだが、予想以上の好印象をえた。ゆったりと広がるブナの尾根から展望が広がる雪庇たっぷりのシラビソの尾根へ、そして最後はエキサイティングな岩峰へ。地味だけれど静かに広がる自分たちだけの世界を心ゆくまで感じることができたとっておきのコースだった。

 

逢瀬橋6:45−1140m尾根7:35−家ノ串東尾根−1990m地点13:10−逢瀬橋16:20