ブナの沢旅ブナの沢旅
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2013.11.12
塩沢奧甚助窪~ヨモギ尾根
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2013年11月12-13日

 

シーズンを終える前にもう一度東北の低山の沢に行こうとあれこれ計画を立てていたが、寒波が雪をもたらし沢などとんでもない天候になってしまった。そこでいつもの転戦となり、予報がまずまずの足尾へと計画を変更。ところが直前になって低気圧の前線が更に南下して関東北部の山も絶望的になった。

天気がいいのは奥多摩と丹沢だけだった。こうなったら焚き火ができればどこでもいいと、久し振りに奥多摩へ向かうことにした。まだ遡行したことがなくて、のんびり焚き火ができそうなやさしい沢・・・決め手がないまま候補地を二つに絞って見切り発車となった。

日帰りの沢なので当日の集合時間もゆっくりと武蔵五日市駅に8時半。念頭になかったが、平日なのでラッシュアワーにぶつかり、大きなザックで難儀する。Yさんは遠方からわざわざ奥多摩などに足を運ぶ羽目になり、ご苦労なことです。奥多摩駅を過ぎて道が日原を分けるところでようやく最終決定して奥多摩湖方面にはいり、後山林道奧の塩沢へ向かう。塩沢にはいくつか遡行対象となる枝沢があるが、車の回収があるので下山路をヨモギ尾根にしたい。そうすると甚助窪が妥当と思われた。

片倉沢橋の先にゲートがあって一般車はここまでとなる。少し手前の空き地に車をとめ、沢支度をして歩き始めると、林道沿いは紅葉が見頃でとてもきれいだ。塩沢橋を渡り沢沿いの林道を進むと次第に山道となり、適当な所で沢に降りて入渓。いかにも奥多摩の平凡な沢というのが正直な第一印象だが、二転三転したあげくの沢納めなので、これくらいでちょうどいいなどと思う。

時々あらわれる小滝を越えていくとゴルジュ状となり釜を持つ3mナメ滝、その上に8mナメ滝が続く。左岸の岩から越えるが、落ち葉とヌメリで見た目よりもきわどい登りとなる。Yさんは虎毛沢のナメ滝で滑り落ちたことが尾を引いているのか臆病になっているようだったのでロープを出した。8m滝は乾いていれば登れそうだが、Yさんがすかさずトラロープのかかる左岸のルンゼから高巻き始めたのであとに続いた。

出発が遅かったのですぐに昼となる。急ぐわけでもないからと、川原が広がったところでザックをおろしラーメンで温まる。枯れ木が豊富なので、ついでに小さな焚き火を熾してみると簡単に火がついた。遡行開始早々に焚き火をしてラーメンを作って温まる。沢納めはこうでなくっちゃと、気持ちが前向きになる。

顕著な枝沢を分けると大きな釜をもつ4m滝があらわれる。直登はできず両岸の頭上にトラロープが下がっていたので右岸から高巻くことに。残置ロープの末端まで滑りやすい急斜面を登る。ここからロープにつかまって足下がおぼつかない岩壁を振り子のようにトラバースするのだが、もう一本のロープが横にそれていて手が届かない。ここを通過するのはかなり思い切りが必要で、はねていたロープに手が届いたときにはホッとした。

平凡とは言え淡い紅葉の木々と落ち葉で彩られた渓相はいい雰囲気をかもし出している。なにしろお日様をもとめて変更に変更を重ねたのだもの・・・すぐに大きな釜をもつ2mほどの滝となって沢は左に曲がり、ナメ小滝が連続する。(ガイドではまとめて10mナメとしてある)右側から釜を回り込んでとりつくが、途中腰上まで水に浸かったときはさすがに冷たくしびれを感じた。

つづく3m、4mの連瀑は左岸から高巻き、残置ロープを頼りにいやらしい岩場をトラバースして越える。大きな滝はないが小滝でも直登できず、巻きも気が抜けない。あまりのんびり気分になれずにようやく諸左右衛門谷の出合へ。とてもこじんまりとした雰囲気で出合に3m滝を落としている。

本流へ進むが、当初予定していたテン場の奧甚助窪出合までは時間がかかりそうだ。ここまで予想以上に「充実」した遡行となったので、どこでも平坦地があらわれたら遡行を終えることにした。しばらく平穏に歩いて行くと左岸に平坦地が広がる。埋もれた酒瓶なども散見され作業小屋の跡地かもしれない地形だった。石がゴロゴロしていたので丹念に取り除いて落ち葉で整地。広々とした1LDKの快適なテン場ができた。

テントを張って薪を集めて火を熾すという作業は沢泊の中でも楽しく好きな時間だ。特に今回はそれが目的のようなもの。暗くなる前から盛大に火を熾すと釜に浸かってびしょ濡れになったズボンもすぐに乾いた。

前回の虎毛沢では余裕がなく食事が簡素だったので、沢納めはちょっと手をかけてみた。たまたま前日にテレビの山番組で紹介していたキャベツとキノコとベーコン、トマト、チーズのミルフィーユというやつだ。たんに重ねて最後にコンソメスープの素と水を入れて煮込むだけ。美味しく温まることができたので、冬の定番にしたいと思ったほど。出発前の予報では寒波到来で寒くなると言っていたが、焚き火のせいだけでなく夜もそれほど冷え込むことはなかった。

天気に翻弄された沢納めとなったが、東北の山間部では今頃雪が降っているのだと思うと、こうして沢に泊まって焚き火ができたことは何てありがたいことだろうと思いながら一日を終えた。

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翌朝も早々に焚き火を熾し、火にあたりながら朝食をとった。見上げる空にはしだいに青空が広がり、頭上の赤く染まったモミジが美しい。いい感じで今シーズン最後の朝を迎えられた小さな幸せを感じながら出発する。

しばらくは平凡なゴーロときどきナメ小滝がつづき、古い倒木帯を越える。さらにナメを歩いて行くと両岸が切り立ったゴルジュとなる。一瞬緊張するが、入ると滝はなく拍子抜けと安堵で通過する。前方に黒光りした4m幅広滝があらわれる。直登はできそうになくルートを探す。左壁の凹角だがホールドが細かい。取り付きは足を押さえてもらって空身で登り、ザックとYさんを引き上げる。

つづく4m4段10mはたぶんこれまでで一番きれいなところかもしれない。楽しく越えると滝上はナメがつづき。ようやく心安らぐ遡行となって奧甚助窪出合の二俣に到着する。ここまで以外と時間がかかったので、甚助窪から稜線までもコースタイムよりは時間が相当かかるだろう。ということで、我が弱小パーティのリーダーはさっそく日和り、滝はほとんどなくヨモギ尾根に直接抜けられる奧甚助窪に進むことを提案。するとすぐにサンセーと、いつもの相づち。これで気が楽になる。

奧甚助窪は出合が貧相だったが、進むと本流らしくなりナメ小滝の連瀑となっていい感じではないですか。さらに3条の小滝、ナメ滝とつづき、その先に奥多摩の沢の風物詩ともいえるワサビ田跡がまるで遺跡のように広がる。顕著な枝沢を分けると沢は小川風情となり、日溜まりハイキングの雰囲気となる。と、ここで前方の斜面の低木が大きくガサガサ揺れているなと思う間もなく、ずんぐりと黒っぽい動物の姿を目撃する。あっ熊っ、と思たとたん視界から消えていった。すぐに後ろにいたYさんに熊を見たことを伝え、その後はピーピー笛を鳴らしながら進んだ。

すぐに予想しなかった木橋があらわれる。そんなに古くない。その上右岸には真新しい道がジグザグにできている!沢のすぐ上の斜面には新しい境界標識も見えて興味を引かれる。このまま遡行を続けてもそれほど変化はないだろうから、このナゾの道をたどって見ようということになった。軌跡を見るとヨモギ尾根から派生する顕著な枝尾根に向かって登り、途中から尾根を巻き込むようにトラバースしている。きっと水源管理の巡視路なのだろう。

尾根を回り込んで下り始めたところで道を離れて枝尾根にのる。藪もなくすっきりとした尾根だ。上部でスズタケの藪となるが、明瞭な獣道のトンネルができていた。途中2箇所で熊のそれほど古くない糞を発見。沢で目撃した黒い動物はやはりクマだったと確信する。ちょうど昼に1650m 附近の登山道に乗り上げるが、稜線はとても寒いので驚く。ありったけのものを着込んで休憩する。

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ヨモギ尾根は数年前に青岩谷を遡行して雪のためエスケープして抜けた尾根で、たまたま紅葉の時期に重なってとても印象がよかった尾根だ。稜線に抜けた頃に立ち込めていた暗雲も去ってふたたび青空が広がる。途中すてきなブナのプロムナードもあり、しばし足をとめながら快適に下る。

三角点のある奧後山からは地図ではニジュウタキ尾根と名を変え、尾根が広がるために落ち葉で径路が不明瞭になる箇所もあるが、有志と思われるる個人の控えめな道標が随所にあらわれて安心感が得られる。しだいに紅葉が鮮やかになるが、トラバース道が長くてなかなか標高を下げない。とても快適な道なのだが、二人とも前回の印象と少しちがうと言いあう。ようやく塩沢に下って前日歩いた林道に合流したところで、後山へのルートが別にあることがわかり、たぶん前回は別ルートだったのだろうと納得する。

快適な下山路だったが予想以上に時間がかかり、車にもどったのは3時半近かった。最初の予定通りに甚助窪に進んでヨモギ尾根を下っていたらきっとヘッデン下山になったはず。日和ってルート変更したことが正しかったと胸をなで下ろし、シーズン最後の沢旅を終えた。

後山林道片倉沢橋車止10:55-塩沢橋11:30-諸左衛門沢出合14:25-テン場14:40/7:30-奧甚助窪出合9:30-巡視路横断点10:20-ヨモギ尾根12:10/12:30-塩沢橋14:35-駐車地点15:00

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