ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2013.10.18
役内川ツブレ沢三滝沢~赤湯又左俣下降~虎毛沢右俣
カテゴリー:

2013年10月18-20日

 

早いもので今年の沢シーズンもあとわずか。今年の夏は沢に行けなかったので、なんとかシーズンが終わる前に「ブナの沢旅」らしい沢旅がしたかった。当初予定した日程は台風の直撃を受けてあえなく撃沈したが、メンバーそれぞれが沢旅を最優先させて日程をやりくりした。その気になればなんとかなるもので、まさに執念の「ブナの沢旅」となった。

赤湯又沢は2007年の10月初旬に当日発の一泊二日で遡行している。前回は距離の短い湯ノ又沢から赤湯又を下降して野湯につかり、翌日は往路を戻って高松岳に登り、登山道から下山した。今回は行程が長いけれど極上のナメが続く三滝沢をアプローチとし、赤湯又から虎毛沢を遡行して虎毛山に登り、登山道から下山するという長い行程だ。三日間をフルに使うゆったりとした沢旅を期待して出発の当日を迎えた。

========================

17日の夕方に東京駅で待ち合わせる。仙台駅からレンタカーで一路鳴子温泉方面の「あらだてなみちの駅」へ。適当な場所を見つけてテントを張り仮眠する。月が煌々と輝き翌日の晴天を予感させるが、夜は放射冷却でかなり冷え込んだ。

目覚ましをかけ忘れたため寝過ごしてしまう。急いで朝食をとってさらに車を走らせ秋ノ宮温泉へ向かう。少し手前の林道に入って登って行くと見覚えのある「水沢林道」の標識があらわれ林道が分岐する。ここに車をとめて沢支度。念のためフロントガラスに日程を記したメモを置く。

林道を進むと次第に山道となりツブレ沢が近づく。沢というよりゆったり流れる川のおもむきだ。気持ちがはやって早々と沢に降りるが、何度も渡渉しなければならないので再び踏み跡にもどりワルイ沢の手前から本格的に入渓する。すぐにあらわれる堰堤を左から越えると沢らしくなる。悪い所はないらしいので初めての沢でも気楽な気分でいられる。しばらくは何もない川原歩きだが、ようやく東北の沢旅を実現できた喜びと安ど感で満たされる。

初めてあらわれた滝は小滝ながら大きな釜を持ち、奥にも滝が続いている気配だ。左壁を回り込んで滝上にでるとさらに6mのスラブ滝が控えていた。両岸とものっぺりとして登れる滝ではない。少し戻った左岸の急斜面を木の枝をたよりによじ登って大きく巻き、適当なところから下るとちょうど滝上だった。

ここからはナメや小滝があらわれ、陽もさし始めていい雰囲気となる。とくに4mの幅広すだれ状滝の上は美しいナメが広がり、早くもナメ床に亀甲模様があらわれる。見上げれば空は雲一つない真っ青な青空。この辺りは標高が低いので紅葉にはまだ早いのが、ぜいたくを言えば残念と言えるかもしれない。枝沢もスラブ滝あり、糸状滝ありと見せ場を作っている。ツブレ沢はアプローチくらいにしか考えていなかったが、けっこういい沢ではないか。

前方にのっぺりした8mスラブ滝が見えてきた。あれが三滝沢出合の滝のようだ。さっそく巻き道をさがす。左岸に張り出した尾根に乗ると踏み跡があり、あっさりと巻くことができた。そして滝上の光景に思わず声がでる。記録で読んではいたが、やはり百聞は一見にしかず。見渡す限り白いナメ床がつづいている。これだけなめらかなナメが、これだけ長く続く沢はほんとうにめずらしい。

有頂天で歩いていくと白いナメ床はいつの間にか亀甲模様に変わっていた。あまりの素晴らしさに、まだ見ぬ虎毛沢に対して、ひょっとして虎毛沢よりもきれいかもしれないと、前のめりの気分になる。しかも荒れた気配がないのがうれしい。

飽きるほどに平ナメが続いた後は少し変化があらわれ、ナメ滝が続くようになる。簡単に登れるものもあれば、フリクションぎりぎりで緊張させられる滝もあって面白い。側壁のスラブも圧巻だ。2時間ほども歩くとさすがに沢幅は狭く源頭部の雰囲気となるが、ナメは相変わらず続き、最後は急傾斜のナメが何百メートルものナメ滝に感じられる様相となって続く。

900mを越えるとようやく水が涸れ最後は沢型もなくなる。コンパスで方向を確認しながらヤブの薄い所をこいでいくと大した苦労もなく登山道に飛び出した。振り返ると南側には色づいた虎毛山がどっしりと構えている。そそられるが山頂は翌々日までお預けだ。虎毛山から遠ざかるように1033m北側のコルを目指して登山道を北へ進む。7年前の記憶では赤湯又の下降点は明瞭で赤布があったような、などと思い出しているとありました、赤布が。

赤湯又左俣への定番下降点なので踏み跡も明瞭。すぐに窪があらわれた。あとは淡々と沢を下るだけだ。前回同様、一か所懸垂で下ったナメ滝以外は問題なくどんどん下る。あまり細かな記憶はなかったが、途中きれいなナメもある。けれど意外と長い沢で、朝からずっと遡行し続けているために疲れが出始める。

二俣についたときは正直やれやれという気分。一段と豪快になった沢をさらに下ると例の滝上へ。左から下るとしだいに硫黄の匂いが漂い始め、左手に最初の噴煙地が見えてきた。ふうっ、ようやく着いた。

とはいっても前回同様ここにテントを張るつもりはない。一応様子を見るが全体が殺伐とした雰囲気なので好みではない。ここは団体さん向きだねといいながら、沢に戻って一段下ると大岩とブナの木に囲まれた小さな野湯を見つけた。湯加減もちょうどいい。よさそうだが念のため前回泊まった場所へ行ってみると今は使えない状態になっていた。どちらも沢沿いなので、大雨で頻繁に様子が変わるのは当然だろう。

ということで、最初の候補地に戻り、問題のテンバは石を取り去って念入りに整地することに決めた。湯は二か所から湧き出ており、絶妙な量の水が岩の間から流れ落ちて適温を保っているという理想の野湯だ。枯れ木が湿ってたき火にてこずったが、赤湯又温泉で体の芯から温まることができ、大満足で一日目を終えた。

mitaki2 mitaki3

翌朝も天気は上々。朝も温泉に浸かりたい気分だったが、腑抜けてしまいそうなので足湯にとどめて出発する。すぐに右岸に二つ目の噴気地があらわれるが、ここは暑すぎて野湯には向かない。山腹のあちこちから白い噴煙が立ち込める場所を眺めながら下る。何もないがナメも多くきれいな沢だ。

蛇行を繰り返すところは森に入ってショートカットしながら進むとブナの倒木に大量のブナハリタケを発見。二本のブナにびっしりと生えておりたくさん収穫できた。けれどそれは全体のほんの一部にすぎなかった。

長いなあと思い始めたころようやく前方が廊下状になり、その先で滝を落としていた。今までとは雰囲気が違って豪快な光景だ。ようやく虎毛沢の出合に着いた。明瞭な踏み跡をたどってあっさりと虎毛沢に降り立つ。さあ休憩しましょうと、少し先へ進むとゆったりとした川が広がり、別世界に入り込んだ気分。The river runs through it という映画のタイトルが頭に浮かぶ。このおだやかさ、ゆったり感が今の自分の気分に吸い付くようにマッチする。

しばらくは平瀬の川歩きだが、陽の恵みは偉大だ。なんということのない平瀬でも陽の光で美しさは倍返し。ずっと「陽の光は躍る」と「楽園の王様」が心の中で響き続ける。う~ん、他の音楽を、と思ってもこれは自然に任せるしかない。

ようやく小滝があらわれた。最初は難なく越えていく。どの小滝も不釣り合いなほど大きな釜をもち、水の色がグリーンタフで美しい。沢床も岩盤となり、さらにフレーク状のナメとなる。ところどころ沢幅が狭くなり淵をへつる。ちょっといやらしい所もあるが、じっくり探すと必ず手があるので困難なことはない。

650mの二俣を過ぎるとナメが卓越するようになる。流れの方角がかわって陽が差し込む地形となり、水面がきらめく。ところどころにある甌穴がエメラルドグリーンのアクセントとなり、なんと美しいことか。昨日の三滝沢もきれいだったけれど、やはり風格が違う。昨日のコメントは撤回。

この辺りが虎毛沢で一番美しいところだと思う。そしてようやくお待ちかねの虎毛沢の亀甲模様があらわれるが、水量が多めのせいで模様が埋もれがちだ。亀甲模様はすでに三滝沢でもたくさん見られたのでそれほど珍しくなくなっていた。それよりも前のナメの渓相の方がだんぜん雰囲気が素敵です。

虎毛沢は沢床の岩質が多様で、進むにつれさまざまな色合いに変化するのが面白い。亀甲模様が終わると再び白い岩盤となり小滝やへつり場がつづく。一か所水中のフレークに足場を求めなければならない淵で行き詰る。私はあきらめて草つきのいやらしい斜面をトラバースしたが、sugiさんは突破を試みて水没、胸まで浸かったらしい。この季節、できるだけ水に浸かりたくはないが、気温も高くそれほど水も冷たくなくてよかった。

淵を超えると黄色味と赤茶色のミックスしたナメがつづく。あいかわらず穏やかな雰囲気だ。滝はあらわれず再び平瀬のゴーロ状になると奥の二俣に着いた。まだ2時前だけれど、この先はテンバもなさそうだし、なか日はゆっくりしたいのでここで二日目の行動を終えることに。テンバをさがして右俣に入ると一段上がったところに平地があったが、沢から遠すぎて足場も悪いのでパス。左俣に乗り越すと、そこにこれぞテンバという広い平坦地。ここに決めた。

さあ今日の課題はたき火おこしだ。念入りに枯れ木を集めて火を熾そうとするがなかなかうまくいかない。7年間たくさん沢を遡行して沢登りにはずいぶん慣れてきたのに、たき火だけはちっとも上達しないとボヤキながら粘ってようやく成功。ヤレヤレなのでした。よかったーと気を良くして早くから宴会モード。まだ一日残っているが、メインの遡行はほぼ終えたも同然。天候に恵まれたことを喜び、三滝沢のナメの美しさ、赤湯又の極上の野湯、虎毛沢のたおやかな美しさに乾杯。

torage2 torage1

夜半にタープをたたく音で目がさめるが、朝になると雨はやんでいた。けれどどんよりとした空で天気は下り坂のようだ。虎毛山はたぶんガスっているだろうなあと少し落胆しながら早めに出発。本流の左俣は奧までナメが続いて穏やかな雰囲気だが、登山道に抜ける右俣へ。渓相はすっかり平凡で荒れた雰囲気になり、消化試合の気分で淡々と進む。

小雨がぱらつき始めるが気になるほどではない。しばらく進むと小滝が続くようになる。800mを越え沢が左に回る手前の4m幅広ナメ滝は半分が倒木で埋もれている。右側の隙間からなんとか這い上がると上部は急傾斜のナメ滝の連瀑帯となっていたので、そのまま巻き気味に滝上へ。850mで右岸から顕著な枝沢が美しい白糸状のナメ滝を落として出合う。

このあたりから数メートル規模の滝が次々とあらわれるが、ほとんどは水流脇を直登できて、ようやく本来の沢登り気分となる。登るにつれて斜度もまし、ちょっと滑りやすいナメ滝となる。昨日まではどの沢もフリクションがきいていたが、このあたりからヌメリがでて嫌らしい。

水流脇の笹につかまりながら慎重に登って行くと、水流を登っていたYさんが突然滑り落ちてきた。止めようと手を出すが、あくまで気持ちの行為であってほんとうに止められるわけがない。途中に小さなバンドがあるのでそこで止まってくれることを期待して呆然と見下ろすが、止まらずにどんどん滑って7~8m下の水たまりでようやく止まった。

声をかけると本人はすぐに起き上がって大丈夫のジェスチャー。まったく無傷とのこと。途中から体が表向きになり、ザックの制動でそれほど加速しなかったのが幸いだったらしい。こじんまりとして危ない渓相のところでなかったからよかったものの、場合によっては大変なことになっていたかもしれない。あらためて沢遡行のリスクの大きさを感じさせられた。ここはロープを出してあがってきてもらい、一休みして遡行を続けた。

その後も登れる滝をぐいぐい登って高度をかせぎ、1150mあたりでようやく傾斜が緩んで源頭部の様相となる。いつのまにか両岸の紅葉が美しいが、小雨でうら寂しさがただよっている。沢型が判然としなくなるが、うすい藪を進むと左手に窪があらわれ、その窪を進む。するとさらに左手に明瞭な沢型があらわれ、不思議に思いながらもそちらに移動するとほとんどヤブ漕ぎなしに登山道にでた。

山頂方面はガスっており風も出て来たので、何の未練もなく山頂をパスして登山道を下ることにした。途中展望が開けるところで一瞬ガスが晴れ、全山紅葉の山並を目にすることができた。東北の山はほんとうに美しい。草モミジの虎毛山と地塘に出会えなかったけれど、また来たいという気持ちが生まれた。そういえば、船形山も何度か押し返されたけれど、最後は願いがかなって素晴らしい山行ができたことを振り返る。

登山道が稜線から外れて赤倉沢へ下り始めると、ブナの紅葉が美しく何度も足をとめる。沢沿いはまだ紅葉には早かったので、ようやくどっぷりと紅葉狩りの気分につかる。急斜面ながら歩きやすい登山道を一気に下り、赤倉沢の橋を渡る。

あとは沢沿いの平坦な道を登山口まで淡々と歩くが、さらに湯ノ又沢の林道まで長い道のりだ。登山口に近い広場にザックをデポして駐車地点まで車道を歩く。車が見えたときの嬉しかったこと・・そしてやっぱり車は早い。歩いて1時間半のところを10分もかからずにザックを回収し、鬼首温泉の目の湯というアットホームな雰囲気の温泉で温まる。

最初は仙台へ戻る予定だったが渋滞が気がかりだった。駅レンタに問い合わせたところ古川でも車の返却ができることがわかりインター入口直前で方向転換。おかげで古川に停車するはやてに飛び乗り、2時間もかからずに帰京できた。

悪天候の隙間をぬい、晴天の沢旅ができたことに感謝!!

(sugi、ako)

torage3 torage4

18日 水沢林道分岐7:25-ツブレ沢堰堤前入渓8:05-三滝沢出合9:30-登山道12:50-赤湯又左俣下降点13:05-二俣15:10-テンバ15:50

19日 テンバ7:15-虎毛沢出合9:10-奥の二俣13:50

20日 テンバ6:25-登山道10:05-赤倉沢登山口12:25-駐車地点13:55