ブナの沢旅ブナの沢旅
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2013.06.02
杉田川
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2013年6月2日

 

昨年からの懸案であった神室連峰の完全縦走を終え、ようやく自分なりの沢シーズンを始めようという意欲がわいてきた。今年はおそい沢始めとなったので少し遠くの沢から始めたかった。そこで安達太良の沢を念頭において地元のyukiさんに打診したところ、例年6月初めに杉田川で沢初めをするのだという。杉田川は2007年の紅葉の盛りに遡行した思い出のある沢だ。渡りに舟と、同行することにした。

早朝に町内会主催の河川敷の清掃活動があるというので集合時間はいつもより遅めだが、曰く、だから例年清掃行事を終えてからも余裕で遡行できる杉田川に行くのだという。

5年前に遡行した時はまだ沢の経験も浅かったためか前夜発で現地入りしてほとんど一日がかりだった。だから、5年経った今もう一度遡行して、違いを感じられるか確かめるのも面白いと思った。

磐越西線の喜久田駅で待ち合わせ、安達太良温泉の奧にある遠藤ヶ滝不動尊手前の広い駐車場で支度をすませ9時20分に出発。どんよりとした曇り空の中、まずは不動尊神社の境内へ。意外な場所に立派な神社があり、新しい欄干が取り付けられるなどとてもきれいに整備されている

。神社の裏の遊歩道を進むと遠藤ヶ滝という、名前が付いているわりにはパッとしない小滝が見える。左岸には大きな岩室があり、中に石灯籠が安置してある。きっと滝を含め神聖な場所なのだろう。遊歩道が沢を横切るところから入渓する。新緑がまだみずみずしく、どんよりとした空も明るく感じられる。

沢に足を浸すのはほんとうに久し振りで、いままで半年もの長いブランクなどなかなった。昨年は沢納めの小田倉沢で怪我をしたせいなのか、天候のせいなのか、足に優しい雪山になれすぎてしまったからなのか、ワクワク感よりもどことなく臆病風が吹いている。今年から沢の足回りはフェルトからラバーソール主体に切り替えるつもりだが、シーズンはじめの沢は多少ヌメリもあり、その上岩は霧雨で濡れている。だからますますぎこちない。

それでもしばらく歩いて行くと、緑の谷と白い滝水、滑らかな沢床、あの聞き慣れた沢音の感触がゆっくりと体に染み渡り、沢シーズンの始まりを実感する。これからはドンドン沢に入って沢の感触をとりもどし、もっと楽しめるようになりたいと思う。

しばらく進むと、どこからどこまでがナメ滝なのかよくわからない傾斜のあるナメが続き、いい感じだ。すぐに890mの二俣となり、傾斜の急なナメ滝をかける枝沢に目がとまる。思わず引き込まれそうな所だが、本流の右に進むと5m滝となる。左側から越えるとちぎれた太い鎖がかかっていた。

つづく2段6m滝はよく覚えている。前回は台風直後で水量多く、少し怯んだ滝だ。ロープを引いて左から登り、途中に残置ハーケンがあってホッとしたのを覚えてる。Yukiさんは スタスタと登っていった。水際を登ると最後はつるっとした岩が越せない。水中に手がかりがあるというけれど怖いのでお助けを出してもらう。いやだなあ、前回はリードしたのにと、ぶつくさ独り言。前回はもっと水流から離れた乾いた岩を登ったのだった。

すぐに再び6m滝。前回は左壁から登ったがyukiさんはあえて右の一枚岩にとりつく。このルートにこだわっているようで、年々岩がはがれて登りにくくなっているらしい。手がかりのないスラブを空身でトライするが敢えなく滑り落ちる。といっても中段がこれまでの崩れた岩で踊り場となり、そこに落ち葉が堆積しているので衝撃も少なく落ちられるとのこと。今まで登れたのにと、落胆している。自分にはそういうこだわりがないので、別にいいではないかと、さらっとかわし、右岸の壁を慎重に登る。

そしておなじみ、杉田川名物の鉄橋子のかかった7m滝へ。前回はここでもロープを出したが、今回は勝手がわかっているのでノーロープでも問題なし。グラグラして一見不安定そうな状態が何十年も続いているようだが、ここは梯子につかまらないと越えることがむずかしい。

高度を上げるにつれあたりはガスで包まれる。よく言えば幻想的な雰囲気なのだが、うら寂しい気持ちになる。快調に小滝を越えると2条8m滝となる。杉田川のハイライトともいえるは美しい滝で、晴れた紅葉の前回は、その美しさにみなで歓声をあげ、大撮影会となったところだ。右から水流沿いを登り、上段で水流をまたいで越える。その後も快適な小滝、ナメ滝がつづくが、ガスはますます濃くなっていく。

沢幅が狭まったちょっとしたゴルジュ帯の最後は深い釜を持った数mのトイ状滝となる。一瞬こんな所あったかな、どこを登るんだろうと思う。右側はヘツリが嫌らしそうなので左壁をへつるように登る。こういう斜面のトラバースは大の苦手で最初からへっぴり腰となる。ここ、あそこと指示をもらいながら最後はお助けを出してもらって滝上へ。ヤレヤレ、前回どうしたのか覚えていなかったのだが、帰宅後写真を見ると、なんと左岸を高巻いて懸垂で沢におりていた。やっぱりね・・・

すぐに1060mの二俣となり、ちょうど昼時なので休憩する。杉田川のよさは実質二俣までで、ハイライトは終了だ。もう二俣、やっぱり早いと思う。昼はいつもyukiさんが用意してくれる。シソの葉でくるんだお握りを美味しくいただく。じっとしていると寒いので、沢には夏でもテルモスの温かいお茶がかかせない。

右俣へ進むと沢床が赤茶けた岩盤となり様相が変わって穏やかで平凡になる。残念なことに倒木がふえて荒れた雰囲気だ。所々斜面も崩れている。淡々と進んで最後の2段8メートル滝へ。ここでも見栄えのする滝の真ん中に倒木がかかり、景観をそこねている。過去の記録を比べると、どうも2011年の秋の集中豪雨の影響らしい。ここは左から簡単に越える。

小川のようになった沢を進むと右手に赤テープが2本。通常はここが終了点となる。沢からあがって藪をかき分けるとかすかな踏み跡と赤テープがあらわれる。しばらく沢に戻る方向に進んだところでyukiさんが立ち止まる。そして解説。ここから踏み跡の明瞭な右手に直進したくなるけれど、そうすると道がなくなって1時間ほども藪こぎする羽目になる。正解は一見藪っぽい左手を戻るように登って行くことだと。そうそう、前回はまさにそのドツボにはまり、だだっ広い尾根でうろうろしたあげくに道を見つけて小躍りしたのだった。つまり、道はジグザグに付けられているわけで、あとはテープを目印にうすい踏み跡をたどる。

笹藪をかき分けていくうちにyukiさんがそわそわしはじめ、タケノコ狩りを始めた。なんとこんな笹藪に、わざわざ登山道を登ってタケノコ狩りに来たこともあるのだという。その楽しさがわかっていない私はものずきだなあ~としか思わなかったが、藪に入ってゴソゴソ探し始めたので、ちょっとマネて見る。今年はまだ時期が早いらしいが、それでもビニール袋一杯になるくらいはすぐに採れたようだ。

突然藪が途切れて仙女平へ。ここからは快適な表登山道を下るだけだ。途中沿道奧の藪でゴソゴソ音がすると思ったら地元のタケノコ狩りのご夫婦だった。そうとう年季の入った人で太くていかにも良質なタケノコをたくさん収穫していた。それに刺激されたyukiさんは再びタケノコモードとなり、ちょっとだけといいながら藪に入っていく。好きなんだなあ。しっかりした収穫袋が一杯になったところでタケノコ狩り終了。

登山道をそのまま進むと駐車場と離れてしまうので一般に沢やは枝沢を下るのだが、地元情報では登山道を進んで林道と交差したところで林道に入り、適当な所で斜面をトラバース気味に下っていくとしだいに踏み跡が明瞭になり駐車場手前に降り立った。なんとまだ3時前だ。それほど急いだ訳でもないし、タケノコ狩りをしながらの下山だったが勝手を知っている地元の人と行くと違うものだと感心する。

予報通り下山する頃には天候が回復して青空も出てきたが、安達太良山を振り返ると中腹から上は以前雲の中だった。収穫したタケノコをたくさん分けてもらい、いつものように郡山まで送ってもらい、東北での沢初めを楽しく締めくくることができた。

駐車場9:20-入渓点9:45-二俣11:52/12:15-終了点テープ12:54-仙女平13:27-駐車場14:50