ブナの沢旅ブナの沢旅
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2013.02.17
天狗山
カテゴリー:雪山

2013年2月17日

 

最近新しい作業(後日報告の予定)を始めたため建国記念日の連休はその準備に時間を費やした。翌週は家庭の事情で岐阜に滞在するため、また山には行けそうにないと思っていた。ところがその後sugiさんが週明けに名古屋出張であることがわかった。そこで互いの移動日を一日ずらして近くの山へ行くことにした。そして岐阜から近い奧美濃の、ブナ林がきれいだという天狗山を提案してもらった。

天狗山は20万分の1地図(岐阜)のちょうど真ん中あたりにあって、岐阜県と滋賀県、福井県の県境からもそう遠くない。地図には駿河湾もでているように、気象は日本海側の影響を受けるようだ。登山道のない低山(1149m )で、主に積雪期に登られており、記録を調べると一様にブナがきれいだとある。

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前夜岐阜でピックアップしてもらい、揖斐川上流の横山ダム手前にある道の駅「星のふるさとふじはし」へ向かう。名前のとおり、星がよく見えるところで、満点の星空に気をよくして仮眠。

翌朝は予定より早めに道の駅を出発し、横山ダムを越えて天狗山の北東尾根取り付き手前の空き地に駐車する。日曜日は予報も悪くないのできっと他にも登山者がいると思っていたが、案の定すでに一台駐車しており登山の支度中だった。軽く挨拶をして先行する。

少し車道を進むと斜面に取り付く階段があるので迷うことはない。標識はいっさいないが、尾根に乗りさえすれば自然と導かれるコースだ。プラスチックで階段のステップが切られている急斜面を登る。最初はほとんど雪がなかったが、尾根に乗るとしだいに雪山らしくなりスノーシューをはく。

30分ほど登ると真新しい鉄塔があらわれるが、まだ電線は張られていない。眼下にダム湖を見下ろしながら雑木林を登る。薄曇りだが、視界は明瞭で遠くの山並がよく見える。初めての山域なので山座同定も不確かなのだが、時々地図をだしてお勉強。

700mを越えるとブナ林となる。最近は人が入っていないのかトレースのあとはまったくみられず、ひたすらまっさらな雪を軽くラッセルしながら登って行く。深いところでも脛程度なので、我々にとってはちょうどいい案配だ。時々あらわれるギャップであがいたりするのもアクセントとなって楽しい。ブナで覆われた緩やかな傾斜の広い尾根はなかなかいい雰囲気で、華やかさは微塵もないけれど、とても心が安まり幸せな気持ちになる。

最初は、ブナがきれいだと記録にあっても、会津や東北ほどではないだろうとそれほど大きな期待はしていなかったのだが、900mを越え尾根が雪原のように広がったところで思わず立ち止まる。そしてなんてすてきな森なのだろうと思う。この気持ちをsugiさんに伝えずにはいられず、この森を歩けるだけで来た甲斐があったと告げる。

ふと振り返ると単独の男性が近づいて来た。トレース助かりましたと言われたので、このくらいだとラッセルも楽しめるなどと「余裕」の挨拶。けれどパワーのありそうな若者だったので、先に行ってもらおうと道を譲ると彼も立ち止まる。そして、ここまでラッセルしてもらったのだから、自分がこれから先に行くわけに行かないと、予想外の言葉が返ってきた。なるほど~、こういう考えもあるのかと、ちょっと感動しつつ、ここまでラッセルしてもらったのだから、ここからは私が先に行きますと言うのかと思ったと、冗談めかす。私たちはそんなことは少しもこだわらないので先に進んでほしいと伝えると、あっという間に猛進していった。

おかげで傾斜が増して雪深くなったところはトレースをたどって楽をする。1080mで尾根は西に向きをかえ、無木立の稜線となる。今まで見えなかった南と西側の展望が開け、伊吹山地の山並が広がる。そしてどういうわけか、尾根の南面の樹林は霧氷で覆われている。尾根を境に北面と南面では景色の色が違いより、雪の白さが際立って美しい。地図でも崖マークのある急傾斜の南面も厳冬期らしくクリーミーな雪で覆われなかなかの景観だ。

広い雪原尾根をたどり、こんもりとした小山にあがると、そこが天狗山の山頂だった。細いブナと枝振りの立派なブナの二箇所に天狗山の標識がかけられていた。ほとんど雪のない尾根の取り付きからは想像できないほど雪がたっぷりついた展望の山で、南には真っ白な伊吹山と北尾根が際立って見える。360度の展望で、どの方角をみても幾重にも重なる山並が続いている。一足先に付いた若者といい山ですねと言い合い、満たされる。

幸い風もなく穏やかな天候なので、雪を固めてランチタイム。お湯を沸かしてうどんで温まり、ケーキとお茶でくつろぐ。奧美濃という山域などまったく意識になかったけれど、当然それぞれの良さがあるわけで、未知の山域を知る楽しさを実感する。秋に那須塩原の桜沢を遡行し、広くは知られていない地元のいい沢巡りをシリーズ化したいと思ったが、ここで同じことを思う。雪は低山藪山を魅力的な雪山に変身させる。積雪期とくに厳冬期にブナのあるそんな山巡りができないだろうか。なんてことを天狗山で思ってみた。

いつの間にか高曇りの空に太陽が輝きを増し、青空が広がりはじめた。下りは往路を戻るので、いっぺんで気にいったあの尾根の晴れた景色がみられるのがうれしい。小一時間ほど休んで腰をあげる頃、下で挨拶をした2人がやって来て、下り始めると2人組のスキーヤーとすれ違う。なるほど人気の山なのだ。

登りでは気付かなかった山頂直下の斜面は、風紋が太陽に照らされて美しい。所々張り出した雪庇は十分雪洞が掘れそうなくらい雪がついている。つかの間の稜線漫歩。尾根が北に向いてからはトレースを離れフカフカ雪の斜面を気持ちよく滑り降りていく。こんな時の足裏の感触はまるでマッサージを受けているようでとても気持ちいい。

あっという間に標高を下げ、500mからは痩せ尾根の急斜面となる。ここでシューをはずし、ツボ足で下る。鉄塔を過ぎると雪が減り、土があらわれた所にはイワウチワの葉がたくさん群生していた。最後の階段は滑らないように慎重に下り車道に降り立った。

関東方面からわざわざ行くほどの山域ではないかもしれない。けれど馴染みがないだけで、所要時間は会津に行くのと変わらない。いろいろな条件をインプットして選ぶときの一つのオプションにできるかもしれないなどと話しながら名古屋駅まで送ってもらい帰路についた。(sugi、ako)

駐車地点6:35-天狗山11:05/11:55-駐車地点14:05

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