ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.12.20
北面白山~権現様峠~南面白山
カテゴリー:雪山

2012年12月20-21日

 

2年前の初夏に二口の穴堂沢を遡行した。沢を詰めてから登山道を見つけるのに苦労したが、あたり一面に広がるブナの原生林の素晴らしさに魅せられた。以来、いつか霧氷で覆われたあの森を歩いてみたいと思い続けていた。そしてようやく今年中に実現しようと計画した。

コースが少し厄介だったが、あれこれ考えているうちに例のごとく気持ちがふくらんでしまい、まだ登っていない北面白山からの周回コースとした。登山道があるし、エスケープルートもある。夏道なら日帰りも可能なコースタイムだ。あとは現地判断にゆだねることにして出発した。

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仙台駅始発の仙山線で面白山高原駅へ向かい、駅前からシューで歩き始める。2009年の1月に南面白山に登った時はまだ面白山スキー場が営業していて駅前も賑わっていたが、その翌年にスキー場が閉鎖されたためシーズンオフの今はひっそりとうら寂しい雰囲気だ。橋を渡って林道を進み、天童高原への登山道に入る。予報は曇りだったが、青空がでている。

登って行くとやたらピンクテープが目立つ。よく見ると二次林のブナに混じるナラの木ばかりについている。たぶん伐採対象の目印で、山をブナ林に戻そうとしているのかもしれない。天童高原一帯はかつてブナの原生林だったものをスキー場開発で皆伐してしまったと聞く。反対側の面白山スキー場もそうだ。それが今では閉鎖され放置されている・・・

天童高原の管理棟の軒下で休憩後、北面白山登山口の標識にしたがって進む。キャンプ場や自然学習遊歩道などが完備されている。雪は少なく道も歩きやすい。順調に距離をのばしていくとしだいに雪がふえ樹氷の道となる。気がつくとクマの真新しい足跡。ずっと登山道を歩いている。ピーピー笛を鳴らしながら行くと、足跡は斜面を登っていった。

水場を通過するが標識もないのでまだ分岐ではないだろうと、そのまま快適な水平道を進む。しばらくしてようやくおかしいと気づくと、やはりトラバース道の長左エ門新道に引き込まれていた。おかしいなあ、絶対に標識があるはずなのに・・・

このまま進めばもう一つの登山道と合流して面白山には行けるが、三沢山を経由する周遊コースにしたいので急いで引き返す。水場に戻ってよく見ると標識が倒れて雪に埋もれていた。やっぱり・・・

登山道はここから急斜面を登るように左に曲がるので、うっかり通り過ぎてしまったのだ。40分のロスタイム。

尾根にのると雪がふえ、暗雲が広がって吹雪き出す。三沢山山頂は広々とした台地状で山形側の展望がいい。樹林の下で腹ごしらえの休憩を取る。あたりの山々は樹林が一面霧氷で覆われていてとてもきれいだ。1000mそこそこの山なのに、やっぱり東北の冬山は違うなあ~。

尾根を登ると早くも樹林が矮小化し、積雪のため藪状態で歩きにくくなる。時々ルートも判然としなくなり、とたんに時間がかかる。けれど吹雪いていた曇天はみるみる青空に変わって行く。なんという急変ぶりか。樹氷も濃くなり、青空に映えて美しさをます。期待していなかっただけに嬉しさがこみ上げる。

行く手には樹氷の森を突き抜けて真っ白な面白山が聳えて見える。なんて美しいのだろう。北面白山の北の肩に乗ると展望が広がるが、それもつかの間。再び暗雲が広がり、天候は目まぐるしく変わる。見下ろす谷筋は樹氷で覆われ墨絵の世界が広がっている。

凍えるような雰囲気の山頂へ。南側にはどっしりとした山容の大東岳が白く霞んで見える。ささやかながら最初の目標を達成。時刻は12時半と、ロスタイムのわりにはまずまずのペースだ。北面白山からの縦走路は積雪期には日帰りが厳しいのか記録がない。積雪期の様子はわからないが、いぜんトマの会が厳冬期に2泊3日で縦走しているのでそれほど簡単でないことはわかっていた。

登山道が尾根にあるところは明瞭なのだが、少しでも尾根から外れると雪のために判然としなくなる。藪が完全に隠れていれば登山道にとらわれずに尾根筋を進むこともできるのだが、今の時期はそれもできずにかえってルートファインディングが難しい。心配していた痩せ尾根の通過は問題なかったが、厳冬期は雪庇とナイフエッジで苦労しそうな所だ。

視界はあまりよくないが、ルート取りに困るほどではない。中面白山は三角錐の端正な山容で、遠目には北面白山よりもカッコいい。山頂標識はなかったが、これからたどる尾根筋と大東岳山麓のブナ林を一望できた。う~ん、あそこまでたどり着けるだろうか。

中面白山からの登山道は北西にのびる尾根の途中から尾根を外れて山腹を下り長左エ門平の鞍部に下る。ここが要注意のポイントだ。慎重に読図をしながら下ったつもりだが、やはり尾根を外れる地点が判然としない。それらしい斜面を下るが、どこも恐ろしく急斜面だ。冷や汗をかきながら下るとようやく傾斜が緩み、いい雰囲気のブナ林が広がっている。泊まりたくなるような、すてきなブナ平。

コンパスで方向を定めて進むと再び急斜面となるが、こんどは笹原の斜面なので、笹につかまりながら下って行くと眼下に平地が見えて来た。長左エ門平の鞍部についたようだ。標識もある。山腹のトラバース道である長左エ門新道と、紅葉川沿いに下るルートの分岐点だ。

さて、すでに3時過ぎ。この鞍部から先に進むと再び登りの痩せ尾根でテン場適地らしいところはしばらくなさそうだ。もう少し進みたかったが、翌日早出することにして行動を終えることにした。この頃から雪と風が強まり、テント設営に一苦労する。先に進まなくてよかった。テントに入って一段落すれば、いつもと変わらない快適空間と美味しい食事で一日を終えた。

一晩中風が吹き荒れていた。雪も降っている。夜中に度目覚めてからは不安な気持ちで眠れない。早く起きたがいつまでも吹雪いているし、なかなか明るくならないので、グズグズしてしまう。風は相変わらずだったが7時近くなって外に出ると東側が朝焼けの空で晴れているではないか。昨日下ってきた斜面の霧氷の樹林が朝日で薄赤く染まっている。キャッホーと、急いで出発の支度をする。昨晩降った雪は15㎝ほどか。7時半の遅い出発となる。

少し進むとブナ林が広がり、しばらくは尾根筋の道が明瞭だ。こんな風にずっと道が尾根についていれば楽なのだが、尾根より一段低い西側についている場合が多く、進むのに時間がかかる。一度視界不良でルートをはずし、違う方向に下りかけてしまう。さらに1025mポコを過ぎて鞍部に下ると尾根ノ形状が複雑になる。道は東から張りだした尾根を巻いてトラバースしていくが、どこを見ても藪っぽくて道があるのかわからない。

随分時間がかかってしまったが、ようやく942mの鞍部である奧新川峠へ。だだっ広い平原のような峠だ。ここでsugiさんが真顔でこれからどうするかと話を持ちかけてきた。これまでかかった時間とコースタイムを比べると、予定のコースを行くのは無理ではないかと言う。せめて権現様峠までは進みたい気持ちだったが、ルートのほとんどが山腹のトラバース道なので、これまで以上にルートファインディングが難しそうだ。

南面白山への到着はこれまでのペースで行けたとして2時から3時の間。一年で最も日が短い時期だけにヘッデン下山になるのは間違いない。あれこれ冷静に考えると予定ルートは厳しいと納得。ここから紅葉川沿いの登山道を面白山高原駅に下ることに決めた。

少し残念な気もしたが、道中に予想外のすてきなブナ林があって霧氷を堪能できたではないか。沢沿いの道だって大変かもしれないしと、休憩しながら気持ちを切り替えた。

歩き始めは幅広の明瞭な道で快適だ。こんな風にずっと続けば昼前に下山できるなんて一瞬思ったが、そうは問屋が卸さなかった。しばらく下って沢を見下ろすようになると道が消えた。地図の道は実際とだいぶずれていていい加減だ。上に登るのか沢に下るのか・・・

いったん沢に下ってみたものの、すぐに進めなくなる。窪のような枝沢を登って登山道をさがす。何となくそれらしいトラバース道まで乗り上げて人心地つける。所々きわどいトラバースを強いられるが、たぶん沢沿いの道のようだ。そのうち道幅が広がり明瞭になったため間違いないことがわかるが、とにかくテープとか標識類がいっさいないので確信が持てない。

長左エ門平からの道が合流するところではじめて標識とテープがあらわれホッとする。GPSの軌跡は地図の道とかなりずれていて合流点も違う。無雪期に歩くには問題ないが、こういうとき苦労する。そういえば、穴堂沢を遡行して権現様峠を探す時にも地図と峠がずれていたため苦労した。

以後は時々テープも見られるようになり、ルート取りの苦労からは解放されたが、沢沿いの難所が続出する。トラロープを雪から引っ張り出してきわどいトラバースをしたり、ある所では行く手が雪壁で足下が切れ落ちていたり・・・よく見るとここにもロープがあった。ヤレヤレ、こういう所はもっと雪がふえると通行不可になるだろう。というか、今回はエスケープでやむなく歩いたが、今後は雪崩の恐れもあり積雪期には歩いてはならないコースだと感じた。

権現様峠からの道と合流してからは道幅も広がり、渡渉点には立派な橋が架かっていた。下山が近いことがわかる。最後は吊り橋を渡ると駅を見下ろし、紅葉川の対岸の岩壁には大ナメ滝が落ちていた。なかなかの渓谷美である。なんだかんだとエスケープ道もコースタイムの倍以上の時間がかかってしまったが、簡単に下っては心残りとなるから、ちょうどよかったなどと軽口をいいながら駅へもどった。

ラッセルこそほとんどなかったが、藪が完全に消えていない厳冬期前の雪山はルート取りが難しいことを実感させられた。もともと今回の山旅のきっかけとなった権現様峠から樋ノ沢源頭部にいたるブナの森へは届かなかったが、いつか自由気ままに歩ける残雪期の晴れた日にまたやって来ようと心に誓いながら帰路についた。(sugi、ako)

20日 面白山高原駅-天童高原―三沢山―北面白山-中面白山-長左エ門平

21日 テン場-奧新川峠-面白山高原駅