ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.10.02
王滝川鈴ガ沢東股~中股下降
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2012年10月2日

 

先月の木曽駒山麓の幸ノ川で中央アルプスの沢に馴染みができたこともあり、今回は御嶽山麓王滝川の鈴ガ沢へ。以前からナメと斜滝、水の色が美しい沢として行きたい沢リストに入れていた沢だ。幸ノ川は滝の連続で楽しかったけれど、しっとりと渓を歩くという渓相ではなかった。鈴ガ沢はきっと、そんな期待に応えてくれるはず・・・

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前夜茅野駅でピックアップしてもらい、木曽の王滝村をへて鈴ガ沢林道の車止めゲートへ。地図でみるととても東京方面から日帰りできるとは思えない距離だが、最近は茅野にベースができたおかげで、前夜発で無理なく行けるようになった。

翌朝はうっすらとガスに包まれた林道を歩いて三沢橋から入渓する。すぐに二俣となり、右の東股へ進む。左は下降する予定の中股だが、何だが薄暗くてさえない。東股に入るとすぐに大きな釜を持つ緩やかな斜滝があらわれ、しっとりといい雰囲気だ。斜滝や釜のある小滝を快適に越えて行くとナメとなる。まるで東北の沢に来たみたいだと最初から好感触。その後ゴーロを少し歩くと東股橋が頭上を横切る。

橋をくぐってしばらくすると再びナメと小滝が連続し、一度もゴーロのない美しい渓相が続く。あたりは依然靄っているが、きっと晴れるはず。意外と早くに30m大滝が見えて来た。聞きしに勝るすばらしい滝だ。前衛の2条6m滝が均整の取れた全体像を作り出している。これはきっと日本の名瀑100選に違いないと思うほど美しく立派だが、沢を遡行しないとみられない滝は選ばれていないのだろうな。沢やが選ぶ名瀑裏100選なんてどうかしら、なんて思う。

6m滝を左から巻き上がり、ここは大高巻きになるはずだと右岸を見上げる。するとルートを探すまでもなく、なんと赤テープがあるではないか。きっと最近つけられたのだろう。楽勝だねぇといいながら、しっかり踏まれた巻き道を登る。一部木登りに近い部分もあったが、あっけなく滝上に降り立つことができた。その後も巻き道はどこもしっかりしていて頭をひねる必要がまったくない。

大滝上の倒木がかかった4m滝は、右壁に取り付くとほしいところに絶妙なガバがあった。登ると古いシュリンゲの残置。滑り台をしたくなるような2段ナメ滝でsugiさんが遊んでみたが、あまり滑らずに残念そう。

つぎつぎと深い釜をもつトイ状滝があらわれる。火山岩のせいか、釜の水の色がとてもきれいだ。最初は陽が射さなかったので藍色だったが、太陽が出始めるとサファイアブルーになり、さらにコバルトブルーにミルキーブルーと、どの釜も微妙に色彩が異なり美しい。

暑い時期ならためらわずに水浴びをして遊びたくなるような釜ばかり。暑くなくても元気のいい若者なら嬌声を上げて楽しむところだろうが、中高年パーティは眺めるだけで十分なり。

こんな具合なので、遡行時の天候によって沢の印象は随分違ってくるかもしれない。中盤になるとナメが続くが、ナメ床は赤茶けた色をしている。ある程度水量があったほうが美しさが引き立つだろうな。両岸は広葉樹が多く、色づきはじめて秋の気配がただよう。もう少ししたら紅葉が見事なはず。

沢登りというより、滝見物の沢ハイキングだ。山渓社の10年前のガイド本では3級となっていた。大滝の巻き道が明瞭でなく、いくつかの滝を登ればそうなのかとも思うが、遡行感触としては大目にみて2級というところ。もっとも1700mの三俣から先の田の原に抜ける本流の滝については不明だが、左のガレ沢を詰める限りはとくに悪場はない。

不思議な釜があらわれた。池のように岩壁で囲まれて水流の入り口がないのだ。前方に滝がみえるので釜を回り込んでみると二つの釜がしきられたようになっていて、上の釜には滝がゴウゴウと水を落としている。そして下の入り口のない釜の水面下には細い水路があった。

1600m二俣は両門ノ滝。右へ進むが左はとても鮮やかな緑色の苔滝だ。苔がフカフカで気持ちよさそうなので、ちょっと登ってみると、苔は滝上もずっとつづいているようだった。

しだいに側壁が高くなり、ウロコ模様のような岩層が興味深い。黒い8mナメ滝を右横の壁からこえると大きな洞窟があらわれる。つぎつぎと興味深い地層だが、いずれも大昔の火山活動と関係があるのだろう。その後もきれいな色の釜を持つナメ滝やトイ状滝、直瀑があらわれ、飽きることがない。

さらに進むと渓相が変わり、ゴツゴツした岩が目立ちはじめる。1700mの三俣だ。左のガレ沢へ進む。地図でみると大ガレのマークがついて悪そうだが、実際には水涸れしたゴーロの急登で、ぐいぐい高度を上げていく。両岸も上部は荒涼とした岩肌だが、意外にもお花畑が広がっていた。この頃には抜けるような青空で、明るくアルペンチックな雰囲気だ。

いつの間にか両岸が低くなり、見晴らしのいい台地状の広い稜線の一角にでた。三笠山が端正な山容で裾をひいている。本流を詰めると三笠山山頂近くのバスターミナル田の原へ抜けるらしい。あんな所にまでバスで行けるなんて、と思ってしまう。さらに進むと御嶽山がドーンと目の前に。さらに驚いたのは山腹がごっそり崩れ落ちている。「御嶽崩れ」だ。なにも知らなかったので興味深い。1984年の王滝村を震源地とするM6.8の地震による崩落。ものすごいエネルギーだ。

予想外の光景を見ることができた。さあ、ここから中俣下降点までが読図の核心となる。左手には小三笠山。山の北側を回り込んで西に延びる尾根の鞍部をめざす。溶岩台地のような尾根の鞍部はだだっ広くて茫漠としており、視界がないとお手上げかもしれない。

要はいかにヤブをさけながら尾根を回り込むか。鞍部の中心らしきところには標識杭が2本。ヤブのない溶岩面を拾いながら進むと尾根の反対側にある伝丈沢源頭が見えてきた。地震で崩壊した山腹の土砂はこの広い尾根を越えて伝丈沢に流れこみ、さらに下流の村を飲み込んだという。

赤茶けたガレを登って小三笠山から西に延びる尾根にのる。あとは適当にうすい灌木をかき分けながら下って行くと、しだいに沢筋が見えてきた。ガレとゴーロを200mほど下るとようやく水がでて沢らしくなったので小さな川原で昼食の大休憩。時間があまり取れないと思っていたので、今回はカップ麺をもってきた。30分ほどくつろいで下る。

中股沢はとても下りやすい沢だ。まるで道路のような長いナメが続く。少し滑っているの沢を下る場合はフェルトがいい。ちょっとしたナメ滝が出てくるくらいで悪場は皆無。1箇所トイ状滝は左岸に巻き道があった。

1時間ほどで林道横断点へ。橋ではなくコンクリートで固めてあり、穴をあけて水を通している。その作り方がいかにも乱暴で雑だ。さらに沢を下ると再び長いナメが出てくる。水量が少ないのできれいさがイマイチかもしれない。そして続く長いゴーロに飽きるころ小滝群となり、巻いて下ると東股出合いとなった。思わず、ただいま~。三沢橋から林道にあがり、車へもどった。

今回はすべてが時間通りだった。こんなこと初めてかもしれない。それだけ難所がなかったからだろう。予想に違わずとても美しい沢だった。季節を変えてまた来たいと思った。Sugiさんは近いので、ここなら一人でも来れると言っている。夏のウォータースライダーと釜の水遊びも楽しそうだし、秋の紅葉もいいだろうなあ。そんなに濡れないので天気さえよければ10月一杯大丈夫そうだ。

それなのに帰り道、とってもよかったけど、なにかもの足りなくない?と、誰からともなく率直な感想がとびだした。ハードな遡行をしたあとだったらもっと良かったと思うが、最近は癒されっぱなしの沢がつづいたせいか、四苦八苦する沢が恋しくなった。なんて、ね。そうしたらきっと、今度は鈴ガ沢が恋しくなるはず。ああだこうだと言いながら、それもまた楽し。つぎなる沢旅に気合いを込めながら帰途についた。(sugi、ako)

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林道ゲート6:10-三沢橋(入渓点)6:30-大滝上8:15-1700m二俣10:27-1950m稜線11:25-中股下降点12:10-1740m12:35/13:05-林道横断点13:55-三沢橋15:05-林道ゲート15:25