ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.09.24
箒川鹿股川スッカン沢~桜沢
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2012年9月24日

 

当初は23-24日の二日間で懸案の小田倉沢へ三度目の正直を期待して計画していたのだが、直近になって日曜日が雨予報となった。月曜日だけで日帰りできないことはなかったが、やはり歴史の足跡を探しながらのんびり沢泊まりで行きたかった。

よほど縁がないと思いながら、月曜日1日の日帰り沢で仕切り直し。最初は同じ足尾の沢を代案としたのだが、標高が高い山なので月曜日午後の予報悪化が気がかりとなった。そこで、多少の悪天でも気軽にいけて、適度に遠いところで、まだ行ったことのない沢はどこだろうと頭をひねってみた・・・

う~ん、ならばこの際、地元以外では知られていないけれど以前から気になっていた高原山山麓の鹿股川桜沢はどうだろうか。見所は短い沢なので、となりのスッカン沢と組み合わせれば一日楽しめそうだ。

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夕方出発するというのに決めたのが昼ころという、土壇場の記録を塗り替える慌ただしさだったが、雨の中を予定通り出発。高井戸駅前でピックアップしてもらい、東北道の矢板ICから八方ケ原の山の駅たかはらへ向う。まったく初めての山域だが、ハイキングコースが整備された観光地のようだ。

山の駅の広い駐車場で仮眠するが、軽く短いコースなので目覚ましをかけずにいたところ、めずらしく6時近くまで熟睡してしまった。簡単に食事をすませ、まずは登山道を下ってスッカン沢出合へ。そう、この沢は登山道を下って入渓し、適当なところで終了すればすぐに出発点に戻れるという、とても手軽な沢なのだ。

小一時間ほど下ると登山道が桜沢に近づき、立派な雷蕾の滝があらわれる。滝も立派だが、標識も名前も立派。さすが地元で人気のハイキングコースだと感心する。ここで沢支度をしてさらに登山道を進むと、さらに堂々たる咆哮霹靂の滝が近づく。ほうこうへきれきの滝。ものすごい名前の滝だが、いずれも激しく音をたてて流れ落ちる滝をあらわしているらしい。

大深沢の「ナイアガラの滝」を小振りにした感じだ。こんな滝が次々とあらわれる桜沢だが、すぐに遡行してはもったいない。って、どういうこと?ともあれ、さらに登山道を進んでスッカン沢と桜沢の分岐点で沢に下り、まずはとなりのスッカン沢を遡行する。

直前まで大雨だったせいか、水量は多く少し白濁している。変わった名前の沢だが、高原山のカルデラ跡を水源としていて鉱物などの火山成分が多く含まれているため、かつてこの沢の水は辛くて飲めず「酸辛い沢」だったのがなまってスッカン沢と呼ばれるようになったのだという。

おおむね大岩ゴーロと平瀬が続くが、水量が多いため水流に抗って歩いたり渡渉するだけでも、適度の緊張感が得られて楽しい。しばらくすると右岸の側壁に木の階段があらわれ、階段の下には大量の瓦礫が積み重なっていた。昨年3月の大地震で崩れたらしく、遊歩道には通行禁止のテープが貼られていた。

さらに進むと谷が深くなり、右岸の側壁は柱状節理の大岩壁となる。たぶん普段は涸れているのだろうが、大雨のせいで大岩壁のいたる所が滝となっている。スッカン沢については、いくつか名前のついた滝があることくらいしか情報を得ていなかったので、予想外の展開に大興奮。この大岩壁の雨滝群をみられただけで満足できるほどだった。

ワクワクしながら進むと前方にものすごい水量の滝がゴウゴウと音を立てている。雄飛の滝だ。水しぶきを浴びながら少しだけ近づいてみるが、吸い込まれそうで空恐ろしい。スッカン沢なんてさえない名前だし軽くみていたが、なかなかの沢ではないですか。ひとしきり見物してから踏み跡をたどって遊歩道にあがり高巻く。

沢に下る所を探しながら進むと仁三郎の滝の標識があらわれ、眼下に2段8m滝が見える。滝を越えたあたりで緩い斜面を下って沢に戻る。登れない滝ばかりだが、遊歩道を利用して簡単に巻くことができるのは、四国の滑床渓谷を遡行したときのようだ。

沢に降りると再び両岸が岩壁となり、至る所から滝のように水がしたたり落ちている。とても面白い渓相だ。滝の裏側にまわりこんだりして遊びながら進むと大きく深い釜を持つ小滝となる。かなり深そうなので左岸の斜面を這い上がり、軽く藪を漕ぎながら降り口を探していくと素廉の滝と呼ばれる2段10m斜滝があらわれる。どの滝も水量が多く美しい。踏み跡をたどって滝上へ降りる。予想以上に豪快で面白い沢だ。

しだいに両岸が低くなり、開けた川原状となって平凡になる。これまで予想以上に楽しかったけれど時間も押してきた。どこで引き返してもよかったのだが、節目となる県道の橋が横断するところで遡行を終えることにした。地図を見ると上流はさらに長い工程だが、たぶん見所は下流に集中しているのだろう。

快適な遊歩道をたどり、朝歩いた桜沢の分岐点へ戻って昼食の大休憩。けっこう水に浸かって濡れたので体が冷えてきた。ラーメンを作って温まり、さあこれからがお楽しみの桜沢だ。

桜沢に入ると、いきなり咆哮霹靂の滝に迎えられる。朝かいま見た時は一つの幅広滝に見えたが、近づくと二つ別々の滝が小尾根を挟んで並んでいる。左の幅広8m滝は直登できないので小尾根の右側にある斜滝の下へ。

どこでも登れそうな気もするが、一番取り付きやすそうな左側のトイ状を登る。途中で1箇所手がかりが乏しいところがあったが、Yさんが突破したので後続は安易にお助けに頼ってしまった。二人ともセカンドにまわると踏ん張る気力がなくなってダメだねと言いあう。

滝上からは沢幅が広がり、ナメとナメ滝が連続する。写真で想像していた以上にスケールが大きく、とてもすばらしい沢だ。二人とも頬が緩みっぱなし。おもわず、大深沢も真っ青だね~などと口走りながら、楽しくヒタヒタ、ヒタと進む。

予想以上にハイライトのナメが続き、しだいに岩盤が赤みを帯びてきた。時折射す陽の光が反射して美しい。さらに進むと苔蒸した巨岩の上に吊り橋がかかっている。その先には太いパイプもしかれており、とたんに人工物がふえるが、沢はまた元の自然の姿にもどる。ちょっとした巨岩帯となり、こえると再び沢幅が広がって前方に大きな滝が見えて来た。

ナメを緩やかに登ると朝立ち寄った雷霆の滝があらわれる。沢から眺める滝は登山道からみた滝とはまったく姿が違い、まるで別の滝のようだ。中央の水流がないリッジにとりつく。高度感はあるが、手足が豊富で楽しい滝登りだった。

これでハイライトは終わりかと思いきや、滝上もさらにナメとナメ滝があらわれ嬉しくなる。もっと短いと思っていたので、これだけ楽しめれば十分だ。しばらく最後の余韻にひたりながら進むとさすがにゴーロの平凡な渓相となる。

最初は右俣を詰め、地元で評判らしい「おしらじの滝」を見物してから県道に抜けるつもりだったが、1時間ほどのゴーロ歩きとなる。もう滝はたくさん堪能したし、二人ともそろそろ感がでてきた。登山道が沢に近づく所で遡行を終えることにした。斜面を上がるとあっという間に登山道があらわれ、30分ほどで車にもどった。

桜沢は2時間ほどで遡行を終えたが、短い行程ながらそのすべてが美しく、とても内容の濃い沢だった。地元の山岳会ではよく遡行されているようだが、一般にはほとんど知られていない。

けれど今回のようにスッカン沢と組み合わせれば、まったく異次元の渓相を楽しむことができる充実の日帰り沢となる。高井戸からは(渋滞がなければ)車でおよそ3時間。それほど遠くはないので、なにかの機会があれば訪れる価値は十分にあると感じられた。(sugi、ako)

sukkan1 sakura1

山の駅たかはら6:45-雷霆の滝7:30/7:50-スッカン沢出合8:15-県道横断点10:40-桜沢入渓点11:25/12:00-登山道13:55-山の駅たかはら14:25