ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.08.15
大洞川和名倉沢
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2012年8月15-16日

 

かつて所属していた山の会で何度か沢に連れて行ってもらった、往年のベテラン沢やAKさんと久しぶりに沢へ行く機会をえた。4年前の赤谷川以来だ。あの時もせっかくのチャンスだからと、自力では難しい憧れの赤谷川をリクエストして実現させた。今回も同じ理由で、当初は二王子岳に突き上げる内ノ倉沢七滝沢を提案したのだが、天候や日程の制約などで奥秩父の和名倉沢に変更となった。

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沢泊りにすればそれほど長い行程ではないので、前夜発ではなく当日の早朝に出発することにした。前日から朝方まで山沿いは雨だったので、前夜発にしなくて正解だった。4時に自宅近くでピックアップしてもらい7時半には現地に着いた。ちょうど電車で奥多摩の沢に行く感覚だ。

埼玉大山寮の駐車スペースで沢支度をすませ、しばらく大洞川沿いの車道を歩くと、ガードレールの切れ間にカーブミラーと看板が見えて来る。ここから植林帯の斜面を下る踏み跡をたどって吊り橋を渡る。

尾根を回り込むように山道を登っていくと左手に立派な慰霊碑が建っていた。「山は国界に属せりといへども、山を愛する人に属せり」昭和61年、享年26歳。遭難で息子さんを亡くされたご両親の悲しみと鎮魂を願う気持ちが痛いほど伝わってくる。立ち止まって手を合わせ、ついでに安全な遡行を祈願して先へ進む。

山道は沢に下ったのでここから遡行することもできたが、もう少し先の木橋まで山道をたどる。途中、苔蒸した石積みの炭焼窯があり、きれいに原型を保っていた。中をのぞくと土間のようで、いざというときの避難場所になりそうだ。

すぐに木橋があらわれ、ここから入渓する。しばらくは日本庭園風の苔蒸したゴーロやナメ小滝が続く。いかにも奥秩父の沢の雰囲気だ。石津窪を過ぎると2段15mの弁天滝があらわれ左岸から巻く。このあとも登れる滝と登れない滝がはっきりしているため、登れないと思うと必ず明瞭な巻き道がある。だからといって決して楽ではないのだが・・・

沢床に戻ると再び小滝がつづく。2段5mナメ滝では、のっぺりと傾斜のあるナメの取り付きが難しそうに見えたので不用意に右岸の泥壁に取り付き、途中で行き詰まってしまう。再びナメ滝の下に回り込んだところ取り付き方がわかり、目一杯フリクションをきかせて這い上がった。ここも安易に逃げてドツボにはまる悪い癖の典型だった。

左手に美しい滝を落として出合う氷谷を過ぎると穏やかな渓相となり、ナメ小滝や登れる滝が続いて心なごむ。800m付近の左岸で赤テープの立木が目にとまった。振り返ると山の斜面に踏み跡がみえる。きっとこれは木橋を渡ってつづいていた山道に違いない。赤テープはその後しばらくつづいていた。沢に入らないで大滝見物ができるらしいので、そのための道しるべのようだ。

左岸の枝沢が2本続けて滝を落としている。2本目のワサビ沢を過ぎるといよいよ「通らず」入り口の滝へ。それほど恐ろしげには見えないが、ここからの連瀑帯は当然巻く。右岸の巻き道はしっかりと明瞭だが、1箇所トラバースするところで足下が崩れていた。高巻き中に連瀑帯を見下ろすと、一見普通の連瀑帯に見える。水量しだいではそれほど難しくなく通過できるのかもしれない。

巻き道は下る様子もなくつづいていたが、大滝の前衛滝下に下るかすかな踏み跡をたどって沢におりることにした。前方に天から降り注ぐような白い水柱が見える。いよいよ2段50 大滝の登場だ。すごいっ、と息を呑む。噂通りの迫力に圧倒される。滝下に近づいて見上げると怒濤の白煙が頭上にのしかかり、恐ろしくてすぐに逃げ戻る。

さてと、大高巻きのお仕事がまっている。心配だったので、念入りに事前情報をチェックしてきた。右手のガレルンゼを登って行くがしだいに足下が不安定になってくる。ちょうどそのあたりで右手の小尾根に取り付くと赤テープがある。

よしよし、調べたとおりだわ。あとは小尾根を少し登って沢に戻る方向にトラバースしていくと自然と沢に下る踏み跡がつづいている。予想していたよりも簡単で時間も短くてすんだ。ホッとして川原で大休止。

船小屋窪を過ぎたところに最初のテンバ適地がある。久しぶりに沢に入ったAKさんは入渓直後にバランスを崩して足を痛めていた。そのため場合によっては早めに行動を終えるつもりだったが、大丈夫だというのでもう少し先へ進むことにした。

大滝上はいったん穏やかな流れとなるが、すぐに20m垂直の滝に行く手をはばまれる。少し戻って左から巻き上がるが、かなりの大高巻きとなってしまった。その後も数多くの小滝がつづき、もう滝はたくさん、といいたくなる。

地図の毛虫マークを過ぎ、1225mで流れが南向きになってからはテンバ適地を期待しながら進むが、なかなか見つからない。川原が広がったので休憩しようとしたら、沢から一段上がったところにテンバの跡を発見。安堵して、即座にここで行動を終えることにした。

さあ、テントを張って焚火をしようと、支度を始めて唖然・・・テントとポールがちぐはぐではないですか。二人用のテントポールが手元にないため大きなテントをかついで来たのだが、一人用テントポールを持って来てしまった。

当初はツェルトの予定だったが、夜中に雨の可能性が出て来たため直前にテントに変更したのだ。あわてて変更するとろくなことがない。けれど不幸中の幸いというか、へなっているもののなんとかテントを立てることができた。これが逆だったらできなかったはず、と胸をなで下ろす。

なんとかかき集めた薪は前日までの雨でしめっていたが、AKさんが頑張って火を熾してくれた。ご苦労さまと乾杯し、ささやかな宴を楽しんだ。幸い夜中に降られることはなかったが、予想以上に冷え込んだ。シュラフカバーだけの私は夜中に着込めるものを全部着た上に、レスキューシートをかぶってようやく安眠できた。

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翌朝の天気は上々だ。AKさんの足の具合もかなり良くなったと聞きホッとする。テンバの先は深い釜を持つ小滝。朝一番から濡れたくないので高巻くことにした。小滝を越えたあとのトヨ状滝の連瀑が嫌らしいようで、左手の斜面には明瞭な踏み跡があった。

この高巻きがちょっとくせもので、上部には古いトラロープが半ば土に埋もれてあった。沢におりる急斜面で腰が引けてしまい情けない。あんた変なところで弱いね、と言われてしまう。高巻きはこれで最後にしてほしい・・・

ホッとして穏やかな流れをたどる。すぐに一段上がった中州のようなところにきれいな草で覆われた平地があり、思わず、これぞテンバ適地と唸る。さすがに渓相も一貫して穏やかとなり、苔の鮮やかさがましてくる。相変わらず小滝がつづくが、どれも快適に登れるものばかりだ。少し暗かった沢にも陽が射しはじめ、なんだか今日はすべてに優しく迎えられている気がした。

美しい末広滝をこえると苔蒸した渓相はさらに磨きをかけ、その美しさに何度も立ち止まってしまう。みずみずしいマリモのような苔に手をのせるとヒンヤリとした冷気がわき上がってくる。なんて気持ちのいい感触だろう。辺り一面苔の世界が広がる。苔の壁を流れ落ちる美しい2段20m滝は左岸の枝沢から巻き上がる。その先の6m階段状のスダレ滝もエレガント。ウットリしながらの楽しい遡行がつづく。

1670mの二俣を右に進む。水量は少ないものの、苔の厚みはさらに増し、階段状の苔滝が続く。沢の経験が長いAKさんも、これほど苔で覆われた沢は初めてだと言う。しだいにゴーロ沢となるが、すべて苔で覆われている。水は涸れそうでなかなか涸れない。苔の保水力のなせる技か。1810m二俣を右へ進むと地図ではわからない分岐があらわれる。

ガイドはどれも左へ導いているが、山頂へ行くつもりはないので、早めに登山道へ抜けられる右へ進んだ。歩きやすそうな所をつなぎながら登っていくと藪こぎもなくひょっこりと登山道にでた。近くに奥秩父山岳会の「白石山頂方面」の標識がある1950m付近だった。今まで虫は全くいなかったのに、登山道にでるやブヨがうるさい。靴を履き替え着替えをして長い下山路に備える。

二瀬尾根はおおむね歩きやすい道だが、造林小屋跡からはかつての森林軌道をたどるだけあって、延々とトラバース道が続いて標高を下げない。途中、東に張り出した尾根の1350mトラバース道で尾根を下る方向のテープがあって気になった。

あとで調べたところ、最初にたどった山道につながっているらしい。このあたりの記録や情報は「すうじいの時々アウトドア」に詳しい。今回和名倉沢の遡行図は、手元にある三冊のガイドブックに出ていたが、どれもわかりにくかった。結局一番頼りになったのが、すうじいさんのサイトからとった遡行図で、とくに地形に忠実な水線と標高が記載された枝沢の位置がわかりやすかった。

ようやくトラバース道が終わる登尾沢ノ頭の標識がある平坦地(電波反射板跡?)へ。ここからは延々と林帯の尾根を下り、吊り橋を渡ると駐車場の裏へ出た。さすがに長いブランクのあるAKさんは堪えたようで、何度も休みながらの下山となったが、それほど遅れることもなく無事に予定通りのコースを周遊することができた。心よりお疲れ様でした。

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15日 埼玉大山寮駐車地点7:40-和名倉沢入渓点8:35-大滝12:30下-1300m付近幕営地15:15

16日 幕営地6:20-1670m二俣9:10-登山道11:15/11:50-水場13:15/13:30-駐車地点16:00

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