ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.08.26
万太郎谷井戸小屋沢右俣
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2012年8月26日

 

昨年現地まで行ったにもかかわらず、目覚めた早朝の寒さにくじけてあっさりと行き先を変えてしまったいわく付きの井戸小屋沢。早くも再訪の機会をえた。

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前夜、越後湯沢駅でsamさんにピックアップしてもらい現地へ向う。土樽駅は電灯がいつまでもついていたり夜中に電車が通過したりで落ち着かないので、翌日の入渓点近くまで吾作新道を進むことにした。

去年と同じ場所に駐車すると、さっそくsamさんが宴会の準備に取りかかる。何をすると思いきや、バックドアをあけて屋根にしたまま特大カヤテントで車をすっぽり覆い被せる。道具箱を椅子とテーブル代わりにセットすれば、たちまち屋台・万太郎のできあがり~。

Samさんとは一年半ぶりなので、入山祝いをしようと伝えておいたのだ。さっそくビールで乾杯し、積る話に花が咲く。Samさんの最近の単独遡行は華々しく、早出川から矢筈岳や八久和川などのエピソードを興味深く拝聴。

早朝から車が通り過ぎていく。簡単に朝食を済ませ、我々も車止めまで車を移動。すでに数台が駐車していた。万太郎本谷にも何パーティか入渓しているに違いない。さっそく支度をして林道を進むと、新しい堰堤の工事中。しかも2箇所で。万太郎谷の水流が情けないくらいの細流になって工事現場の脇を流れていた。

すぐに巨大堰堤があらわれ、ここから入渓する。水量は少なめの印象だ。しばらくゴーロ沢を進むと白い花崗岩の岩盤が発達した美しい沢となる。早朝から好感度が高まり、ここを歩けただけで満足だわ~と、はやくも感激する。さっそくあらわれた大きな釜を持つ4m滝はヘソ上くらいの水に入って左壁を越える。ガイドには胸までつかるとあったので、やはり水量は少ないのだろう。

折り込み済みの排気筒をやり過ごすとすぐに右岸から川棚沢が出合い、オキドウキョウの滝が見えて来た。できる限り右岸のバンドをへつるが、行き詰まる。対岸まではほんのわずかの距離だが、samさんがお助け紐をつないで飛び込み、前方の対岸へ乗り上げる。

こうなったら泳ぐしかないし、確保されているのだから問題はないのだが、やはり思い切りがいった。入ってしまえばなんと言うことはないのだが、心理的なバリアはいまだ打ち崩せない。いったん左岸に移ると後半のトロ場となるが、ここはあっさりと右壁を上がって巻き道をたどり、オキドウキョウを抜けた。そして少し気が楽になった。

大きな釜を持つ二条小滝を二つ越えるとすぐに井戸小屋沢出合となるが、最初は大岩ゴーロでさえない。最初の3m滝を左から簡単に巻くと奧に滝が続いている。F1-7m2段滝は一見登れそうになく、巻くのが通例のようだが、samさんは水中にホールドを拾いながら直登していく。お助けを出してもらうが、かなりのシャワークライムとなった。

8m4段滝は右手のバンドから簡単に越えられる。早くも稜線の岩峰群が見渡せるようになり、沢も両岸が開けて開放的な雰囲気となる。つぎつぎとあらわれる数メートル規模の滝はすべてスラブ状の岩壁を左右どちらかが登れる。乾いた岩はフリクションが抜群でアクアステルスが快適だ。とはいえ、私には手放しで快適といえるほど簡単ではないところもあり、適度の緊張感を持ちながらの遡行となった。

つぎつぎと課題をこなしていく感じで滝を越えていくと前方の沢が雪渓で覆われている。小障子沢の出合いだ。井戸小屋沢は右にカーブしていて見えないので、知らないと一瞬行く手が雪渓に覆われていると勘違いしてしまいそだ。

小障子沢出合から少し進むとゴルジュとなり、最初の核心だと思っていた3m滝となる。ところが水量が少ないせいもあって少し拍子抜け。Samさんが右壁を微妙なバランスでへつって抜けた。

ここもお助けを出してもらったので、横着をしてほとんどゴボウで登ってしまう。つぎの3mCS滝とその奧の滝は右岸の明瞭な巻き道をたどる。相棒はできるだけ水線通しを狙うが途中で断念し、小さく巻いた様子。

ゴルジュを抜けると沢は再び開け、真っ青な空に向ってナメ滝が続く。ほとんどは水流を直登するというより左右どちらかの乾いた岩を登る。前回の和名倉沢ではしっとりとした苔蒸した滝登りを楽しんだが、青空に突き抜けるような乾いた岩登りも、それはそれで楽しいと思う。

障子沢、沖障子沢出合いを越えてドンドン滝を登って行くと大きく壁のように立ちはだかる20m滝となる。立ちはだかるとはいえ、両岸が開けているので威圧感はない。水流右側の壁が登りやすそうだ。と思う間もなく、samさんはロープを引いて手がかりの少ない左側を登っていった。ちょっと待ってよ、私は右壁をフリーで登るつもりなんだから・・・一応ロープはつけたが、さっさと右壁にルートをとる。きわめて爽快なクライミングだった。

さらに階段状の7m滝が続き、楽しさマックスの感あり。振返ると茂倉岳を中心に国境稜線の山並みが見渡せる。とても気持ちのいい眺めだ。どちらを向いても楽しい遡行を続けながら二俣へ。

これまでとても順調に進んできたので、ここで少し早いがソーメンタイムをとることにした。最初にsamさんからリクエストがあったときはそんな時間あるだろうかと半信半疑だったが、楽しみながらも余裕のコースタイムで二人ともご機嫌だ。

ここから右俣へ進むが、もう一方の左俣はいかにも険悪そうな滝を連ねている。詰め上げる標高も右俣より300m高く斜度も急だ。いかにも険谷好みの篤志家が好みそうな雰囲気なり。さすがのsamさんも、やっぱりこっちへ行こうとはいわなかったが、左を降りようぜ、だと。

右俣に入ると大岩ゴーロとなって高度を上げていく。しばらくすると黒っぽいゴツゴツ岩の7m滝があらわれ、その上には第二のポイントだと思われる10m滝が続いている。滝はほとんど涸れており、真ん中がヌメッテいるように見える。記録の多くでは上部がわるいようなことが書いてあったが、問題なく直登できそうに見えた。

Samさんがロープを引いて登って行くが、落ち口を抜けるところが少しいやらしいようだった。確かにホールドとスタンスは豊富で乾いた右壁に逃げる必要はなかったが、落ち口がハング気味で乗り越すのに一工夫がいった。いずれにしてもあっけなくクリアし、さあこれでお楽しみは終了という気分になる。

しだいに源頭部の様相となり、詰め上げる稜線が見えてくる。左手に見える急峻な左俣に比べればとてもたおやかな雰囲気だ。その後もいくつかの黒い涸滝があらわれるが楽しいクライミングだ。最後まで沢筋を忠実に詰めていく。

稜線直下で多少の藪こぎとなるが、すんなりと登山道に飛びだした。まだ12時をまわったばかり。予想以上の好タイムに我ながらまんざらでもないが、効率重視でけっこうお助けに頼ってしまった嫌いがなくもない。まあ、いいことにしましょう。

お疲れ-、アリガトーと、握手をして沢装備をとき、山スカ・ハイカーに衣替え。Samさんが持って来た缶詰のパイナップルがとても美味しかった。間近にみる万太郎が凛々しくほれぼれ見とれていると、万太郎に行く?という声がする。まさかーとかわして、さあ下山。

登山道はしばらくの間谷側が切れ落ち、高度感たっぷりで気が抜けない。沢より怖いなあと思いながらトラロープが張られた痩せ尾根を下る。1500mを過ぎると樹林帯に入り、道も歩きやすくなるが、ここで思わぬ事態が発生。

先を歩いていたsamさんが悲鳴を上げ、のたうちまわった状態で駆け戻ってきたのだ。どんなに悪い所でも平然としているので、その姿に驚くと、アブに噛まれたという。そそくさと雨具を着込んで慌てふためいている。

アブに噛まれたことがないのでピントこなかったが、私も急いで雨具を着るが、ズボンはザックの奥深くにしまい込んでしまったので上着だけにした。内心ちょっと大袈裟だな、などと思いながら下って行くと、突然ブーンという音が聞こえたと思ったとたん両足のふくらはぎに鋭い痛みを感じ、立っていられなくなった。

その場を逃れようとあわてて駆け下ろうとするがあまりの痛さにバランスを崩して転んで斜面から落ちそうになる。いやー、ビックリした。地面近くの1箇所にかたまって何匹かがいただけのようだが、彼らの聖域を侵してしまったのか、すさまじい猛攻撃を受けた。アブではなく地バチだったのだ。

しばらく痛みを感じながら淡々と登山道を下って車にもどると、samさんは体中に発疹ができていて痛々しい。ハチの攻撃が引き金になって蕁麻疹ができてしまったのだ。

最後はとんだ目にあってしまったが、これも後になれば楽しかった井戸小屋沢の思い出に華を添えるエピソードになるはずと、慰めにもならない慰めの言葉をかけながら帰路についた。(sam、ako)

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吾作新道車止め5:45-堰堤入渓点5:55ー井戸小屋沢出合7:16ー二俣9:55/10:40ー1610m 登山道12:05/12:30ー車止め14:20

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