ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.06.14
水無川本谷
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2012年6月14日

 

貴重な梅雨の晴れ間となったので、久しぶりにchieさんと沢登りに出かけた。一人ならば行き先を決めていたが、岩やさんにはもの足りないのではないかと思い、いくつか候補を挙げて水無川本谷に決めた。

丹沢の人気の沢だが、意外にも二人ともまだ遡行していなかった。ナンバープレートや鎖、ロープなどの人工物が多く、上部は岩がボロボロだと聞いていたからだ。なにしろかつては百名谷。興味なくはなかったので、ちょうどいい機会となった。

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大倉からの林道歩きが長いが、久しぶりなので、おしゃべりに花がさく。戸沢の休憩所につく頃には一仕事やり終えた気分となり、暑さでぐったりする。水無川は源次郎やセドノ沢で行ったことがあるからと、うろ覚えのまま取り付くが、案の定本谷を源次郎と勘違い。小尾根を越えて戸沢に入ってしまう。いくら土壇場計画とはいえ、噴飯ものだ。すぐに気付いたけれど、我ながら情けなさを通り越して笑ってしまう。二人でご愛敬、ご愛敬といいながらそそくさと振り出しへ。

からっとした好天に励まされ、気を取り直しての再スタート。どうしてこの出合いを見逃したのだろうというほど明瞭なのに・・・最近この手のボケが甚だしい。すぐに記憶のある堰堤のアブミ越えとなるが、以前より残置がしっかりしてた。

最初はゴーロと小滝のウォーミングアップ。木漏れ日を浴びながら気持ちがいい。丹沢の沢は早春や晩秋の枯れた季節の遡行記録が多いけど、緑豊かな時期は丹沢もきれいだなあと思う。心配していたヒルもいなくて、二人とも終始無傷だった。それともヒルにも相手にされない年になったのかな。本谷はFナンバーの滝登りがセールスポイントのようで、今回はトレーニングも兼ねた沢登りを楽しむつもりだ。

さっそく10mF1があらわれる。もう少し水量が少なければ水流脇の左壁が登れそうなどといいながら、鎖のある左岸を小さく巻く。すぐにセドノ沢が出合い5mのF2へ。左側にロープがかかっているが薄暗くテカっていてそそられない。むしろ右壁の方が立っているけれどホールド、スタンスがあり、上部には残置スリングもある。こちらから登りましょうとなるが、乗り越すところが少しいやらしく、先行したchieさんにお助け紐を出してもらった。

F3も右壁を登っている記録があるのでchieさんはどうするかと思ったが、ここはおとなしくフィックスロープのある左壁に取り付く。とはいえ、決して楽なルートではない。滝上へトラバースするところは足下が切れ落ちていてロープにカラビナを掛け替えながら慎重に通過。けっこう怖かった。

その後に続く小滝と2段8mのF4は積極的に水中にホールドを求めて楽しく登る。暑いので少しくらい濡れても気持ちがいい。そして9mF5へ。左岸の斜壁につけられた鎖沿いに登るらしいが、鎖はちぎれていた。

ある記録では、滝の右筋を直登してCSの中を登って行くと30㎝くらいの穴が開いていて上に抜けられたという。そのことをchieさんに話した所取り付いてみるという。おお、やるなあと、カメラを構えて様子を見守る。立っているがホールド、スタンスはあるらしく順調に登る。上部は穴に入らず上から垂れているちぎれた鎖を頼りに登り切った。さすがです!

さてと、私はどうしよう。その気になれば取り付くこともできたし、つまれば上からロープを出してもらうこともできたが、見物だけで満足してしまった。それではトレーニングとしてはNGなのだが、すでにたくさん登った気分だった。手前右側の岩壁に取り付いて小さく巻いたが、ここだってけっこう岩登りだった。書策新道が横断するところで休憩し、思ったより楽しいねと言いあう。

すぐに沖ノ源次郎沢出合となり、岩壁を見上げる。ここは岩登りが楽しめるのだと話しても、本物の岩やさんは、すっきりしない岩にあまり関心がないようだった。明るく開けた木ノ又大日沢出合を過ぎるとF6があらわれる。

F6のCSは一見登れそうにないが、右の大岩の上にシュリンゲがかかっている。巻き道も明瞭だが、当然chieさんは岩に取り付く。あら、登っちゃったということは、私も登るのねと思う。どうかなあと一抹の不安を抱えながら取り付く。ハング気味の最後の乗越しは2箇所の残置シュリンゲをつかんで思いっきり、えい、やあと立ち込み、ここは一人で登り切った。ふうっ、登れたぁ。

水無本谷2 水無本谷3

水無本谷4 水無本谷4

水無本谷5 水無本谷6

しばらく開けたゴーロ歩きとなり、F7はわからないまま左岸がすさまじく崩壊した瓦礫の山を越える。ふたたび両岸が狭まって小滝が続き、まだかなあと思うころ前方に3段30mのF8が見えて来た。

確かに滝の周りの岩壁の崩壊がすごい。プレートの脇に見事なヒメレンゲの群生が見える。これまでも沢沿いにたくさん咲いていて意外だった。8月頃にはピンクのビランジが咲くらしい。ガイド本には昔は左壁から登れたとある。chieさんは、岩がもろくなければ右壁のルートも意外と登れるのだとかいっている。はぁー。

巻き道ルートをたどる。左岸のガレルンゼを登ると踏み跡も明瞭になり、トラバース道にはロープが張ってある。事前情報では足場がかなり崩れているとあったが、思ったほどではなく、F3のトラバースの方がよほど悪かった。

F9は10mとあるが、下部が崩れて埋もれており、せいぜい5mほどにしか見えない。一見左壁が登れそうと、chieさんが取り付いて見るが、岩がボロボロはがれて諦める。右手から簡単に巻き、あとはガレ斜面を淡々と登る。

適当なところで左手の小尾根に取り付くと、しっかりとした踏み跡がある。このあたりはミツバツツジも多いようで、花びらがたくさん散っていた。もう少し早い時期だときれいだっただろうな。あたりは日本庭園風で雰囲気はいいのだが、しだいに足取りが重く疲れが出てくる。

最後はあっさりと表尾根に飛びだした。塔ノ岳からほんの少し下がったところだったが、山頂まで行く気力がなく、装備をといて一休み。人工物があっても面白かったというのが共通の感想だ。ゲレンデだと割り切って楽しめばいい。こういう風にトレーニングを積めば、余裕のある沢旅ができるはず。

一休みして歩き出すとあっという間に山頂へ。いつも冬枯れの時期だったので、山頂から見渡す緑に覆われた山並みがとても新鮮だった。久しぶりに沢登りらしい沢登りができた充足感と相まって、清々しい気持ちで山を下った。

水無本谷7 水無本谷8

水無本谷9 水無本谷10

大倉7:45-戸沢出合9:00/9:20-(1時間の道草)-源次郎沢出合入渓点10:20-書策新道横断点11:55/12:10-F8上13:10-登山道14:15/14:35-塔ノ岳14:40/14:45-大倉17:00