ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.05.12
水ノ木沢~樅ノ木沢下降~沖ビリ沢
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2012年5月12-13日

 

神室連峰の縦走は入山後あっという間に撤退を決め、そそくさと帰京した。天候は関東以外みな悪かったので、翌日晴天予報の丹沢へ繰り出すことにして急遽沢始めのプランを考えた。せっかくやりくりして確保した休日だったので、残りの2日間でゆったり沢に泊って沢旅の雰囲気を楽しむことにした。

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あわただしい出発となったが、ひとたび家を出ればいつもと変わらない山行だ。本厚木でピックアップしてもらい、東名経由で山伏トンネルへ。トンネル手前の廃屋となったホテルの敷地前に駐車して、敷地内の小さな鳥井脇の登山道から尾根にのった。そして、この取り付き方がとんでもない勘違いのもととなったのだった。

正規の登山道から登るよりも西側で尾根にのったため標識はなく、途中にあった古い道標が山伏峠を示している方向に進んだ。登るにつれトラロープのざれた急斜面が続くが、この時は間違っているとは思っていないので、あれ~こんな所あったかな、いやに長いな~と思うくらいで、記憶も曖昧なせいか、分岐や鉄塔がないことをおかしく思わなかった。ようやく主尾根に上がったところで石割山と御正体山分岐の標識。突然すべてが氷解した。うぅぅぅ、やっちゃたぁぁぁ。さんざん自分に悪態をつき、観念して戻ることに。

どうしてコンパス見なかったんだろー、から始まり、人間の心理とはおもしろいものだという話題になる。一度思い込むと、冷静に考えればすぐに気づきそうな間違いを無理矢理正当化しようとこじつける。そういえばと、いぜん某沢の会で、全員遡行経験がある沢にもかかわらず、メンバー全員が同じような心理状態に陥ってまったく別の沢を遡行したという記録を読んだことを思いだす。

ヤレヤレな思いをして振り出しへ。1時間半のロスタイムだ。反対方向に進むとすぐに正規の登山道と合流し、立派な標識がいくつかあらわれた。とても歩きやすい道をたどり、分岐や鉄塔を越えるとすぐに大棚ノ頭。

ここからは地図に道のない西丸方向へ進むが、多くの人に歩かれていて明瞭な踏み跡やテープがある。鞍部からトラバースして西丸の北東尾根にのるポイントを見過ごしたが、西丸のピークを経て尾根を下る。この付近はブナ林が原始の姿をとどめていて美しいところだ。

以前は、沖ビリ沢は水ノ木沢や樅ノ木沢を遡行するためのアクセス経路として下降に使われていたが、最近はウォーターウォーキングなどのガイド本に取り上げられたりして遡行者が増えているらしい。今回も、まだ遡行していない沖ビリ沢は下るのではなく遡行するために最後にとっておくコース取りとした。

急ぐ沢旅ではないとはいえ、金山沢出合いに降り立ったときには随分と時間がたてしまった。そもそものっけからボンミスをやらかしたうえ、最後は急斜面の植林帯を下って疲れてしまい、川原でへたりこむ。ガスを出してラーメンを作り、一息ついてから荒れた林道をさらに1時間ほど歩き、水ノ木沢へ。

菰釣橋手前から水の木林道へ進み、大洞橋を渡る。最初はゴーロが続くのでしばらく林道沿いを進み、道が右にカーブするところにテープと明瞭な踏み跡があって沢に導かれる。あら、まあ、もう1時半。けれどルートはどのようにでも調整できるし明日もあるので、何が起ころうと気持ちはラクだ。

ようやく沢の中を歩き始めると、新しいシーズンが始まったことを実感する。しばらくはゴーロとナメ小滝の繰り返し。なんだか7年前にくらべ倒木が多く荒れた印象だが、緑が萌え始め、沢の流れに足を浸すだけでも気持ちがいい。

堰堤を二つやり過ごし2条3m滝を越えると上部に手がかりが乏しい4m滝へ。sugiさんが途中まで登ってみるが、最後がいやらしいと降りてきた。沢始めだし重いザックしょっているしと、無理せずに右岸を巻くが。その後も直登できない4m滝があらわれ、ここも右岸から巻いたが、けっこう悪かった。あとでガイドを見ると左岸から巻いた方がよかったようだ。

梅ノ木沢出合いを過ぎるとナメがふえて雰囲気がよくなり、手前の枝沢から滝を落とす2段12m滝が見えて来た。ようやく心浮き立つ滝の登場だ。右壁を快適に登れて楽しい。ここからが水ノ木沢のハイライトと言えるだろう。

滝上もナメが続き、美しい幅広12m滝へと続く。俄然ワクワク感が高まり、ルンルン気分で登る。こういう、見た目がきれいで楽しく登れる滝が自分の身の丈に合っている。

さらに小滝やナメが続き時間がたつのを忘れてしまうが、4時を過ぎたころからテンバ探しを意識しながら進む。沢幅が狭まり、高度を上げだしたので少し心配になったが、1040m付近の二俣で本流左岸が台地状に広がっている。様子を見に上がってみると、これ以上のテンバは他でもなかなか見つからないほどの広々とした三つ星物件だ。

即決で遡行終了とする。枯れ木も豊富だ。最初の沢泊りが最高のテンバで、幸先がいい。そそくさと手分けをして夕餉の支度にとりかかる。神室まで運んだ2日分の食材を持ち寄り、盛大な宴会となる。sugiさんが作ってきたいろいろな山菜の佃煮が美味だった。

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翌朝は朝から快晴で、鳥たちのさえずりがさわやかな気分を運んでくれる。歩き始めて間もなく水が涸れ、次々と小さな二俣があらわれる。前回は菰釣山に突き上げる枝沢を詰めたが、今回は樅ノ木沢を下降するので油沢ノ頭近くに突き上げる枝沢へ進む。頻繁に地図とコンパスをにらみながら慎重に進路を取る。傾斜は急になるが悪場や藪こぎはない。最後は小尾根にのると明瞭な獣道があり、容易に登山道に抜けることができた。

抜けるような青空と新緑に気をよくしながら、しばし新緑シャワーのハイキング。富士山やミツバツツジの彩りを楽しみながら下降点の樅ノ木沢の頭手前の鞍部へ。適当に下りやすそうな斜面に分け入り、軽い笹藪をかき分けながら急降下。

どんどん下ると沢幅も広がってナメ床となる。時々振返ると頭上の新緑が目にしみるほどまぶしい。足下の小さな釜にはヤマメが群れていた。近づいても逃げないので手づかみできそうなどといいながらしばらくご対面。

ナメやナメ小滝が続き三俣となる。さらに下ると10mを越えるナメ滝があらわれ、左岸のトイ状滝を滑り降りると下は両門ノ滝をなす二俣になっていた。おそらく樅ノ木沢で一番美しいところだろう。

しばらく下ると沢幅が狭まり、両岸が切り立ったゴルジュとなる。5m滝は下れそうにないので右岸のチョックストーンの隙間からずり降りるが、最後の着地が怖くて先に降りたsugi さんに肩を貸してもらう。せっかく突破したのだが、つぎの8mCS滝はお手上げとなる。

ロープを引いて左岸の斜面を這い上がろうと試みたが、最後の踏み込みが思い切れず諦める。ゴルジュ出口の5m滝を今度は直登し、少し戻って左岸の斜面から高巻くことにした。取り付くと明瞭な巻き道があった。ゴルジュをすべて巻き、枝沢に下ってから本流にもどった。

これで核心部の下降は終わったので気が軽くなり、その後に続く長いゴーロも苦にならずに最後の4m幅広ナメ滝へ。水量豊富で迫力があった。木漏れ日の射す美しいトロ場を過ぎると橋が近い。踏み跡をたどって橋に上がり、ふたたび林道を歩いて最後の楽しみにとっておいた沖ビリ沢へ向う。

林道が沢を横切るところで入渓してもよかったが、しばらくはゴーロなので右岸沿いの川原を進む。所々に赤テープがあり、西丸からの下降点がいくつかあるらしかった。金山沢から沖ビリ沢に入っても平凡な渓相が続くが、沢が右に曲がるところから渓相が一変する。時々沢で見かける「みにくいアヒルの子」から「白鳥」への変身というヤツだ。

ようやく期待してきた楚々としたナメ沢となる。丹沢では珍しい評判通りのきれいなナメが続く。7mナメ滝はさすがに巻いたが、それ以外のナメ滝はすべて快適に登ることができて楽しめる。ただハイライトのナメとナメ滝遡行は1時間少しで終わってしまい、あとはふたたび平凡なゴーロの急登となる。

残すところは最後の詰めだが、水ノ木分岐の登山道まで詰めずに西丸へ続く尾根の鞍部に詰めることにした。地図にない枝沢だか窪のような分岐が頻繁に現れるので詰める場所がはっきりしなくなってしまったが、適当なところで小尾根に乗ろうとしたところ見た目より悪く冷や汗をかいてしまう。

どうも取り付きを間違えたようだった。それでも小尾根からは傾斜も緩み、獣道があらわれた。抜けたところは予定よりも少し水ノ木分岐よりで、詰めた枝沢は地図に出ない窪だった。

最後は少し羽目を外したが、いろいろな要素をひととおり体験できたと都合のいいように総括。詰めの読図は難しいと改めて実感させられた沢始めとなった。 (sugi、ako)

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12日 山伏峠9:30-金山沢林道出合-水ノ木沢入渓点13:25-1040m二俣16:30

13日 テンバ6:00-登山道7:00-樅ノ木沢の頭手前下降点7:40-樅ノ木沢橋10:55-沖ビリ沢入渓点11:30-登山道13:40/14:10-山伏峠14:50

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