ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.02.02
白馬尾根~蛭ケ岳~市原新道
カテゴリー:ハイキング

2012年2月2日

 

計画している山はどこも豪雪で近寄りがたい。ひたすら天候が落ち着くのを待つしかないが、幸いなことに丹沢では降雪により、手軽に雪山気分を味わうことができる。

まだ冬山の経験がほとんどなかった2008年の2月、丹沢は10年ぶりの大雪となった。そのときはじめて今回と逆コースで蛭ケ岳へ登り、市原新道と白馬尾根の雰囲気に魅せられた。ブナの芽吹きの時期にまた訪れたいと思いながら果たせずに時が過ぎたが、今回再びまとまった降雪後に同じコースを歩く機会をえた。

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丹沢山行の集合場所として定着した瀬谷駅でkazikaさんにピックアップしてもらい、旧丹沢観光センター方面へ向う。早戸川沿いの林道に入ると道路は雪で覆われどこまで入れるか気がかりとなる。案の定4年前と同じで、三日月橋を越え道路が左に緩やかにカーブするところで進めなくなり、三日月橋手前に戻って駐車。最初から軽アイゼンを履いて歩き始める。

魚止橋から踏み跡のある斜面を登って林道をショートカットし、しばらくは平坦な林道を進む。造林小屋を過ぎてからは雪の積もった怪しげな木橋を何回か渡り、そのたびにヒヤヒヤする。降り立った早戸川は、深い雪に覆われた静寂の別世界。渡渉したりロープが張られた岩壁をへつったりしながらようやく雷平へ。

市原新道から登るつもりで川原を進むが、急にトレースが途切れてしまう。と、ここで相談。積雪状況に鑑み、トレースのない尾根を登れば時間切れで蛭ケ岳にたどり着けない可能性がある。少し戻ってトレースがありそうな白馬尾根から登ることにした。

鹿柵の門をくぐって植林帯の尾根へ進む。よかった。スキーのトレースがある。けれど、登山者は入っていないようだ。あれだけあった踏み跡はどこへ?早戸大滝見物だろうか、などと話しながら、急斜面の尾根をジグザグに登る。

ようやく植林帯が終わると展望が開け、左手には丹沢三峰が近い。カヤトの尾根は真っ白な斜面となり、何度も踏み抜いてしまう。ここでワカンをつけるが、それでもときどきズボッ。先行者も苦労した様子がうかがえる。

少し難儀して急斜面を乗り切ると、両側がブナ林の広い雪原尾根となる。ようやく気持ちのいい雪原漫歩ができると喜んだのもつかの間。尾根の両側には新しい植生保護柵が張り巡らされている。4年前にはなかった柵だ。広々とした雪原もこれでは台無し。柵の向こう側のブナの大木にも近づけない。

あとで知ったのだが、「植生保護柵は、神奈川県が取り組む自然再生事業の一環として、稜線部の植生回復をはかるために設置したもの」。そういえば最近たて続けに登った丹沢の山にはみな尾根道の両側に新しい柵が設置されていた。

登るにつれ雪も締って歩きやすくなる。スキートレースのおかげで、ほぼ予定通りに稜線に抜けることができた。ここから蛭ケ岳はすでに多くの人に歩かれており、しっかりした雪道ができていた。展望もよく、しばし気持ちのいい稜線漫歩を楽しみながら蛭ケ岳山頂へ到着。

平日ということもあり山頂には誰もいなかった。久しぶりの蛭ケ岳。天気もいいけれど、それ以上に気分がいい。正面にデンと構えて見えるはずの富士山は、中腹から雲に覆われていた。小屋に入ってホッと一息。今回は4年前よりもさらに雪が深かったので、ここまで来ることができてホントに嬉しい。

うどんを食べて温まるが、あまりゆっくりしていられない。管理人さんも、もう1時を過ぎているから早く戻らないと・・・と言う。小屋の裏の斜面でコンパスを振り、市原新道の尾根を確認する。

さあ、トレースのないまっさらな雪の斜面を軽やかに下って行こう、と少し気持ちが昂揚する。これが丹沢の雪とは信じられないほどサラサラ乾いた雪を滑るように下っていく。保護柵などの人工物のないブナの森が広がっている。

痩せ尾根を通過し、枝尾根が複数に広がりはじめると進む方向が判然としなくなるが、kazikaさんは何度も歩いているのでルート取りはお任せ気分。大きな一本ブナを目印に、東に張り出した尾根へと進路を取る。雪で覆われると勝手知るルートも違って見えるので少し不安なようだったが、軽く藪を通り抜けると進むべき本来の登山道に合流。あとは植林帯の柵に沿って急斜面を下り、早戸川に降り立った。

せっかくだからと雷滝を見物する。滝の両岸の氷が透明なマリンブルーで美しい。名残の紅葉の時期に見た雷滝も立派だったが、雪で覆われた姿も凛として美しい。それぞれ滝をバックに写真をとりあい、雷平へ戻ると、自分たちの朝の踏み跡に出会う。わずか半日なのに、なんだか懐かしい。それだけ変化に富んだ時間が凝縮されていたからだろう。

明るいうちに車に戻れるメドがついたので、白馬尾根を見渡せる川原で最後の休憩をとり、長いアプローチ道を車に戻った。多くの登山者で賑わう表丹沢とはまったく違う、もう一つの丹沢を感じることができた充実の雪山ハイキングとなった。

蛭が岳1 蛭ヶ岳2

蛭ヶ岳3 蛭ヶ岳4

蛭ヶ岳6 蛭ヶ岳7

蛭ヶ岳5 蛭ヶ岳8

 

三日月橋7:45-雷平9:35-(白馬尾根)-稜線12:20-蛭ケ岳13:00/13:40-雷平15:35-三日月橋17:15