ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.02.12
小野岳
カテゴリー:雪山

2012年2月11-12日

 

強風と視界の悪さから鎌房山であっさりと撤退宣言して麓の羽鳥湖スキー場に戻り、一路小野岳の登山口がある大内宿をめざした。118号線を西に進み、会津鉄道を横切ると小野岳の南麓を巻き込むように続く道へ入る。前回この道を通ったのはもう4年前のこと。神籠ケ岳から大内宿に下山したときだ。はじめて訪れた南会津の山だった。そんな思い出を懐かしみながら大内宿に近づくと、夕方だというのになんと大渋滞している。

今では一大観光地となった大内宿は雪景色も売りにしていて大人気のようだ。ノロノロ運転の間も何十台もの大型観光バスとすれ違い、いったいこの騒ぎはなんだと、驚いてしまう。

駐車場が満車のため車は係員の誘導を待たなければならず、そのための渋滞だった。我々は先へ進むので、係員に話をしたところハザードランプをつけると通してもらえることがわかった。ヤレヤレ、ようやく渋滞から抜け出すことができた。

テンバもなにも行き当たりばったりだったが、まずは登山口を探そうと車を走らせる。二度目のUカーブを過ぎると右手に登山口があり、スキーヤーが下山しているのが見えた。トレースも明瞭だ。鎌房山でさんざんラッセルを堪能したので、トレースがあることをよろこび、これで明日は山頂へ行けると確信する。登山口から少し先の駐車スペースに車を止め、シューを履いて登山口へ。

しっかりとした雪道をたどると林道終点らしき小高い平坦地となる。格好のテンバだ。西側は開けて、うっすらと山並みが見渡せる。さっそく整地に精を出し、テントを張り終えて一安心。中に入って荷物の整理をしているとYさんが車に携帯やカメラが入ったポシェットを置き忘れたといって取りに出て行った。ご苦労なことだが、登山口近くに泊ってよかった。あっという間に戻ってきた。

食べ物を広げてくつろぎながら我が弱小パーティのドタバタぶりを笑い合う。出かける前から行先が二転三転したあげく、すぐに敗退。けれど怪我の功名とでもいうのか、おかげでようやく小野岳に来ることができた。よかったよかった・・・ならば、最初から計画を立てれば良さそうなものだが、そこが少し微妙なのだ。

全般に南会津は交通の便が悪く日帰り山行がむずかしい。小野岳は1400mに満たない裏山で、標準コースタイムは5時間ほど。ところが移動は往復10時間ほどもかかってしまう。せっかく遠出するならテント泊の山に行きたいと思ってしまうのだ。そんなわけでいつも名前はあがっても後回し状態が続いていた。だから、よかったと思えるわけです。

食事を終えてお茶をすすっていると外でドカーンと音がした。とっさにひょっとしてと思い、外を覗くと、花火が上がっている。そりゃ、もう、大喜びの大歓声。しばらくは○○屋、××屋の大花火大会を楽しむことができた。

あとで知ったのだが、2月の連休は恒例の雪祭りが開催されていたらしい。どおりで、ものすごい人出のわけだ。トレースばっちりだし、花火まで見れたしと、気分よくシュラフにもぐって迷走の一日を終えた。

これが字数制限のある原稿だったら、本題に入らずに終わってしまいそう・・・と、前置きが長くなってしまった。

夜中に星が出ていたが、明け方から雪が降り始めた。風はなく、しんしんと降る雪はロマンチックにさえ感じられる。テントをそのままにして予定通り7時に出発。しばらくは植林帯を進み、夏道からわかれて左手の尾根の急斜面を上がる。一汗かいて尾根にあがり、しばらくすると鉄塔があらわれる。視界の悪い下山時はいい目印になりそうだ。

最初は雑木林だが、しだいにブナがあらわれる。背がとても高くて樹肌がきれいだ。会津のブナらしいなあと、多少の身びいきも混じる。尾根のトレースは消えているが、それらしい所を歩くとそれほど沈まない。ラッセルは膝下程度。体力の消耗や進み具合は膝ラインで明暗が分れるような気がする。

しだいに風が出てきて吹雪き出す。雪も深くなり、あたりの樹木も樹氷をまといはじめる。1150mあたりからブナの大木が点在する森となる。予想以上にすてきな森だ。冬は藪も消え見通しがいいので森に広がるブナがよく見渡せる。

1230m のポコからいったん鞍部へ下り、急斜面を登り返す。標識があらわれ、そこには小野嶽山と書かれていた。なんだかいわくがありそうだ。しだいに尾根筋が明瞭になり、最後の登りの前に休憩を取っていると突然単独の男性があらわれビックリする。トレース助かりましたと言ってくれた。

少し話をかわして先行してもらう。山慣れたベテラン風の男性で、あっという間に見えなくなってしまった。山頂まではその人のトレースを追った。森は凍てつくような白い森となり、吹雪で霞んで幻想的でさえある。風で頬が痛いが、美しさに酔いしれながら進む。

傾斜が緩み広い雪原となる。山頂が間近のようだ。先行者が標識に積もった雪を取り払っていた。まだ11時前ではないか。意外と早く着いた。運動場のような広い雪原の山頂だ。昨日は情けないくらい進めなかったので、これで自分たちがとくにスローなわけでないことがわかり、妙な安心感。

ガイド本によれば大戸岳、博士山、明神ガ岳は指呼の間、磐梯山、吾妻、飯豊連峰が遠望できるとあったけれど、残念ながら展望はない。名古屋から岩木に赴任中という単独者は一足先に下山した。

吹雪いているので休憩するわけに行かず、我々も戻ることにした。まさに氷結の森という表現がぴったりの光景の中、下りはトレースをはずして新雪にシューを滑らせる。登りの時はあまり感じなかったが、けっこう急斜面のところが多く、はからずも尻セードを多用する。

最後は先行者のトレースに引き込まれて尾根先端の急斜面を滑り落ちるように下り、植林帯の雪道に降り立った。雪のため一回り小さく見えるテントに戻り、お疲れ様。小野岳は、こんな天気でも十分に楽しめる、ブナ林が美しい山だった。

*

登山口16:30-林道終点テンバ16:40//7:00-山頂10:35/10:45-テンバ12:25/13:00-登山口13:05