ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.10.21
小又川連瀬沢左俣
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2011年10月21日

 

10月初旬に訪れた奥森吉は悪天のため実質1日だけとなったが、貴重な出合いもあって思い出深い山行となった。奥森吉の良さをあらためて感じ、どうしてもまた行きたくなった。思いはじめるといても立ってもいられなくなるものだ。森吉山周辺の1パーティ時差集中山行と銘打ち、紅葉の見頃をはかって再訪した。今回は好天が期待できる初日に、やり残した宿題の連瀬沢を遡行することにした。

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前夜のうちに登山口となる旧森吉スキー場のこめつが山荘へ向った。当初はキャンプ場にテントを張って仮眠するつもりだったが、直前に山荘の一階は避難小屋として常時開放されていることを知った。案の定中に入ることができ、電気をつけてみて驚いた。中は暖炉がある別荘のリビングさながらのしつらえで、天然木のテーブルやソファ、掃除機まである。無料で使わせてもらうのが申し訳ないほどだ。すっかりくつぎ、入山祝いの乾杯!外は満点の星空で天の川まで見える。

翌朝は6時過ぎに出発し、山荘脇の登山口から歩き始める。スキー場を横切って樹林帯を登るとふたたびスキー場となり、登山道は尾根にのる。標高1000mあたりの道標の先で沢支度をし、うすい窪状の藪を下る。この枝沢は、岩手の酔いどれさんが紹介して以来、連瀬沢への下降ルートとして定着しているようだ。

窪を下っているつもりがなぜか登山道に平行して北に下ってしまったが、すぐに軌道修正。紅葉に彩られた小沢を下り1時間ほどで連瀬沢に降り立った。しばらくは大岩ゴーロがつづくが、沢に陽があたり木々も色づいているので気持ちは明るい。

二俣を左に進んでもさらにゴーロがつづき、ちょっと長すぎるなあと思うころようやく変化があらわれる。2段3mの小滝を越え標高900m付近から待望のナメがつづくようになる。最初にあらわれた顕著な7m滝は登れず、右のルンゼから高巻いた。連瀬沢の遡行中はあまりブナが見られなかったが、何回か高巻いたとき上部は美しいブナ林が広がっていた。

滝上からはまさにナメ滝のオンパレード。数メートル規模の滝が連続してどれも楽しく登れる。連瀬沢で一番美しく面白いところだ。なるほど、このあたりはまさに連瀬沢という名にふさわしい渓相だ。傾斜のある10mナメ滝は水流左側の岩壁をロープを引いて空身で登った。すぐに連瀬沢のハイライト、2段20m大滝があらわれる。下段は水流左を登れたが、上段はかなり立っている。左側に残置があって登っている記録もあったが、我々はあっさりと左岸から高巻く。

つづく10m滝も手強そう。左岸が登れそうなのだがシャワークライムとなる。釜をこわごわとへつり、左岸のルンゼから巻くことにした。ところが傾斜が急なうえ足下がグズグズだ。右手の尾根に逃げたため結局大高巻きになって時間をくった。これならば頑張って直登した方がよかったと悔やむ。我々はどうもこのパターンが多いようで、なかなか脱却できない。

さらにナメはつづき、7mナメ滝を楽しく越えるとゴーロの小川風情となる。小さな二俣は2回とも左へ進む。3mの土壁滝を左から巻くと稜線も近づき、最後は笹藪のナメがつづく。うっかりすると見過ごしそうな所で登山道が横切っており、ここで遡行を終えた。見上げると少し先には赤テープもある。ここが登山地図にある水場のようだ。

 

 

 

 

靴を履き替えて森吉山へむかう。しばらくは視界のきかない笹藪と樹林帯の道だが、山人平に出ると突然視界がひらけ、お花畑の木道となる。お花の季節はさぞかしきれいなのだろう。ずんぐりと大きな山容の森吉山へは緩やかな登りがつづき、それほど疲れることもなく山頂へ。360度の展望はすばらしく、山座同定が楽しい。鳥海山が雲の上から頭を出して浮き上がって見える。

反対側には八幡平の山並みが近い。その後ろに岩手山が頭を出し、右へ目を向けると秋田駒と乳頭山のピークが顕著だ。白神の山並みの向こうには岩木山、さらに八甲田連山も一望できる。これまで森吉山自体にはあまり関心がなかったが、山頂にたってみて、しみじみといい山なのだと思った。

下山路もなだらかな斜面がつづき、途中ニ箇所に避難小屋が完備されている。どちらも木のぬくもりが感じられる素敵な小屋だ。スキーシーズンに利用されるのだろうか、立派なストーブがあった。冬でも阿仁からゴンドラが運航されているので樹氷見物やスキーで楽しめそうな所だ。

奥森吉は冬は完全に閉ざされてしまうが、雪が締る3月以降なら森吉山から割沢森まで縦走できないだろうか。雪の季節にあの素敵なブナの森に泊まりたいと妄想がふくらむ。

ようやく懸案の連瀬沢を遡行できた。渓相がとくに際だって素晴らしいわけではないし、ゴーロも長いけれど、途中のナメやナメ滝の連縛帯は美しく、それなりの滝登りも楽しめた。森吉山へようやく登ることができたのも連瀬沢遡行の収穫だった。

できれば奥森吉の親子ふれあいキャンプ場へよってTさんに会い、話の続きを聞きたかった。江田島の海軍兵学校へ志願し、敗戦を原爆投下の広島で迎え、戦後は東大に進むも中退して国際平和大会に参加するために「密出国」。8年間を海外で過ごし、40代で余命宣告を受け人生をリセット。その後子ども達のための様々な活動を通して自然と共生、ブナの山旅をつづけるにいたるまでの期間についてもっと聞きたかった。時間が取れずに残念だったが、またきっと会えると信じて翌日の予定地である奥阿仁へ向った。

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こめつが山荘6:10-1000m下降点6:55/7:10-連瀬沢8:00-二俣8:50-登山道13:05/13:20-森吉山14:20/14:35-こめつが山荘16:30