ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.10.26
烏川右俣
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2011年10月26日

 

沢シーズンもそろそろ終盤をむかえ、遠出の沢は紅葉も終わろうとしている。いつものことながら、土壇場で予定外の日程調整がついたため、毎年訪れている安達太良の沢へ行くことにした。安達太良山周辺にはナメを主体とする遡行価値のある沢が10本ほどあるといわれており、すでにその半数を遡行している。

当然一番人気の沢から遡行しているので、しだいに地味な沢となる。烏川もベストシーズンに行くほどではないかもしれない。今回も、晩秋のこんな時期だからちょうどいいだろうという軽い気持ちでのぞんだのだが・・・

 

奥岳駐車場から登山口方向へ進むとあだたら渓谷自然遊歩道の案内板あり。遊歩道を下り、烏川にかかる最初の橋のたもとから入渓。烏川の下流部はナメとナメ滝が連続する美しい所なのだが、少し上の烏川橋までは沢沿いに遊歩道がしかれている。遊歩道があると沢の価値が損なわれると考える人もいるようだが、目立つ道ではないし、登れない滝のところでは遊歩道に逃げることができるので、自分は都合がいいくらいにしか思わない。

ナメの間に小滝がつづき、12m魚止滝でナメは途切れる。当然登れる滝ではないので、遊歩道から巻き上がる。滝上もナメ小滝が続き、楽しく進んで行く。青空も出始め、日が照ると終わりかけの紅葉がとたんに輝いて見える。烏川橋をくぐり沢幅が広い斜滝を過ぎると湯桶が横切り、取水堰があらわれる。湯桶はくろがね小屋上の源泉から岳温泉まで引かれているという。

多少沢幅は狭まるが、ナメはさらにつづき、3mと4mの斜滝を越える。ナメが途切れることようやく沢が日向となって明るくなるが、早くも藪沢の気配がただよう。二俣は右へ進むのだが、まずは左俣の少し先にある階段状の40m大滝を見に行くことにする。

ほんの数分歩くと沢は左に曲がり、沢の様子は一変する。突然両岸が開け、黒々とした大滝が天空につづく階段のように見える。ここまで急変する沢も珍しい。最初は見物のつもりだったが、傾斜が緩く簡単に登れそうなので、上まで登ってみることにする。もう少し水量が多いともっと見応えがあるはずだ。滝上から先はナメとなっていたが、はやくもボサがかぶっている。記録ではずっとこんな調子らしい。滑りやすいので慎重に下って二俣に戻り、右へ進む。

右俣に入ると平凡な渓相となり、枝が張りだして歩きづらい。なんと、もう見所は終わりなのかと落胆の気持ちがわき上がる。これまでどの沢にいってもよかったと思えたけれど、もしかして初めてはずれかも・・・などと思いながら、淡々と藪っぽいゴーロを進む。

けれど30分ほど進むと前方に岩壁がそびえ立ち、大滝が見えて来た。うるさい枝の張り出しもなくなり、大岩をぐいぐい登るようになる。見上げればいつの間にか空は真っ青だ。急に気持ちが高ぶり、足取りが軽くなる。

沢も今までの屈折を一気に解き放つかのように豪快な滝を落としている。両岸は大岩を重ねたような岩壁で、とても登れる壁ではない。しばし滝を眺め、高巻きルートを探す。右岸の少し離れた樹林の斜面から行けそうだったが、左岸の岩壁にも一応目をこらしてみる。一カ所、周りの垂直壁よりも傾斜が緩い浅いルンゼ状の岩壁が目にとまり、登れるかどうか近づいてみた。

すぐに無理だと思ったが、少し上に残置シュリンゲが2本垂れていた。時間もあるのでトライしてみる。シュリンゲに手が届くところまでなんとか乗り上げるが、その先のっぺりした一枚岩の大岩を乗り越すことができない。しばらく四苦八苦して疲れてきたので諦め、懸垂で戻った。もともと巻くつもりだったのだが、なんだか悔しい。テープのアブミを持っていれば乗り越えられたなど、多少の未練をもって少し下り、樹林の斜面に取り付いて高巻く。

高巻きは見た目ほど悪くなく、樹林の藪も薄くてあっさりと尾根に乗った。上はハイマツ帯で沢沿いに岩壁がつづいている。地図を見たsugiさんは、この岩壁はずっとつづいているからもっと巻き上がらないと沢に降りられないという。けれどハイマツの藪は手強い。

そんなことをしていたら日が暮れると思い、岩稜帯から沢沿いに偵察に行って見ると岩壁は上部だけで、下部は灌木帯になっていることがわかった。沢床も見え難なく下れそうだ。頭で判断することも必要だが、現場の山勘も養わなければいけない。前回の立又沢の教訓なり。

降りた所は滝上から10m弱の地点で、うまく巻くことができたとニンマリする。少し冒険して時間を食ったけれど、大滝を越えればもう悪い所はないはず。

両岸は開け、沢は源流の趣で穏やかに流れている。なんだか別世界にやって来たようだ。岩壁がそそり立つが威圧感はなく、基底部の灌木は紅葉の名残で淡い色合いが広がっている。その中で赤い実の灌木がアクセントとなり、黄色の葉と松の緑のコンビネーションが晩秋の紅葉のしぶさをかもし出している。これまでの道を振返ると、なんと心安らぐ光景だろうとしみじみする。2週間ほど早ければ、もっとあざやかな紅葉が楽しめたのだろうが、紆余曲折の人生を経てきた身には、この渋さもすてがたい。

上流に進むにつれふたたび空は雲で覆われてとても寒い。途中で薄いダウンを着込むが、高度計の気温はなんと1.7度!沢水が温かく感じるほどだった。

いつの間にか両岸の岩壁もなくなり、山肌は丸みを帯びて稜線が低くなっていく。低灌木の小さな葉がピンク色に染まり、まるで桃色の花が咲いているように見える。沢は小川となり両岸は台地状の草地となる。前方が開けるとともに我々がやって来るのを待っていたかのようにガスが晴れ、安達太良山から牛の背の稜線がくっきりと見渡せる。カールのような底部の草地はあざやかな黄緑色の苔に覆われ、どんよりとした空のもとでもひときわ輝いて見える。

小さな地塘を越えると左手の山肌に赤いペンキマークがあらわれ、沢にはロープが張られていた。登山道についたようだ。沢はさらに上流につづいていたが、ここで遡行を終了。登山道に上がって靴を履き替えるが、急に風が強くなる。休憩もそこそこに下山路へ向う。

登山道が交差する峰ノ辻では突風に煽られ怖い思いをする。くろがね小屋への道を見下ろしながら、いつか泊って温泉につかってみたいと思う。至勢平の分岐に出るとジープらしき轍がある林道のような道となり、多くの登山者に出会う。

ようやく風も収まり青空が戻って来たので遅い昼食休憩をとる。通りすがりの男性がヘルメットを見たからか、どこの沢に行って来たのかと話しかけてきた。烏川だというと、自分も夏に左俣へいったが、藪がひどかったと話してくれた。こちらからは、右俣は大滝を巻けば難しい所はなく、源流部はとてもきれいで藪もなく登山道に上がれたことを伝えた。

右俣はフィナーレの源流遡行が感動的だったため、途中の藪沢歩きは吹き飛んでしまった。紅葉の最盛期にもう一度来てみたいと思う。岳温泉街のレトロな温泉宿に立ち寄り(入浴料はなんと300円)、十分に温まって帰路についた。

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奥岳駐車場6:30-入渓6:40-二俣(左俣の大滝往復)8:55/9:30-右俣の大滝上11:35-登山道12:40/12:55-奥岳駐車場14:33

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