ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.10.02
桃洞沢本流~中ノ又沢~甚兵衛沢~裏安ノ滝歩道~佐渡杉~高場森~黒石林道
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2011年10月2-3日

メンバー:ako、sugi

 

奥森吉のブナの森に魅せられ、ブナの沢旅をはじめて5年が経過した。この間、手探り状態ながら沢旅をかさね、自由に山や渓を歩き回りたいという想いを実現させてきた。そして今回、5年という節目を期に奥森吉を再訪した。

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あわただしい1週間だった。出発当日も2時まで都内で仕事をしてからその足で羽田へ向った。頻繁に飛行機山行しているようでヒンシュクものなのだが、いつもマイル交換の無料航空券を使い、同行者も3人までは片道1万円前後の格安航空券を利用できるという便利なプログラムを活用している。できればもう少し先の紅葉の時期に取りたかったのだが、決めるのが遅かったため限定数の席がとれず、奇しくもちょうど5年前と同じ日程となった。

今回も天候が気がかりだった。出発直前で山行日の天候が悪化し機内で作戦会議。当初は森吉山麓のコメツガ山荘のキャンプ場で幕営して連瀬沢を遡行し、翌日桃洞沢から赤水沢を周遊するつもりだったが、どうも両日とも雨模様。そこで雨の場合にと用意してきたサブプランを検討することにした。

5年前にはじめて訪れたときに知った桃洞沢の奥にあるブナと秋田杉の原生林。地図にはない道があるらしいが、どの情報でも必ず案内人をつけるように書いてあり、かなり複雑らしいことは地形図でも容易に想像できた。けれど、いまは5年前よりも地図がよめるし、はるかに自由に山を歩くことができる。人気の桃洞~赤水周遊コースもいいけれど、サブプランの方がブナの沢旅らしいと思えてきたのだった。

大館能代駅からは10月末までの特別キャンペーンで1日1000円のレンタカーが使えた。メインコースを変更したので、泊り場は5年前と同じ森吉鳥獣センター近くの親子ふれあいキャンプ場。土曜日だというのに広くて立派なキャンプ場は閑散としてほかに車が見当たらない。

さっそくログハウス風の休憩所に入ろうとしたところ中に人がいた。デッキチェアに腰掛けた後ろ姿を見て足がすくんでしまう。白熱灯のスポットライトを浴びて浮かび上がったその姿は登山者ではなく、白髪の長い髪の老人だったのだ。あとずさりをしてsugiさんに知らせ、思い切って二人で戸を開け「こんにちは~」と挨拶。

するとその人は振返り、「ああ、こんにちは」と人なつこい笑顔をみせた。その笑顔で気持ちが和らぎ、言葉をかわすと、ブナの森に魅せられて奥森吉にたどり着いたのだと語ってくれた。あっという間に気持ちが通じたような気がした。さっそく夕食をともにすることになり、1ヶ月滞在するという自称「おじじ」のTさんこだわりの酵素玄米をいただきながら、ブナの山旅、沢旅について怒濤のおしゃべりがつづいたのだった。

なにしろ、先週は中山峠に行って来たと打てばすぐに響き、うれしくなる。というより、話を聞くにつけ、私たちはまだまだひよっこの域を出ていないことを痛感。ブナをはじめとした森への想い、これまでの人生、今の生活などを断片的にうかがうだけで、ただただ圧倒され続けたのだった。

やはり夜中に雨が降ったが、朝にはやんた。朝食もTさんと一緒にとり、秋田のコーヒー豆屋からとりよせたというこだわりのブレンド豆をひいていただく。のんびりコーヒーをいただきながら朝から話し込んでしまう。これから沢歩きをすることを忘れてしまいそうだ。

悪天予報のため今夜も快適なこのロッジに泊ることにしたので、Tさんに行って来ますと挨拶をして森吉山鳥獣センターの駐車場へ向う。ここで沢支度をしてなつかしいノロ川沿いの遊歩道へ進むとさっそくブナの森となる。なつかしさが愛おしさとなって胸にひろがる。

赤水沢分岐をすぎ、ナメが広がったところで桃洞沢に降りた。Sugiさんはとくに感慨深げだ。なにしろ5年前にはじめて無雪期に登山道以外のところを歩き、しかもそれが沢だったのだから。そんな話をしながら、うっすらと色づきはじめた樹林のナメをヒタヒタと歩いていくとさっそく桃洞滝が見えて来た。

左岸のステップをたどって簡単に滝上へ抜けられる。ここからは平ナメに加えて小滝もあらわれる。とにかく難しそうなへつりや滝にはすべてステップが刻まれていたり、ロープがかかっているので楽チンだ。

はやくも二俣となったところで赤水沢方面につづく左の沢から単独の男性があらわれた。驚いて話をきくと、地元のキノコ狩りの人で、高場森の道から沢に降り、お目当てのキノコ狩りの場所に行って戻って来たところだった。収穫はまだ少ないといいながら、ザックにはマイタケの大きな塊が入っていた。

本流の左の沢に進むと少し小ぶりになるものの渓相は下流部と同じできれいなナメがつづき、それほど高くない稜線は秋田杉の大木に覆われていた。ほとんどの遡行者が赤水沢に進むので本流の記録は見ないのだが、遡行価値は右の沢よりもはるかに上だ。

沢は枝沢を多く分けながら蛇行して源頭部の様相となる。地図で目星をつけておいた打当川中ノ又沢の源流部につながる枝沢につくと、赤テープがあった。そうか、ここはキノコ道になっているのだな。路地裏のようなナメ小沢を登っていくと案の定登山道に飛びだした。これが高場森に続く道のようだ。

道の反対側の軽い藪に入ると窪となり、多少倒木がうるさかったけれどすぐに中ノ又沢へ降り立つことができた。思惑通りにノロ川から打当川を繋ぐことができてうれしかった。5年間の成果だね。この沢を少し下ると観光名所にもなっている安ノ滝の滝頭だ。ナメと甌穴の組み合わせが美しい渓をつくりだしている。興味がてら少し下って様子をみてから、上流へ向った。

すぐに二俣となり、左にトウド沢を分けて右の甚兵衛沢へ進む。ちょっとしたゴルジュを右から巻いて進むとしだいに沢が広がり、まるで下流に進んでいるような錯覚を覚える。森の奥深くに、このように開放的で優雅な源流があるなんて、この目で見るまでは想像がつかなかった。しみじみとした気持ちにさせられる光景だ。

つぎの二俣は左へ進むのだが、まずは右沢を少し入ったところの金兵衛滝を見物に。10mほどの多段滝で、華やかさはないけれど美しい滝だった。近くで写真をとって二俣にもどり、甚兵衛沢へ進む。

地元以外では無名の沢だけれど、甌穴を持った階段状のナメがつづき、とてもきれいだ。しばらく進むとナメも途切れ小川風となり、登山道が横断する。これも予想通りだ。なにしろ明確な地図がないので、ラフな案内図で目星をつけるしかなかった。

当初はここから登山道をたどってトウド沢を横断するところで沢を下り、二俣からふたたび登山道へ戻って高場森経由で駐車場まで歩く予定だった。けれどまだ時間の余裕がある。もっと森の奥へ行きたくなった。道標の一方は佐渡杉を示している。衝動的な思いつきだがsugiさんの了解をもらい、佐渡杉方面へ進む。さあ、さらなる未知の世界へ行って見よう。

部分的に藪に覆われるところがあったが、とてもわかりやすいしっかりとした道が続いており、所々には赤テープがあって迷うことはなかった。ここは案内人の同行が必須と書かれているところ。きっとガイド山行のテープなのだろう。あたり一面ブナの森が広がっている。

具体的に佐渡杉がどこにあるのかわからないまま,どんどん歩いていくがいけどもいけどもブナばかり。sugi さんは長い帰り道のことを心配しはじめたが、私はせっかくここまで来たのだからもう少し先に進みたかった。13時をめどにどんどん進むと、ようやく杉の大木があらわれ、大木は巨木の森となった。ついに着いたようだ!

不思議な展開だ。なぜこの場所だけに巨木の原生林があるのだろうか。登山道の周りだけでもたくさんの巨木群が見られる。森の奥にも点在していたが、これで十分だ。夢中になって随分歩いたものだ。これで5年前から懸案だった歩道のルートが大部分解明できた。

このころから雨が断続的に降り始めるが、森の中なのでまだ気になるほどではなかった。多少の不安を抱えていた往路とは違い、帰り道は早い。あっというまに分岐にもどった。途中あまり休憩していなかったことに気付き、ここでガスをだしてゆったりとコーヒーを入れることにした。朝から歩いて来たコースを振返ると、一つ一つはそれほど長くないのだけれど、すばらしく変化に富んでいたことがわかる。

ふたたび雨が降り出したので急いで腰を上げると地元のキノコ狩りの人たちがやって来た。みんなずしりと重そうな収穫物を背負っている。ノロ川側から来てこれから戻るというと一様に驚き,懐中電灯は持っているのかなどと心配される。確かに冷静に考えてみると、最後は夕闇との競争になりそうだ。

たんたんと登山道をもどり、甚兵衛沢横断点からはまだ歩いていない道となる。この道は阿仁側の道標には裏安の滝歩道と書かれていたが、森吉山方向へいくと奥森吉縦走路となっていた。所々に道標があり、他にもいくつか道があるようだ。

午前中に詰め上げた所の登山道をいつの間にか通り過ぎ、高場森が近づくとふたたび杉ノ巨木が立ち並ぶ。佐渡杉と並ぶ秋田杉の原生林、桃洞杉だ。一本づつがご神木となりそうな荘厳な雰囲気をかもし出している。両者ともに山地帯上部の生態系として学術的にも貴重な天然杉であり、国の天然記念物に指定されているとのこと。

ブナの森を彷徨いながらこのように貴重な天然杉ノ巨木にも巡り会えた、とても贅沢な山歩きとなった。黒石林道交差点に出たときはさすがに疲れてヤレヤレだったが、道標を見ると鳥獣センターまではさらに5.1㎞とある。

一休みして頑張ろうとザックを下ろしかけたところ、見回りにやって来た公園の管理人さんが車で送ってくれるという。一も二もなくよろこんで申し出に飛びつき、おかげで余裕の時間に駐車場に戻ることができた。

キャンプ場にもどってふたたびTさんと食事をともにする。昼間に秋田からやってきた知り合いご夫婦がもってきた地元の食材がずらりと並んだ豪華な夕食だった。北海道の電気もガスもない山中で冬を過ごし、春秋は1ヶ月ずつブナの山旅に出かけ、夏やそれ以外の季節は「森の子どもの村」を運営したり、森を語る集いで全国をまわる・・・「森はマンダラ」という森の思想を編み出した、行動する哲学者・・・Tさんの話をし始めるときりがないのだが、これからの自分の山と生き方をいろいろ考えるきっかけをもらったような気がする。

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夜中も雨は降り続き、とても寒い朝だった。雨はやんだが、テントから出て唖然とする。ヒバクラ岳の山並みが雪で真っ白になっていたのだ。10年以上奥森吉に通っているTさんもこんなに早い初冠雪は初めてだという。さあ、どうしようと思案するが、とりあえず赤水沢に行ってみることにした。

温度計は5度。一挙に冬がやってきた。持って来た衣類をすべて着込んで出発する。空は晴れたり雨が降ったりの繰り返し。傘をもって入渓するなんて初めてだが、傘をさして歩いても違和感がないほどの平ナメがつづく。少し増水しているようで、ヒタヒタというよりはジャブジャブとなる。あわよくば兎滝まで行ければと思ったが、やはり雨が強くなり、増水の心配もあったので引き返すことにした。

時間はたっぷりあるので、まずは5年前にも立ち寄った杣温泉で温まる。観光情報はなにも持ち合わせていなかったが、阿仁はマタギの里であり、銅生産日本一の鉱山があったところだけあり、歴史を偲ぶ観光スポットにいくつか立ち寄り、最後は道の駅「あに」で地元の食材をたくさん買い込んで気晴らしとした。

ブナの沢旅でこれほど雨に降られたことは初めてだった。いつも悪天が予想されると直前でも日にちや山を変更していたからだ。今回はチケットの制限もあって変更しなかった。

雨で行動は実質1日だけとなってしまったが、悪天のおかげでずっと気になっていたルートを歩くことができた。Tさんというブナの山旅の大先輩とも出会うことができた。奥森吉はブナの沢旅の原点。思いがけない贈り物を用意して待っていてくれたような気がした。(sugi、ako)

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2日 野生鳥獣センター7:15-入渓点8:15-二俣9:25-登山道10:23-中ノ又沢10:45-金兵衛滝11:25-登山道12:03-佐渡杉分岐12:11-佐渡杉13:02-高場森14:40-黒石林道15:56/16:10ー-野生鳥獣センター16:25

3日 記録せず