ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.07.03
一ノ瀬川中瀬川重石谷~笠取山~水干沢~黒エンジュ沢
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2011年7月3日

 

当初は、大人の休日倶楽部4日間乗り放題切符を使って東北方面に行く予定だったが、直前の大雨やぐずついた梅雨空の為、予定を変更して近くの沢に計画を練り直すことにした。とはいえ、直前の予報ではどこも小雨模様。それならばと、天気が悪い時の沢リストから多摩川源流の沢巡りを計画した。

なにしろ源流の沢なので一本だけでは短く物足りない。地図を見ながら、できるだけいいとこ取りができそうなコースを考え、あとは現地で微調整することにした。出発点の一ノ瀬高原までは遠い道のりなので、前夜発で丹波山道の駅で仮眠する。

翌朝は4時過ぎに起きて軽く食事をとり、まずは入渓点の中島川橋をめざす。おいらん淵から一ノ瀬川沿いの林道に入り、竜喰谷の先で橋を渡る。道の駅で見かけたパーティが沢支度をしているのを見て4年前の遡行を思い出し、この美しい沢をまた歩いてみたいと思う。

一ノ瀬高原に近づくと急に観光地風の明るい雰囲気となる。中島川橋手前の空き地に車を止めて支度をしていると車がやって来て隣に駐車。これでこの空き地は満車となる。単独男性も沢に入るようだ。こんな小さな沢なのにと思うが、昨日は奥多摩の沢を遡行して疲れたので今日は軽く沢ハイキングなのだという。やはりみな考えることは同じようだ。

しばらくは沢沿いの道を進んで沢を渡り、適当なところで入渓する。ほんとうに小さな沢で最初から源頭部の渓相だ。まあ期待も少ないのでこんなものだろうと思う。すぐに二俣となり、右の中瀬川へすすむ。笹藪を通り抜けるとナメとなり、3mのチョックストーン滝があらわれる。左から越えるとその上は多少沢幅が広がったナメ沢となり、なるほど、悪くないじゃんと思う。

頭上の丸太橋をくぐってからもナメは断続し、所々藪っぽかったり苔むした大岩ゴーロとなりながら、少しずつ傾斜をましていく。と思う間もなく、主稜線の南側を巻いている登山道が横切る。ここで休憩がてら、あたりの様子を探索。手書きの標識があり、重石谷と書かれてある。確かに登山道から上流側は大きな石が積み重なったナメ滝風になっていて、まったく別の沢のようだ。地図で見ても稜線までは等高線が詰まっていて、ここからは沢登りとなる。

重石谷は稜線に抜けるまで、急傾斜の大岩とナメが交互につづいていた。スラブのナメは傾斜が急過ぎてとてもフリクション頼みで直登というわけに行かず、左側の笹を頼りに登る。稜線が見えて来るあたりからは岩登りとなり、最後は垂直の岩壁に阻まれる。

左手から笹の急斜面巻き上がると緩やかな笹原となり、とても気持ちよく稜線にでた。規模は小さいけれど、昨年の7月に詰め上げた皇海山の国境平のようだ。これで最初のマイルストーンをクリア。中瀬川は下部のナメと上部の重石谷の組み合わせがユニークで、予想以上に面白かった。

ここから笠取山へ向う。さすがメジャーな主稜線の登山道。樹林帯も美しくとても快適な道だ。厳冬期でも歩けそうだなどと話しながら進む。水干との分岐で笠取山方向に登っていくとシャクナゲ道となる。開花期は終わっていたが、シーズン中はさぞかし見事なのだろう。山頂は狭く展望は南側だけだが、笠取小屋に続く尾根がなだらかで気持ちよさそうだ。本来の目的地は多摩川源流の碑があるという水干なのだが、笠取山にはまた来ることはなさそうなので、立ち寄ることにしたのだ。

記念写真をとって来た道を戻り、傾斜が緩んだところで適当に笹の斜面を下って水干に続く登山道へショートカット。そのまま進めば水干に行けたのに、細かな所までは調べてこなかったので、再び谷を回り込むところで踏み跡を頼りに谷へ下ってしまう。どこかなあと頭上を見上げると、谷を回り込んだ反対側に碑が立っているではないか。少し下りすぎてしまい、また登り返す羽目になったのはご愛敬。

「水干多摩川の源流-東京湾まで138km」という碑が立ち、その奥には水涸れした源流の湧水口がある。ふう~ん、なるほどと感激するほどでもなく、138㎞って短いね、上にも沢筋が続いているじゃんなど、冷めたコメントが飛び交う。とはいえ、慣れ親しんでいる多摩川が始まる場所へやって来ることができました。

つぎは水干沢を下る。しばらくは何もない沢で、藪がうっとうしいところを下っていくと頭上に朽ち果てた丸太橋がかかり、正面で新しい橋が付け替えられている登山道に突き当たる。この道を東へ進んで行くと中瀬川重石谷出合に戻る道だ。新しい木橋をくぐって進むとようやく沢らしい渓相となり、右岸から苔むした岩の枝沢が出合う。予報に反して天気は好天し、蒸し暑い。苔の岩から流れ落ちる水で顔を洗い、思いっきり口に含んで喉を潤す。おいしいっ、これぞ源流の水だ。

さらに下ると目の前にはあざやかなクリンソウが咲いている。期待していなかったので、とてもうれしくなる。群生ではないが、沢沿いのあちこちに可憐な花を咲かせている。沢も下るにつれきれいなナメ滝が出てきたりナメが続いたりと、好感触。クリンソウを愛でながら楽しく下って黒エンジュ沢出合へ。

出合い横の一段上がった台地は水干沢と黒エンジュ沢の合流を見渡すとても気持ちのいいテンバ適地。といっても、短い沢なのでここにテントを張って泊る人はいないだろうなあ。モミジが多く広葉樹林がきれいなので、秋の沢納め焚き火山行などにぴったりかもしれない。

中瀬川を遡行し、笠取山頂を踏んで水干沢を下ってきたというのに、まだ正午前だ。この気持ちのいい広場でゆっくりと食事をしてくつろぐ。思ったより面白かったねと、早くも終わった気分になってしまう。

小一時間ほど休み、黒エンジュ沢へ進む。このまま沢を下ることも考えたのだが、終了点が駐車した場所と離れてしまうので、再び沢を登って登山道が横切るところで遡行を終了し、登山道を下って中島川橋へもどることにした。

ガイド本では中瀬川よりも黒エンジュ沢の方が評価が高く、遡行図でもナメ、ナメ小滝が多いようだったので期待して入ったのだが、倒木が多くかなり荒れている印象を受けた。上部はナメラ沢のミニ版のようで渓相は悪くないと思うのだが、倒木で台無しになっていた。2年前の台風でナメラ沢や釜の沢東沢の上部もかなり荒れてしまったと聞いていたが、黒エンジュ沢上流も同様だった。むしろ出合から下流の方が元の姿通りでナメを楽しめたらしいことを直後に知り、少し悔しい思いをする。

木橋がかかっているところで登山道にあがり靴を履き替える。この道は登山道というより古くからある生活のための道のようで、道幅が広くて傾斜も緩くとても歩きやすい。分岐の馬止めを経て、あっという間に駐車地点に戻ることができた。

まぶしい日射しの好天となり、こんなことならもっと「ちゃんとした沢」へ行けたのに~とか、いっそ雨が降ってくれた方が諦めがついたのに~とか、バチあたりの言いたい放題ながら、いつもとは違った山域での沢ハイキングは、コースを多少工夫したおかげで変化に冨み、予想以上に面白かった。どのような山であれ、初めて訪れる時には新鮮な出合いのワクワク感が得られるものなのだ。(sugi、ako)

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中島川橋6:07-重石谷出合7:43-主稜線登山道9:14-笠取山10:10-水干10:45-水干沢下降-二俣11:48/12:30-黒エンジュ沢-登山道横断点13:00/13:23-中島川橋14:20

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