ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.06.26
日原川巳ノ戸谷
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2011年6月26日

 

かなりチャレンジング、けれど興味津々だった巳ノ戸谷を早くも実現させた。隣の鷹巣谷が予想していたよりも簡単だったので、気持ちが大きくなっていたのかもしれない。

日曜日も黙々と仕事をしているkukenさんから久しぶりに休みが取れると連絡がはいった。軍刀利沢に行って来たばかりだったが、短い行程でそれほど疲れてもおらず、天気もなんとか大丈夫そうだった。軍刀利沢に一緒にいったchieさんに、つぎは巳ノ戸谷に行かないかと提案していたところだったので、すぐに行先が決まり、彼女にも声をかけて急遽計画がまとまった。

翌日の早朝奥多摩駅で待ち合わせ、kukenさんの車で日原林道をへて八丁橋へ。すでに数台の車が駐車していた。ここで沢支度をして林道を歩くとすぐに車止めのゲートとなる。6月30日までの一時的な通行止らしい。巳ノ戸谷への下降点にはガードレールに赤ペンキの印があるので間違うことはないが、ちょっとやり過ぎではないか。

踏み跡をたどって川原におりるとすぐ目の前が巳ノ戸谷出合いだった。水量が多いと渡渉に苦労するらしい。膝上程度の水量だったが、念のためkukenさん先頭に三人でスクラム渡渉。

出合いは凡庸だが、すぐに水量豊富で迫力満点の15m大滝が見えてきた。滝壺に近づいて間近からしばらく眺めていると、kukenさんは早くも右岸の側壁に取り付きはじめている。女性陣があわてて声をかけ、そこからは巻けないのでもどるように促す。左岸側を小さく巻く方法もあるようだが、いきなりの迫力に圧倒され、おとなしくガイド通りに巻くことにする。少し戻り、窪のような斜面から高巻いて滝上へ。

しばらくはワサビ田あとのゴーロ川原となり、右岸に大畑窪が出合うところで二人の釣師が休んでいた。我々もここで一休みして先へ進む。すぐに前方の沢幅が狭まり、ゴルジュの奥に滝がみえてきた。いよいよ忌山の悪場の入り口だ。

右側の壁をへつって最初の3m滝をこえ、つづく4m滝はkukenさんがロープをだして右壁をこえる。さらに4m滝を左側から登ると核心といわれている8m滝が見えてきた。4m滝落口を右に回り込んで8m滝の取り付きへ。さあ、どうやって登ろうかと、まずはルートを探る。kukenさんが前回一人で来たときにはシュリンゲで確保しながら途中まで登ったものの、1時間ほども四苦八苦したあげく諦めて右岸手前の窪状の滝から巻いたという。ここの直登ルートは水流左側の岩壁で、中段あたりに残置シュリンゲがぶら下がって見えた。自分では端から登れると思っていないので、ここは二人に任せて少々野次馬気分なり。

kukenさんとchieさんが譲り合い、結局ここはchieさんにリードしてもらうことになった。じわじわと登って行き、最後は岩陰で見えなくなったところで滝上に抜けたようだった。すごいなあ、さすがだなあと、ひたすら感心する。でも、当然つぎに自分も登らなければならない。

タイブロックで確保ながら緊張する。上部の残置があるところで一瞬行き詰まる。スタンスがなくて上がれないのだ。どうしようと思った矢先、足下にアブミに使うらしい残置シュリンゲがあることに気付いて這い上がることができた。あとで聞いたところ、chieさんはアブミを使わずに登ったらしい・・・全員が登り終えたところで、中年パーティーの快挙だねとみんなで喜びを分かち合う。

さらに小滝がつづくが、いずれも問題なく一息つきながら進む。トイ状のナメを越えると忌山の悪場最後の6m滝があらわれる。以前は左側の倒木を頼りに簡単に登れたらしいが、倒木が右側にずれて難しくなっている。ここはふたたびkukenさんがロープをひいて左手前の草付き斜面から取り付き、落ち口へトラバースして滝上へ。難しくはなかったが、足下が不安定な所があった。

巳ノ戸谷1 巳ノ戸谷2

巳ノ戸谷3 巳ノ戸谷4

これで悪場は終わったと、気持ちが楽になる。右岸に鞘口窪をわけると、所々倒木が目立つようになる。その後も数メートル規模の滝がつぎつぎとあらわれるが、いずれも楽しく越えられる。8m直滝は右側に手足があるが、完全にシャワーとなりそうだし、みんなもう十分という気持ちがあったので、あっさりと巻き上がる。

幅広の小滝は水にどっぷり浸かりながら越えていく。難しい所がないのでシャワーがとても爽快だ。左岸にガレの押し出しを確認してしばらく進むと左手に2段15m滝を落とす孫七窪がであう。このころから少しガスが出始めるが、三連の滝は苔の深い緑と豊富な水量の白水が美しさをまして見える。2条6m滝は倒木が残念だ。さらにトイ状滝やいくつかの小滝をこえると左手奥に見事なスダレ状滝が見えた。五平窪に着いたようだ。

この先沢は倒木で埋まっている。その先には大崩壊地もあるらしいので、予定通りこで遡行を終了することにした。さて、忌山の悪場と同じくらい心配していたのが下山ルート。迷わず時間をかけずに下山できた記録があまり見当たらなかったからだ。かなり念入りに調べては来たが、果たしてうまくいくだろうか。

五平窪手前左岸の窪を這い上がると左手に古い石積が見えてきて、踏み跡のような細い道にあがった。想像していたよりもはっきりしない道だと思ったが、石積もあることだしと、この小径をたどることにした。ところが途中で不明瞭になり、みんなでどうもおかしいということになった。調べてきた資料によると、巳ノ戸沢沿いの山道とは別に植林の作業道があるようなので、途中で斜面をよじ登っていくと、先ほどとは比べものにならないほどよく整備された作業道にでた。思わずやったあ!

登山道のような作業道をたどって進むとしばらくして右下に作業小屋跡のような広場が見えた。おそらく最初に乗り上げた古い作業道とつながっているのだろう。さらに進むと突然前方が赤茶けた崩壊斜面に遮られる。かなりの傾斜だ。ちぎれたトラロープがかかっていたので、まずはkukenさんがロープを結びなおして持ち、バイルでステップを作りながら通過。後続はトラロープにカラビナをかけてこわごわと通過。粘土質の土は足で蹴り込んでもきかずバイルを忘れたためにほんとうに冷や汗をかいた。

崩壊地を過ぎると手入れされた檜の植林帯となり、再び快適な作業道となる。いろいろな記録を総合すると、多くの場合最初に横切る古い廃道をたどって迷うようだった。おそらく崩壊地を過ぎたあたりで上の作業道に合流する分岐があるのだろう。

ヤケト尾根を回り込むように進むと分岐となり、折り返すような形で右の道を下る。急斜面をジグザグに下ると赤テープのついたロープが張られたところにでる。ロープの先には細いトラバース道が続いていたが、きっと先に崩壊地があって通行止めにしているのだろう。

植林帯は自然林にかわり、ブナの大木も点在していい雰囲気となる。道なりにどんどん下っていくと両側に沢音が聞こえ始め、吊り橋が見えてきた。橋のたもとから川原におりて泥だらけの沢装備を洗い、銘々着替えをすませてさっぱりする。

吊り橋を渡り、林道に出るところには比較的新しい通行禁止の標識が立てられていた。確かにハイカーがこの道に入ることは、途中道標もなく分岐が多いし通行困難な崩壊地もあるので勧められない。

下山路もうまくいったし、なによりも 忌山の悪場をすべて直登できた。前日という急ごしらえ(いつものことではあるが)のパーティ編成ながら役割分担もスムーズだった。なによりも、三人それぞれの楽しみ方で巳ノ戸谷の沢登りを満喫した一日だった。

巳ノ戸谷5 巳ノ戸谷6

八丁橋駐車広場8:45~巳ノ戸谷出合9:10~五平窪出合13:35~吊り橋15:20/15:43-八丁橋駐車広場16:10

写真集(編集中)