ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.06.19
名取川小松原沢
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2011年6月19日

 

10日前に林道の通行止めで転戦を余儀なくされた小松原沢。19日の日曜日だけ日にちが取れることになり、東北地方は晴れマークがついていたので、急遽日帰りで再訪することにした。シーズン早々出鼻をくじかれたので気になっていたのだ。鉄は熱いうちに打て!と、前夜発で現地へ。

仙台方面に来るたびに、帰京はいつも電車のタイミングがよすぎてゆっくり食事をする時間を取れずにいたのだが、今回は夜に到着。たまには美味しい食事がしたいと駅構内の牛タン通りへ行くと、どの店も長蛇の列。牛タンは諦めてさらに進むと寿司通りとなり、なんとか座れる店を見つける。頑張ろう宮城!と大きく書かれたポスターには地元の魚をふんだんに使ったお薦めメニューが満載だ。驚くくらいの賑わいで嬉しくなる。隣に座っていた東京から来たという中年男性も、思い切って始めて松島に行って来た帰りだといっていた。

駅レンタカーでひとまず二口渓谷ビジターセンターへ向う。センターの中は鍵がかかっていたが、玄関は開いており、すぐ横の洗面所が使えるようになっていた。これはありがたいと、センター手前の道路脇にテントを張って仮眠。

翌朝は簡単に食事をすませ、10日前に警備員に阻止された林道を奥へと進む。磐司岩を右手に見ながら糸滝沢出合手前のゲートで車を止めると、すでに1台駐車していた。見ると練馬ナンバーだ。きっと土曜日に小松原沢に入渓したのだろう。ここで沢装備をつけゲートを越えて林道をさらに進む。

橋を渡り林道がUカーブとなる手前から沢に降りる。2年半前に小松倉沢を遡行したときの記憶が少しずつよみがえってきた。さっそくナメ床が広がるが、ここ禿沢は赤茶けた岩盤のナメだ。

沢に陽が射しはじめると水面がかがやいてきれいなのだが、漠然と2年半前の印象とは違うと感じる。(あとで写真を比べると今回は水量が少なく、そのためにナメの美しさがあまり引き立たなかったようだ)。そして前回の大行沢同様、倒木の多さが気になった。

記憶にある10mナメ滝は左岸手前のルンゼ状から取り付いて高巻く。滝上で幅広の2段4mを越えるとしばらくは洗濯岩のようなゴツゴツしたナメが続き、左から南沢が出合う。前回下降した南沢は上部はゴーロ沢だが、中流から出合いまでは美しく穏やかなナメが続いていて好印象だった。

南沢出合いを過ぎるとしばらくの間大岩ゴーロが続く。こんなに長く続いたのかと思うほどだったが、都合のいい所しか覚えていないものだ。写真もきれいな所だけしかとらないので、記憶からは吹っ飛んでしまっていた。

4mナメ滝は微妙だった。最初sugi さんが左の水流沿いをトライするが上部で行き詰まり降りてきた。そこで私が空身で取り付き、最後は声を出して気合いで登る。間抜けなことにロープをつけ忘れ、下から投げ上げてもらう。4mだから済んだものの、もっと高度のある滝だったらどうなったことか。その後も数メートル程度の滝が続くがいずれも直登。5m階段状の滝は美しく、とても気持ちよく登れた。

二俣を左へ進み、沢が右に曲がるところで雪渓があらわれる。どおりで水が冷たいわけだ。右端から越えるとすぐに7mスラブ滝へ。右側の窪状壁から登るが、見た目よりも簡単だった。

小松倉沢を左にわけ、ここからが小松原沢となる。すぐに6mスラブ滝が目の前にあらわれる。滝下へ行って様子を見るが、中段までは手がかりがない。すぐ左の泥斜面に取り付いてみるが足下がグズグズで諦める。結局少し戻った右岸の急斜面から灌木を頼りに高巻いた。

ふたたび雪渓をやり過ごし、3段15mの美しいナメ滝を越えると沢幅が狭まり、険谷の雰囲気を感じさせる15m滝に阻まれる。直登ルートを探す気も起きない滝で、そそくさと巻き道を探る。巻き道も悪く緊張が続いた。かなり登ったところで踏み跡も判然としなくなるが、適当にトラバースをして下降できそうな斜面を探す。なんとか懸垂せずに沢床に降りることができホッとする。

さあいよいよ50m銚子の滝が見えてきたと思う間もなく、目の前がズタズタの雪渓となる。大滝は水流が細いので威圧感はない。全貌が見えないので左側の雪渓の壁の隙間を通って滝に近づこうとしたが、最後はブロックに遮られてしまう。諦めて戻り、今度は巻き道を探す。少し手前右側の急斜面に踏み跡があった。

大滝は50mもなさそうに見えたが、登っても登っても落ち口の高さに届かず、なるほど50mはあるのだと納得する。ようやく落ち口近くの高さに至ると見晴らしのきく草つき斜面の向こう側に上部の滝も見えてきた。この斜面をトラバースして滝の右側斜面の踏み跡を登ると、ようやく大滝の高巻きが終わった。大高巻きではあったが、大滝手前15mの高巻きの方が悪かった。

ふうっと一息入れたいところだが、すぐにゴルジュとなる。じつはここの通過が一番の核心になるのではないかと心配していた。ベテランならば微妙なへつりを楽しめるのだろうが、一見したところとてもへつり通して抜けられるとは思えず、かといって泳ぐなんて論外。最初から弱気で、高巻くつもりだった。

巻き降りた斜面をもう一度上がってさらに進むが、下降点が見つからない。sugi さんは傾斜が少し緩んだところを強引に下ってゴルジュ出口の滝上のナメ小滝の途中に滑り降りたようだ。下から指示をもらいながらさらに巻き続け、草付きの窪から下るが、最後はツルツルの土壁をこわごわ滑り降り、泥だらけで着地。これで、連続するエキサイティングな高巻きがようやく終わった。

沢に浸かって泥を洗い、一息入れる。ゴルジュは一箇所だと思っていたので、ふたたびミニゴルジュがあらわれ意表を突かれる。先ほどよりは小ぶりだ。右岸の土混じりの岩壁を途中からトラバースした踏み跡があったが、ちょっと嫌らしそう。ここは思い切って水に浸かってみると一部が腰程度の深さで、あとは水中のスタンスを拾って通過できた。

さらに小滝は続くがどれも楽しく越えられる。そしてようやく待望のブナ林のナメとなり、別世界へ。ブナは二次林だが、しばらくは美しい森に囲まれてヒタヒタとナメを歩く至福の時となる。水面が木漏れ日でキラキラ輝いている。ああ、やっとイメージしていた小松原沢に会えた。けっこう苦労したけれど、でも面白かったねと言えるゆとりができた。

左岸の一段上がったところに多くの遡行者が幕営するらしいテンバ適地があった。ブナ林に囲まれたステキな場所だけれど、沢から離れているのが惜しい。10日前に泊った大行沢のテンバの方がよかったなどと、泊まれない悔し紛れ。

1040mの二俣は予定どおり左へ進む。右沢を行けば簡単に11150mの神室峠に抜け、下山も楽なのだが、日帰りながら山形神室岳近くに抜ける「本道」にこだわった。右沢がぱっとしないのに比べ、左沢はきれいなナメがずっと続いている。

稜線にでるメドもついてきたところで恒例のソーメンタイムを取る。まだ遡行が終わったわけではないが、予想以上に変化に富んだ沢遊びができた充実感で満たされたひとときを過ごす。

舗装道路のようなナメはさらに続くが、ときどき倒木のジャングルとなる。源頭部は読図に細心の注意を払いながら進む。記録によると、微妙なコース取りの違いで藪こぎ10分から1時間とかなりばらつきが見られるからだ。二俣の度に右へと進み、つぎの三俣で迷う。明らかに真ん中が明瞭でこちらに行きたくなるが、ぐっとこらえて倒木でふさがれた右へ。

窪をたどると沢形がなくなるが、右手に顕著な沢筋が見えてきた。ずっと右寄りの沢筋をたどって来たつもりだったのでいつの間にと、不思議だった。GPSでも確認しながら進んだはずなのにやはりずれてしまったらしい。トラバース気味に斜上して沢筋に降り立ち、最後の二俣を稜線鞍部に近い左へ進む。いよいよ沢形がなくなり最後に軽い藪こぎ少々で登山道に飛びだした。ほぼ予定どおりに抜けることができた。

暑さでぐったりしながら沢装備をとき、着替えをしてハイカーに変身。去年から夏の下山は山スカートをはき始めたが、とても涼しく快適だ。ほんの2~3分で山形神室分岐へ。ここにザックを置き、空身で神室岳へ向う。小松倉沢の時は仙台神室岳だったので今回はぜひ山形神室岳に行きたかった。山頂は樹林に囲まれ展望が限られるが、けじめがついたような清清しい気分となる。

展望のすばらしい分岐に戻ると、大東岳が正面に大きい。10日前はあの山頂からこの山をみていたのだ。二口山塊の緑美しい山と谷を見渡しながら、これまで何度か歩いて来た二口のブナの沢旅を想う。

さあ下山まではまだ長い道のりだ。樹林の登山道をまずは清水峠へ。途中右沢の源頭である神室峠には二箇所に赤テープが巻いてあった。登り返した屏風岳からふたたび展望を楽しむが、これから下る林道が美しい緑の山肌に無粋な茶色い筋をつけている。

しだいにブナの純林となるが、このあたりはすべて二次林で細くくねって揺らいで見える。風に痛めつけられてるからなのか。この尾根は分水嶺なのだもの。アップダウンが多く消耗する。さらに折れた枝が散乱し、時にジャングル状態で歩きにくい。

清水峠から林道横断点まではさらに悪路となり、一部は完全に草に覆われ廃道のようだ。この道はあまり歩かれていないのだろう。そういえば、山形神室岳周辺でであった3組のハイカーはみな笹谷峠からのピストンのようだった。東京組の我々はかなり奇特なハイカーかもしれない。

ようやく林道へ出る。ここからは林道を歩いて二口峠へ。途中ショートカットの尾根下りもできるらしいが、それらしい斜面は藪で覆われていた。長くても神経を使わずにすむ林道を歩く。途中、古い法面を壊して新しく作り替えている工事現場を何カ所か通過する。そもそも車を通さない林道なのに、おそろしく立派な法面工事だ。そしてきっとまた何年か後に補修工事、作り直し工事と、永遠に林道車止めをして工事のための工事をつづけるのだろうか。

足が棒になるころ入渓点に戻ると、朝からのできごとが一瞬にして頭の中を駆け巡る。なんと長くも内容の濃い一日だったのだろうと思う。家でゴロゴロしていればあっという間に過ぎてしまう一日と同じ時間であることが不思議なくらいだ。

今回も最初にもくろんだ、シーズン始めののんびり山行だけではすまなかったが、沢登りのあらゆる要素がコンパクトに詰め込まれた、にくい演出の沢だった。(sugi、ako)

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(林道車止5:40-入渓5:46-南沢出合6:35-二俣8:05-小松倉沢出合8:25-銚子の滝上9:57-1040m二俣11:08-ソーメンタイム11:10/11:55-登山道13:25/50-山形神室岳13:57/14:05-清水峠15:40-林道出合16:20-車止17:40