ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.04.03
仙ノ倉北尾根~平標山
カテゴリー:雪山

2011年4月3-4日

 

懸案だった仙ノ倉山北尾根に行く機会を得た。昨年敗退して再挑戦するchieさんに声をかけてもらい実現。北尾根は雪稜入門の人気のルートだ。駅から歩いて行けて、ロープを使わなくても登れるので単独入山も可能な、積雪期限定の貴重な山。今回は女性二人パーティという初めての経験でもあり、楽しみだった。

朝立ちの場合、土樽駅へは水上経由の上越線で行くよりも越後湯沢駅経由の方が早く到着できるし、乗車時間も40分短い。土樽駅に降りたのは当然私たち二人だけ。駅舎で身支度をして粉雪がちらつくなか歩き始める。毛渡沢沿いの林道はまだ除雪がされておらず、雪は例年よりも多いようだ。

杉林に入ると、早々と下山してくる5人パーティとすれ違う。仙ノ倉山北尾根を目指したけれど悪天のため小屋場の頭で宴会をして帰ってきたとのこと。あまりに早い下山に、もったいないと言うと、北尾根はもう5回行っているからいいのだと言う。そうか、地元の人が何度も行くほど魅力のあるルートなのだ。小屋場の頭から先にトレースはないといわれたので、頑張りますと言って先に進んだ。

しばらくは毛渡沢沿いの林道を進む。初日の核心は、北尾根に取り付く手前の、板がはずされたワイヤーの吊り橋を渡ること。なんとか濡れずに渡渉できる場所を探し、吊り橋は絶対に渡りたくないと思ってきたのだが、現地について拍子抜けする。

雪が多いため橋は一回り短くなったように見え、沢もおおかた雪で覆われている。先行者が橋を渡った気配がないのでトレースをたどると、橋の少し上流に雪橋ができていて簡単に渡れてしまった。なぁんだ、心配しすぎた。けれどホッとして、さあ今日の核心は終わったと、軽口がでる。

小屋場の頭に取り付く手前の雪原で腹ごしらえの休憩をとる。視界は明瞭だが、仙ノ倉山方面の山はガスの中。ツボ足のまま5人パーティのトレースにそって急斜面を登る。相当の傾斜で、トレースがなかったらラッセルに苦労しただろう。

途中からはブナ林となり、青空も出始めて心が浮き立つ。右手には毛渡沢を挟んで日白山から長くのびる長釣尾根が近い。3年前に日帰りで東谷山から日白山を縦走してこの尾根を下り、展望の素晴らしさに何度も立ち止まったことを思い出した。振返れば、2月に登った足拍子山の鋭峰が小粒ながら際だった姿を見せている。

一汗かいて小屋場の頭にでると展望のいい稜線歩きとなり、鞍部に下ると快適そうなテンバ跡があった。前方にはシッケイノ頭へ続く北尾根がその全貌をみせており、すばらしい眺めだ。トレースに助けられ順調に進めたので、展望を楽しみながらここで昼食タイム。

しばらく気持ちのいい尾根歩きを楽しむと、しだいに雪庇の発達した痩せ尾根となり、急斜面のトラバースが続いて緊張する。けれど雪稜と展望は緊張の度合いと比例するように美しく、すばらしくなっていくのだ。

1455mの小山にテンバらしき整地の跡があり、展望も申し分なかったが、いかにも吹きさらしの場所だったのでパスすることにした。そして予定通り、傾斜の緩んだ1500m付近で行動を終えることにした。1時間ほどかけて斜面を念入りに造成し、まずまずのテンバが完成。いつもこうした力仕事は男性が中心となるので、女性二人の作業が新鮮に感じられた。

翌日も当初の予報では曇りと晴れマークだったのに、夜から風が強くなり、明け方からは吹雪となってしまう。シュラフに入ったまま二人で進路を相談し、とりあえず食事を済ませて9時ころを最終のメドに様子を見ることにする。まさに、前門の虎後門の狼状態で、ここまで進むと撤退も簡単ではないのだ。

その後も天候はあまり変化がなかったのだが、天気図からみて、状況がさらに悪くなることはないと判断し、先に進むことにした。chieさんは昨年も同じ場所から撤退しているので、なおさら固い決意があったはずだ。

ほとんど視界のない中で、雪庇の張り出しに注意しながらまずは1627mピークへ向う。うっすらと残っているトレースが心強い。トラバース気味に進むと最後はものすごい斜度の雪壁を見上げるところへ。ガスでまわりが見えないことが幸いしたのか怖さは感じなかった。chieさんの跡を追って無心に登った。

第二の核心部であるシッケイの頭は斜面がガリガリでなかなかピッケルが刺さらない。苦労している姿をみたchieさんが、こういうときは柄ではなくブレードを振り刺せばいいのだと後ろからアドバイスをしてくれる。気持ちは張り詰めた状態がつづいたが、適度の緊張感というのは快くもあるもの。アイゼンとピッケルをきかせながら、しだいにやりがいを感じながら登ることができた。シッケイの頭に抜けたときはホッとして、ほんとに嬉しかった。

しばらくはたおやかな稜線歩きとなるが、何しろ視界がないため、何度もガスが薄れるのを待っては方向を確認しながら慎重に進んだ。核心のシッケイノ頭を越えたあとの癒しの尾根を楽しみにしていたので少し残念。

仙ノ倉山へは最後に再び100mほど急斜面を登る。疲れが出始めていたこともあって、登っても登ってもたどり着かない感じだった。

ようやく着いたと思った山頂は北の肩で、にせ仙ノ倉山だ。ケルンらしきものはあったが、いくら探しても標識がみつからない。本当の山頂は少し先だった。稜線はものすごい強風で立っているのがやっとの状態。飛ばされそうになりながら写真をとり、すぐに平標山方向へ向う。ストックが風で浮き上がり、なかなか地面にさせないような状態で、まさに試練の道行きだった。これが痩せ尾根だったらとても先には進めなかっただろう。

一瞬ガスが晴れ、2021m峰が端正な姿をあらわした。視界があれば間違うはずはないのだが、この峰を越えたところで南に延びる尾根に引きずられそうになる。軌道修正して方向を確認すると登山道を示す標識が見つかり、ここからは時々雪面から出ている木道に沿って歩く。

ほうほうの体で平標山へ近づくと、これまでの試練に耐えたことを山の神様がほめてくれたかのように、急激に青空が広がり始めた。なんというドラマチックな展開か。歓声を上げずにはいられなかった。目隠し状態から解放され、すばらしい展望に迎えられて感激の山頂でフィナーレを迎えることができた。

平標山の山頂はトレースがたくさんあって急に人の気配が感じられた。ザックに腰を下ろしてしばし休憩する。テルモスのコーヒーを注ぐと風で吹き飛ばされるほどの強風だったが、もう安心だ。

みるみるうちに雲がはれていく。気持ちのいい尾根を下り始めると風はぴたりとやんだ。平標山ノ家へと下る。たどってきた仙ノ倉山がたおやかで真っ白な全貌をあらわした。シッケイノ頭を越え、あの尾根を歩いて来たと思うと感無量だった。平標山と仙ノ倉山の展望台のような山ノ家があまりにも気持ちのいいところなので、ここで再び休んで最後の余韻を楽しむ。

スキーのトレースがある樹林帯を滑り降りるように下り、沢沿いの登山道に合流。うんざりするほど長い雪道をたどって、別荘地の除雪終了点へ。もうへとへとだった。ここでタクシーを呼び、国道沿いのふれあいの郷広場にきてもらう。越後湯沢駅からは大宮までノンストップの新幹線に乗ることができた。

核心部のルートがガスって残念だったが、悪条件の下で頑張れたことはとても励みになり、いい経験になった。これからも少しずつ課題をクリアしながら、美しい雪稜の冬山を楽しみたいと思いながら帰路についた。

4月3日 土樽駅8:50-北尾根取り付き10:50/11:00-小屋場の頭12:50-1510mテンバ15:30

4月4日 テンバ9:10-シッケイノ頭11:05/11:15-仙ノ倉山13:20-平標山14:50/15:-平標山ノ家15:40/16:00-林道除雪終 了点17:50