ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.02.26
白沢山~沼の沢山~叶の高手
カテゴリー:雪山

2011年2月26-27日

 

南会津の山に行きたいという思いで選んだのが、いつか厳冬期に訪れようとあたためていた会津朝日岳周辺の沼の沢山だった。ほとんど記録もない地味な無名の山だが、山頂の南にはブナの大木の台地が広がり、会津朝日岳をはじめとする南会津の山々の展望がすばらしい山なのだ。早立ちすれば日帰りできるが、やはりブナの台地に泊ってこその沼ノ沢山。ゆったりとした計画をたて、雪の状態がよければ翌日は会津朝日岳前衛の叶ノ高手まで足を伸ばしてみることにした。

けれど黒谷は遠い。冬はなおさらのこと。今回はじめて新白川駅からのルートをとってみた。289号線の甲子トンネル開通により便利になったようで、道路の凍結もなく,順調に2時間ほどで黒谷発電所についた。

黒谷川の橋を渡った発電所前の広場に車を止め、スノーシューをはいて出発。除雪の雪壁を越え、川沿いの林道を進んで大沢を渡ったところに張り出している痩せ尾根にのる。雪はしまっていてシューはほとんど潜らず快適だ。尾根先端は急斜面なので,少し沢沿いに進み、堰堤手前の斜面から取り付いた。

最初の100mほどは針葉樹林の歩きにくい急斜面の痩せ尾根だったが、次第にゆったりとしたブナ林となる。このあたりのブナは所々大木が残っているものの大半は二次林のようだ。天候は申し分なく、すぐに汗ばむほどの陽気のなか、まずは白沢山へ。早くも会越国境の山並みが広がり、中でも浅草岳がその大きな存在を誇示している。

白沢山の山頂は台地状の雪原広場のようだ。これから向う沼の沢山があらわれ,その奥には朝日岳から南に延びたギザギザの稜線が春霞の空に浮かんで見える。沼の沢山までは標高差もあまりなく、小さなポコをいくつか持つなだらかな尾根の稜線漫歩。

時間もあるので周囲の山並みや眼下のブナ林を楽しみながらゆっくり進む。ポコに立つたびに新しい展望がひらけ、山座同定に余念がない。最初は頭だけ見えていた城郭朝日岳が近づき、4年前に歩いた恵羅窪山から山毛欅沢山のブナロードが続いている。さらに奥には稲子山、窓明山が大きな山容を見せている。あの時を思い出し懐かしさがこみあげる。

目の前の小山に雨量観測小屋のアンテナが見えてきた。広く真っ白な雪原の沼の沢山山頂。

取り立てて特長があるわけでもない地味な山だが、南会津と会越国境の大好きな山々に囲まれた幸せな山なのだ。さあ、今日はここまで。南に少し進んだ台地のような尾根には、お待ちかねの美しいブナの大木が並んで歓迎してくれているようだ。彼らの元へと、まっさらな雪原にトレースをつけて進む快感。まさに期待通りの沼の沢山に二人で頬が緩みっぱなし。正面に朝日岳、背後に城郭朝日山を望む一等地を今宵のねぐらとする。

さっそく整地をしてテントを張るが、中に引っ込んでしまうのはもったいない。最近は日が長くなったことがうれしい。少し先のブナ林を歩き、朝日岳に沈む夕日を眺めてようやくテントの中へ。冬の定番鍋で温まり、これからの春山プランを語り合う。外に出ると満天の星空だ。あんなにはっきりと北斗七星を見たのは久しぶりのことで感激しながら就寝。

翌朝は朝食を済ませ、テントに不要な荷物を置いて叶の高手まで往復する。小幽沢を挟んだ目の前は大幽山が近い。その先の谷が大幽沢だ。朝日岳から大幽朝日岳へ続く稜線の先には丸山岳が姿を見せている。いつか朝日岳から丸山岳のルートも歩いてみたい。連休のころはかなり雪も落ちてとくに大幽朝日岳までの岩マークの尾根は藪がひどいらしいが、厳冬期のいまはすべてが純白の雪で覆いつくされている。今の時期でも天候さえ安定していれば歩けるのだろうか。

叶の高手へ向う尾根はとくに沼の沢側に緩やかに派生する枝尾根のブナ林がすばらしく、駆け下りて行きたい衝動に駆られる。小さな高みに乗り上げるたびに歓声を上げ、すばらしい展望に足をとめることしばし。いそぐ旅ではないのだ。思う存分山並みを堪能する。

前方には叶の高手の尾根が見渡せるようになり、雰囲気が一変する。これまでの樹林帯から雪稜の世界となったのだ。雪庇もなくおおむね緩やかな斜面だが、一部ちょっとしたナイフエッジとなっているところはsugiさんが先行する。幸い雪に潜るので安定感が得られたとのこと。上部では時折雪煙が舞っている。真っ青な空と真っ白な山のコントラストが美しい。交互に先頭を進んで幸福感を分かち合う。

叶の高手の西の肩に上がると朝日岳の鋸刃がさらに迫力を増して近い。すべてが手に取るように見える。尾根筋を目で追うが、山頂直下が雪庇の急斜面になっていて厳しそうだ。時間があるのでも最初は避難小屋までとも考えたが、雪で埋まっているし、ここから一度大きく下るので、今回の到達点はここまでとする。安穏とした沼ノ沢山だけでなく叶の高手で十分に雪山気分を味わうことができ大満足だ。朝日岳の先には毛猛山の鋭峰が顕著だ。その先に続く彼方の山並みは未丈岳ではないだろうか。

おっと、ここは西の肩。少し先の針葉樹で覆われた小山が叶の高手のようだ。展望はこちらがいいけれど、一応タッチしておかないと、またあとで悔やむかもしれない。この頃から風が強くなり、雪煙が舞う。ポコのゴヨウマツには赤テープが巻かれていた。今回初めて目にした目印だ。木陰で暖かいお茶を飲み休憩するが、風が強く寒いので早々に引き返すことにした。

下りは足下に広がる山並みを見渡しながらの絶景漫歩。同じルートでもまったく違う楽しみがある。何度も足をとめ、眼前の世界を胸に吸い込む。それほど時間はたっていないのに、眼下のブナの台地が見えてくるとなぜか懐かしさがこみ上げてきた。ただいまー。すっごくステキなルートだったよ。

さあ、まずは暖かいお汁粉で一服。ふたたび風もなく穏やかな雪原で余韻をたのしみ、下山の準備に取りかかる。予報では午後から天気が崩れるとのことだったが、午後になっても青空は続き、気温がどんどん上がっていった。暑さにバテ気味となり、沼ノ沢山から白沢山までのゆったりとした尾根歩きがとても冗長に感じられた。

白沢山からは一本調子の尾根なので一気に標高を下げ、最後は怖々と急斜面を滑り降りて林道に降り立った。発電所前にもどって帰り支度をしていると地元のおじさんがやって来ていろいろとおしゃべり。叶の高手まで行って来たと伝えるといたく感心された。

沢沿いの登山道は雪崩の巣窟で今の時期は近づけない、小幽沢界隈の山には熊がたくさんいて5月の連休前からは熊打ちが始まる、沼の沢山の観測計のバッテリー交換が3年に1度されていて、沼の沢沿いに上まで道がついている、などいろいろな話を聞くことができた。

やはり南会津はワンダーランド。魅惑のおもちゃ箱からまた一つ、とっておきの宝物を見つけた春山のような山旅となった。

2月26日 発電所10:40-白沢山13:25/13:40-沼の沢山15:40/15:50-テンバ16:00

2月27日 テンバ6:40-叶の高手9:10/9:20-テンバ10:40/11:20-白沢山13:05/13:15-発電所14:25