ブナの沢旅ブナの沢旅
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2010.08.08
神ノ川大岩沢
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2010年8月8日

 

今回は日曜日限定となったので近場の沢を考え、かねてから関心があった裏丹沢の大岩沢を選んだ。いつもはナメのきれいな「癒し系の沢」ばかり歩いているので、時には少し刺激がほしくなる。大岩沢はそんなニーズにぴったりの、なかなか良い按配の沢だった。

初級の沢とはいえ、調べていくうちにかなり気合を入れなければならないと、少し不安にも・・・今回は初顔合わせのメンバーもいたので、いつもよりしっかりと調べ、イメージトレーニングもどきの準備。そうこうしているうちに、自分の力量を試すいい機会になると思えるようになり、ワクワク感で当日をむかえた。

早朝伊勢原駅で待ち合わせ、みかんさんの車で神ノ川の日陰沢橋をめざす。立派な休憩所前にはすでに何台もの車が駐車していた。話をしながら歩き出したところ、最初から方向を間違えてしまい、すぐに引き返してヒュッテ脇の登山道へ。こんな様子をみていたヒュッテの管理人さんは、私たちが大岩沢へ行くというので心配したのか、しきりに声をかけてくる。大丈夫でーす、とお礼を言ってそそくさと先へ進む。

林道をしばらく行くと右手にいろいろな標識とともに大谷沢(大の字は消えていた)の標柱が見えた。沢の方向へ進むと斜め前方に大岩沢出会いのコンクリートの堰堤が樹林越しに見える。ここから日陰沢に下って沢装備をつけ、右手奥の大岩沢へ。最初の堰堤を左から越えると、鉄骨で支えられた木製の堰堤が三つ続けてあらわれ、すべて右から越えていく。これでようやく本来の沢登りがスタートだ。

すぐにF1、4mとなる。もともと水量が多いことを考えれば、平水なのだろう。右から釜を回り込んで右側の水流をシャワークライム。ホールドは豊富で、適度の水量がむしろ心地よい。滝を登るとF2、F3、7mが続いている。F3は左壁にとりつくが、岩がもろく一つずつ確かめながら慎重に登った。頭ほどの大きさの岩が平気ではがれるのが恐ろしいが、難しくはない。

F3の上でゴルジュが終わり、あたりが開ける。左岸には急傾斜のガレ沢。すぐに再びゴルジュとなり、大岩を超えていくと5m滝へ。左にワイヤーが下がっているが、右壁の方が登りやすいとの事前情報通り、右から難なく超える。さらにつづけて小滝を越えると、

廊下の奥に滝が見える。さあ次は核心のF4 2段10m滝だ。下からは下段6mだけしか見えない。恐るおそる近づいて様子をみる。滝自体は水圧が耐えられれば登れるらしいが、私たちはああだこうだと見物するだけにとどめる。滝をバックに記念写真を撮って、巻き道をさがす。

少し手前の凹角スラブを登るとバンドとなる。巻き方は記録によりまちまちで、あるガイドでは小尾根を3つも越える大高巻きとなっている。バンドからは上段の滝がよく見え、すぐにでも飛び越えていけそうな近さだ。けれどバンドの端はルンゼで中断されており、下に降りるのはかなり勇気と技量がいる。

右手の枝沢の涸滝を登って滝方向に小尾根をトラバースすると再び崖上となるが、みかんさんが先行して偵察すると、ここから懸垂で上段の落ち口上に降りられそうだという。立木には残置シュリンゲがあった。そこで30と20mロープをつないで懸垂し、そのまま右壁沿いにトラバースして沢にもどることができた。時間はかかったけれど、みかんさんの機転で予定していたよりも小さく巻くことができた。

しばらく進むと左に巨岩が見える。大岩が多い沢だから大岩沢なのだと納得。ゴーロ滝を越えると5m滝。右から難なく超え釜を持つF6、8m 滝の前へ。右側が登れそうだが、途中に手がかりが乏しいところがある。みかんさんがロープを引いて先行。最初はノーロープで登ろうと思ったが、sumireさんが念のためとアッセンダーの使い方を教えてセットしてくれたので、そのまま登ることにした。確かに途中がいやらしかった。

ようやくナメがあらわれた。小滝をいくつか越え、ホールドの乏しいスラブ小滝を何とか登ると、奥にCSのトイ状滝が見える。右壁から登られているが、とりつきの廊下が深そうなので、とても突っ込んでいく気がしない。左壁には残置ハーケンが見えるが、あそこまでどうやっていくの?という場所に打ってある。そこで手前の岩角を登り、ブッシュの急斜面から巻く。

途中灌木の斜面に乗り込む手がかりの灌木がぐらついて怖かったので、ここも後続にはロープを出した。斜面を滝方向にトラバースすると下に滝の落ち口がみえる。苔むした岩壁を7mの懸垂で沢へもどった。すぐ先にはF8、10m滝だ。左壁から思ったより簡単に登ることができた。

*

ふうっー。これで核心部は終わったようだ。しばらくゴーロが続き、渓相が穏やかとなる。ほっとした気持ちで淡々と進むと荒れた様相の三俣となり、ここで大休憩。しばらくゴーロの後、階段状の小滝が続き、穏やかなとてもいい雰囲気となる。ガイドではF9,F10とされているが、実際には小滝がずっと続く感じで、切れ目がわからないほど。多段滝がしばらく続いた後は水流も細くなり、あっという間に涸れてしまった。

けれど、ここからがけっこう長い行程なのだ。ガレた岩屑の斜面が続く。傾斜もでてきた。上に行くと涸滝のような岩場となり、ちょっとしたクライミング気分が味わえるといったら大げさか。あたりの緑がいまだみずみずしく、新緑のように美しい。すると行く手をふさぐような岩壁が立ちはだかっている。越えられるかなと一瞬ひるんでしまうが、近づくとガバガバで楽しい岩登り。そんなわけで三俣からの高度差500mも以外と楽に登れてしまった。

何度か二俣となるが、すべて右へ。そして赤土のガレ斜面が見えると最後の二俣で、稜線も間近だ。少し右に入ってから鹿道をたどって左の小尾根へとりつき、適当に登りやすそうなところをたどっていくと鹿柵が見えてきた。あたりはブナの大木が林立する斜面で、とてもいい雰囲気だ。鹿柵にそって左へむかうとすぐに登山道にでた。ちょうど大室山と加入道山の稜線への分岐手前だった。

3人でお疲れ様の握手。登山道に出るととたんに虫がよってきてうるさい。防虫ネットをかぶって装備をとき、一休みしてから犬越路への登山道を下る。冬にしか歩いたことがないので、雰囲気のまったくちがう緑の季節が新鮮だ。会話を楽しむ2人からおくれ、ブナ林の中で写真を撮りながらゆったりした気分に浸る。犬越路からは初めて歩く日陰沢沿いの道となるが、ザレてあまり歩きやすくはなく、最後は淡々と下って車にもどった。

日陰沢橋7:45-大岩沢出合8:10/8:30-三俣12:10/12:45-登山道14:05/14:40-犬越路15:40/15:55-日陰沢橋17:00