ブナの沢旅ブナの沢旅
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2010.08.21
楢俣川ススケ沢-ススケ峰湿原-奥ススケ沢
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8月21日-23日

 

ブナの沢旅の常ながら、今回も直前の変更となった。当初は東北の和賀方面の沢を予定していたのだが、どうも天候がすっきりしない。そこで計画の順番を変え、秋に予定していた楢俣川を繰り上げることにした。長い林道歩きがあるので真夏は避けたかったのだが、天候優先の判断となった。

早朝、川越からレンタカーで現地へむかうが、予想外の渋滞。到着は予定を1時間遅れて10時となる。上越方面の車での朝立ちは初めてだったが、やはりリスクがある。

楢俣林道の車止めから歩き始める。ここは昨年10月に洗ノ沢を遡行したとき以来だ。とにかく炎天下、林道歩きの3時間を耐えなければならない。何度も水分補給。ならまた湖が見えてくると、カヌーを楽しむグループと歩調を合わせるかのように湖岸をすすむ。1時過ぎにようやく狩小屋沢へ下る。ひとまたぎの沢で、思ったよりも小ぶりだが、かつては至仏山の登路だったという狩小屋沢もいつか遡行してみたい。

沢に降りる手前で支度をしていると単独の釣り師が上流から降りてきた。ダム湖ができる前から毎週のように楢俣川に通っているというベテラン風情。林道ゲートが封鎖されているのは、以前山菜採りの部外者がコシアブラを木ごと切り取って持ち帰ったことがきっかけだったと教えてくれた。そして40センチもある尺イワナの写真をたくさん見せてくれた。楢俣川は釣り師が多い沢だと聞いていたが、今回出会った人たちも3日間で単独を含め3組の釣り師だった。

沢を渡って再び踏み跡をたどって本流へ下ると、踏み跡は対岸に続いていた。時間を節約するため矢種沢出合いまで踏み跡をたどる。途中に沢におりるトラロープがあったので、ここから下ったところは出合前の本流だと思い込んでいた。思ったより小ぶりだなと感じたものの、ナメがきれいな沢で、楽しく歩いて行くとすぐに二俣となる。

ここが矢種沢出合だと思い右へ進む。暑いので、大きな釜を持った小滝でザックを下ろし水遊びに興ずる。行水よろしく釜に浸かってクールダウン。さらに進むと7mほどの滝があらわれる。矢種沢から前深沢が楢俣川でもっとも美しいところだと書かれた記録を引き合いに出し、それほどでもないよね、などと言いながら小滝をつぎつぎと越えていく。

しばらくしてさすがに、あれっと疑問がわくが、コンパスで確認すると方向はあっている。けれど不安になってsugiさんにも確認をしてもらうとGPSが違うところを示しているではないか!私も今回初めてGPSを持ってきたのだが、こんなところで間違えるとは思いもしなかったので、まだ電源を入れていなかった。まさに、晴天の霹靂。すでに1時間ほど遡行してしまった。

本流だと思っていたのは矢種沢だったのだ。慌てて沢をくだり、ようやくほんとうの本流へ。なんと2時間近くのロスタイム。釜で水浴びして遊んだり、滝登りを楽しんだりと、なんと間抜けなこよかと情けない。もう二人して笑うしかなかったが、日没前にススケ沢出合いまでは行けそうになく、そうなると目的のススケ峰湿原も実現しなくなる。ひょっとしてダメかもと一瞬弱気になったが、気を取り直してススケ沢より一本手前の裏日川崎沢出合を目指すことに。とてもいいテンバがあるらしいので頑張ろう。

かなりの痛手だったけれど、まだ3時半なので3時間は行動できる。天気もいいので気持ちは前向きだ。確かに矢種沢出合からたどった本流は沢幅も広く、白い岩盤が発達したとても美しい川で、所々に川幅いっぱいのナメ滝をかけ、深い釜はエメラルドグリーン。すぐに時間の制約など忘れるほど、景観の素晴らしさに目を奪われながらの遡行となった。

前深沢は、出合はぱっとしないゴーロ沢に見えたが、中流部からはとても美しいナメが続き、50m大滝を連ねて至仏山へとつながる。前深沢~狩小屋沢下降は楢俣川でも人気のルートだ。数メートル級の滝が連続するが、いずれも左右どちらかが階段状になっているので簡単に越えられて楽しい。日崎沢は出合に滝を落とし、なかなかの迫力だ。右壁を登って滝上を横切ると樹林の中に踏み跡が続いていて簡単に本流の滝頭に降りることができた。

しばらく進むと焚き火のにおいを感じる。この近くにテンバがあるのだろうか。時間も気になり出したところ。やはり沢が左に曲がったところで二人組の釣り師が河原で焚き火をしていた。挨拶をして事情を話すと、もっともなことに地図をちゃんと見ないのが悪いといわれてしまったが、段丘の自分たちのタープの横にテントを張ってもいいよと申し出てくれた。

すでに5時半だったので、迷ったものの好意に甘えようとテンバにあがってみたが、当然一番いいところにタープが張られていて、テントを張るにはイマイチ。明日は長い行程なので、お礼をいって先に進むことにした。

地図で見ても裏日前まではかなりの距離だ。次第に足早となり、周りの景色を楽しむ余裕もなくなる。あたりはすっかり黄昏の雰囲気となるが、まだ明るいことが救いだった。そしてようやく裏日崎沢出合へ。この時はどれほどホットしたことか。ああ、これで明日は大丈夫・・・さあ、このあたりにいいテンバがあるはずと、左岸に張り出したブナの段丘に目をこらす。それらしき踏み跡を見つけ上に駆けあがると、あった!sugiさんに大声で知らせる。

今年はまだ誰も使っていないようで若い笹が生えていたが、広々としたとてもいいテンバだ。さっそくテントを張って焚き火の準備をする。火が燃える頃にはあたりも暗くなり、絶妙のタイミングだった。思い込みは恐ろしいと大反省大会となったが、よくここまでたどり着いたと、安堵の気持ちで乾杯!明日はススケ沢までの距離分だけ早立ちすることにして9時頃就寝。

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5時半出発の予定が15分遅れるが、ススケ沢までは以外と近かった。朝の清々しい空気に包まれながら快調に進む。ススケ沢に入ると雰囲気が変わり、しばらくはゴーロ。小滝が出始めると次から次と途切れることがない。すべて深い釜をもっている。特に難しいところはなく、ちょっとした工夫をしながら楽しく越えていける。

そして突然のように2段20m滝が前方にそびえて見えたときは、これまでと全く違う景観に、思わずおおっと歓声。「奥利根の山と谷」には左が登れるとあったが、上部が厳しそう。少し手前左のガレ窪を登り、適当なところでトラバースして滝上に出ようと思ったが、上に追い上げられてしまい、けっこうな大高巻きをしてしまった。

小滝を越えて進むとゴルジュとなり、へつったり突っ張りで抜ける。すると再び15m滝が立ちはだかる。ここも登れるとあったが、ウソでしょーという感じだ。手前右手の草付き斜面を登ってトラバース。このあとは次第に沢が狭まりトイ状滝が連続する。ボサがうるさくなるが、なんと熟した木イチゴの藪で、しばらくは甘酸っぱい実を頬張りながら進んだ。

二俣のたびに慎重に地図とGPSで進むべき方向を確認。突然視界が明るくなり、左手が草付きスラブの斜面となる。源頭部の様相となり、振り返るとたどってきた谷が見渡せるようになり、爽快だ。さらに右端の窪を忠実に詰めて行くと1800mを越えたあたりでいよいよ沢型が消え、ネマガリ竹の藪となる。さあ、藪に突入だ。方向を何度も確かめながら1880mあたりで至仏山へ続く稜線にのった。

さらに1時間ほどの藪こぎとなるが、所々藪が薄くなったり、見通しのきく笹藪になったりしたので、藪ランクとしては中程度か。湿原への執念に燃え、ひたすらコンパスの示す方向に黙々と藪をこいでようやく1930mへ。東寄りを意識しながら、今度こそと目先の一番高いところを越える。するとぱっと視界がひらけ、とうとう湿原の南端に飛び出した。湿原だぁー、出たよー。あとは言葉にならず全身脱力状態でへたり込む。

予想通りのすばらしい光景だ。大きな池塘が点在し、その先には景鶴山が望まれる。燧ヶ岳山頂は雲の中。一番大きな池塘にはアクセントのような緑の小島がいくつか浮かんでいる。荒れた気配もなく、原始の自然の姿をとどめて美しい。ほんとうに美しい・・・時間は12時半。1時をタイムリミットとしていたので、まずはホットする。

軽い昼食をとってから池塘巡りを楽しむ。目の前の樹林に覆われた小山がススケ峰だが、山頂は展望もきかないし、もう藪は十分なのでパス。池塘の奥は湿原が広がっており、尾瀬側に緩やかな斜面となって落ちている。入山禁止の禁断の湿原群、岩塔盆地を見下ろし、思いを胸にしまい込む。右手には至仏山が大きくそびえ尾瀬ヶ原の一角がみえる。左手には大白沢山山頂の湿原。いつか大白沢も遡行してみたい・・・

あれこれ思いを巡らしていると時間があっという間に過ぎてしまう。そろそろ戻らなければ。ここに泊まれたらどんなにかすばらしいだろ。朝に夕に、それぞれ感動的な光景が広がることだろう。と、思いはするが、すぐにそれはよくないことだと思った。

時間はすでに1時をまわっている。藪をこいでしばらくは来た道を戻るが、下りの藪は「楽チン」だ。コンパスで奥ススケ沢源頭部の方向を確かめ、ひたすら下っていくと何となく谷筋が見えてきた。こうなればもう安心。すぐに窪があらわれ沢筋が明瞭となる。たぶん奥ススケ沢から入った方が簡単に湿原に出られるのだろ。

この沢は沢幅の狭いこぢんまりとした平凡な沢で、小滝はほとんどクライムダウンか小さく巻いて下れる。最初にあらわれた5m滝では、上から見下ろすと恐ろしげで、残置で懸垂をしたのだが、降りてみるとなんと言うことはなく拍子抜け。そこで、もったいないのでsugiさんに登り返してもらい、残置ロープを回収。最初はひるんだが、慣れの問題なのだろう。

以降は何とか懸垂せずに下ることができた。一カ所ゴルジュ帯の出口に10m滝がでてきた。25mロープぎりぎりの感じだったので、懸垂せずに右岸から高巻いて草付き斜面をトラバース後、樹林帯の急斜面から沢に降りた。難しいところは特にないのだが、行程が長いため時間がどんどん過ぎていく。

ようやく本流出合へ。渓相がかわり、スケールや雰囲気がよくなる。本流の上流を見上げると赤倉岳へ続く稜線が見渡せる。ここからも長い行程だ。つぎつぎとあらわれる滝はどれも美しく下るのも難しくはないが、とにかく時間がかかる。先が切れ落ちるたびに、今度の滝は大丈夫だろうかと、気が休まらない。

日没までにテンバに戻れるだろうかという不安もでてきた。ヘッデン下降はなんとしても避けたいと思いながらひたすら下り、ようやくススケ沢出合へ。まだ着いたわけではないが、ここからは朝歩いて距離感もあるので少し安心する。すでに6時半をまわっていたが、これで何とか暗くなる前に帰れる!

裏日崎沢出合に近づいた。付近は左岸がブナ林の段丘になっているのだが、薄暗いのでテンバの登り口が判然としない。しばらく探していると白い樹肌の二本のブナ林がまるで「ここだよ」と言っているように目にとまった。ああ、よかった。ただいまー、帰ってきました。何とか7時前に到着。長い一日だった。疲れた。でも湿原に行ってちゃんと帰ってくることができた。昨日といい、今日といい、危うさを抱えながら、でもやり遂げたのだ!

すぐに暗くなったので焚き火はできなかったが、乾いた衣類に着替えればさっぱり快適。長くも充実した一日を振り返り、よかったことや反省点を話し合ってハイライトの2日目を終えた。

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3日目はたどったルートを戻るだけなので気が楽だ。3日間とも天気に恵まれ夕立もなく幸運だった。初日は時間に追われて余裕のなかったところをゆったりと歩く。途中からは谷にも陽が射し始め、水面がきらきら輝いている。時間もたっぷりあるので、気持ちのいい川原で早めのソーメンタイムを取ることにした。小一時間ほどのんびりと休み、最後の遡行を楽しむ。しだいに川は広がりを見せ、川幅いっぱいのナメ小滝が連続する。アプローチさえよければ、この付近だけを歩いても楽しいところだ。

狩小屋沢の徒渉点で沢装備をとき、炎天下の長い林道を歩いて車止めに戻った。Sugiさんお勧めの照葉荘で入浴しようとしたところ満員とのこと。洞元荘では今は日帰り入浴をやっていないと言われる。ならばと、少し車を走らせお気に入りの鈴森の湯で温泉に浸かり、食事をとって帰京した。

今年の夏休み山行は土壇場の予定変更となったが、時間的に厳しかったので結果的に日の長い今の時期にしてよかった。当初予定していた秋だったら、二日目はヘッデン下降間違いなし。結果オーライとはいえ、自分たちの力量と計画のバランスに課題を残すこととなった。と、反省点はあるものの、また一つ、思い出深いすばらしいブナと湿原の沢旅を心に刻むことができた。(sugi、ako)

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21日 楢俣川林道車止め10:15-狩小屋沢出合13:15-矢種沢途中まで往復 -裏日崎沢出合(BC)18:45
22日 BC5:45-ススケ沢出合6:05-楢俣川左岸道稜線11:30-ススケ峰湿原12:30/13:15-奥ススケ沢下降-楢俣川本流出合16:40-BC18:50
23日 BC7:00-ソーメンタイム(45分)-狩小屋沢出合11:40/12:15-林道車止15:00