ブナの沢旅ブナの沢旅
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2009.12.04
猿倉岳~駒ガ峰~黄瀬沼~乗鞍岳~赤沼(中退)
カテゴリー:雪山

12月4-5日

 

晴天のおかげで、朝一番の青森空港行きの飛行機では雪の高嶺展望を満喫することができた。真っ白な飯豊連峰が見え始めると朝日連峰がつづき、その先には独立峰の鳥海山が雄大な姿を見せている。窓に釘付けになっているとキャビンアテンダントが反対側に田沢湖が見えると教えてくれる。

なにしろ席はガラガラなのであわてて移動し、今度は秋田駒から八幡平方面の山並みを目で追う。葛根田源流部を上空から眺められて嬉しい。その後は雲に覆われてしまったが、空中山岳観光を楽しみながらあっという間に青森空港へ到着。残念ながら、天気予報通り青森方面はどんよりとした曇り空だった。

登山口である猿倉温泉は道路が冬季通行止めのため別ルートで谷地温泉へ向かう。高度を上げるにつれ雪が出始め、樹林帯の樹氷が美しい。ゲート手前に車を止め出発の準備。近くでは除雪車が作業をおこなっており、作業者の話では今週になってかなり雪が積もったとのこと。通行止めの道路も除雪が行われていた。

猿倉温泉分岐でワカンを装着し歩き始めると、ようやく今年初めての雪山に登るという実感がわいてきた。新雪を踏むたびにキュッキュッと音がするその響きがとても心地いい。あたり一面の雪景色に魅せられながら静まり返った休業中の猿倉温泉へ。

裏手から登るのだが、標識もみえず雪で道も隠れているので取り付きから迷ってしまう。その後もところどころにテープがついているのだけれど、登山道は尾根というよりだだっ広い斜面につけられており、もともと藪で覆われているらしい。

ひたすら地図とコンパス、GPSをたよりに進むしかない。登山道があるコースということで、いつものような下調べをしなかったこと、雪の状態を甘く見ていたことを後悔する。

雪はラッセルというほどではないが、ときどき藪の深みにはまったりしてなかなか厄介だ。標高が1000mをこえると樹氷のブナ林はアオモリトドマツ林に変わる。雪は4~50センチほどの深さだろうか。もっと雪が降って藪が完全に隠れれば歩きやすいのに、雪の藪こぎをする羽目になるとは思わなかった。

予想外の展開で時間がかかってしまったが、辛抱強く高度を上げていくと山頂近くのあたりが開けた場所にでた。視界はあまりよくなかったけれど、登ってきた斜面には樹林が白い海原のように広がり壮観な眺めだった。

山頂を探して樹林に入ったところ、先方の頭上に大きな丸いナンバープレートが見えた。スキー用の標識らしい。あと3,4mほど雪が積もればアオモリトドマツのモンスターが点在するすっきりしたスロープになるのだろう。

一段高い反対方向の樹林に進むと、木の中ほどに雪で覆われたプレートがかかっていた。とっさに山頂に着いた!と声を上げる。急いで雪を取り払うと猿倉岳の文字。このときの嬉しかったことといったら・・・すでに4時近かったので、駒ガ峰手前のテンバまでは行けそうにない。それなのに、なんと最初の計画では駒ガ峰から黄瀬沼に下ろうとしていたのだ。

少し先に進んでみたが、やはり稜線の道がわからず歩きにくい樹林帯がつづいている。諦めて見晴らしの利く平坦地を探し、急いで雪を固めて設営作業。テントに入ってようやく落ち着いた時には、あたりは真っ暗になっていた。まずはよく頑張ったと乾杯。煮込みうどんで温まったあとは、あれこれと反省点を洗い出し、これからの雪山に活かそうと誓って就寝。

 

 

 

これまで積雪期のテント泊といっても会越地方の春山が中心だったため、それほど寒い思いはしなかったが、昨晩はさすがに冷えて寒かった。水は凍り、テントの内側には氷雪が張り付いていた。相変わらずの曇り空。先に進めば時間切れになることは目に見えていたので、相談するまでもなく下山することに。

そうと決まれば気が楽だと、のんびり朝食をとっていると太陽が輝きだした。あわてて外に出て感嘆の声。目の前には小富士のような八甲田の山々が澄み渡る青空の下に白く浮き上がっていた。この光景を見ることができただけでも来た甲斐があると感激だった。スキーヤーにとっては垂涎のスロープに違いない。

さすがにトレースのある下りは早い。雪の樹海を見下ろしながら順調に下り、最後は少し遊んでみようとトレースから離れて別ルートを取るほどの余裕ぶりだ。とたんに頭をひねってしまったが、なんとか沢の渡渉点前でトレースに合流し、猿倉温泉の休憩所にもどった。稚拙な計画で頓挫したのだが、なんだか充実した気持ちだった。これで今シーズンの雪山が楽しみになったねと、甘いぜんざいで心も体も温まって車にもどった。

 

 

時間はたっぷりあるので、当初の下山予定地である蔦温泉近くの仙人橋に行き、空身で赤沼を往復することにした。さすがに標識もあり、途中までは単独のトレースもあって概ねわかりやすい。ゆったりと広がる樹氷のブナの森をのんびり歩いていくと赤沼が見えてきた。雪の森に囲まれ、ひっそりとたたずむ沼の光景はさながら墨絵の世界のようだ。

正面に見える赤倉岳は上部が雲で覆われている。湖岸が小さな広場で休憩にぴったりの場所。岸辺の倒木がまるでオブジェのように見える。写真を撮ったりお茶を飲んだりしてしばらくくつろぎ、来た道をもどった。

途中、三沢から来たというスノーシューのアメリカ人カップルとすれちがう。初めて人に会えて嬉しく言葉を交わし、ついでにトレースをつけたから迷わず行けるよと恩きせがましく言うと、赤沼は二度目だとのこと。残雪期の新緑や紅葉の時もさぞかしきれいだろうなと思う。

最初の計画の終了点である赤沼を往復し、計画の初めと終わりは押さえたわけだが、これじゃあ中抜き山行だねと二人で大笑いしてしまう。決して自嘲しているわけではないが、この中抜き山行という言葉がえらく気に入ってしまった。

中身の餡子は沢からたどり、きっちりと落とし前をつけるつもりだ。また沢プランが増えたと喜びながら車に戻り、雪の広場の真ん中に銀マットをしいてピクニック。遅い昼食の特製カレーうどんで温まり、つぎなる目的地の津軽半島へ向け雪の八甲田をあとにした。

 

 

コースタイム:記録せず