ブナの沢旅ブナの沢旅
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2009.11.07
大川男女川
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2009年11月7-8日

 

すこし忙しくしている間に沢シーズンも終盤をむかえている。先週は寒波で山は雪。このままでは、大切な人にさよならを言わずに別れてしまうようで落ち着かない。そこで紅葉には少し遅かったのだが、今年の遠出の沢収めに南会津のナメ沢、男女川(なめかわ)に行ってきた。幸いにも2日とも晴れてとても暖かく、1ヶ月ほど季節をさかのぼったような穏やかな沢旅となった。

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朝一番の東武線~会津野岩鉄道で塔のへつり駅へ向かう。弥五島駅から歩くつもりだったが、昭文社の登山地図では塔のへつりから男女川林道へ続く道が表記されていたため、ショートカットできると思ったのが間違いだった。

ひなびた風情の野岩鉄道沿線には不釣合いなほど賑やかな観光地となっている塔のへつりに驚きながらうろつくが、どうもおかしい。店の人に尋ねると昔は道があったけれど今は抜けられないといわれガックリ。まあ、こんなことでもない限り塔のへつりには来ないのだから、いい社会見学になったと思うことにする。

弥五島方面へ戻り水門集落を通って男女川林道へ。途中小さな神社を通り緩やかに登っていくと右手が広場になっていて奥に道が続いている。このあたりから地図にはない林道があるらしいので注意しながら歩くと、ナメのきれいな枝沢を横切るところに出た。古い記録ではこのあたりから入渓しているようだ。

林道から枝沢に下りる踏み跡をたどると広場から分岐していた林道に降り立った。これが地図にない新しい林道で、沢を横切り本流の左岸沿いに続く。真っ青な青空と紅葉の名残がマッチしてとてもきれいだ。しばらく歩くと沢を横断するようになったので、ここで沢靴に履き替える。

右岸沿いの林道をさらに進むと再び正面に沢が横切る。眼下には幅広の2条5m滝が落ちている。左岸沿いに続く林道を行くと二つ目の堰堤があらわれ、踏み跡をたどって堰堤を越えると、入渓予定地の550m二俣手前だった。

淡い紅葉に彩られた広い川原はとても気持ちがいいところで、わざわざやってきた甲斐があったなあと、しみじみする。もともと短い沢を泊りで歩くので急ぐことはない。ちょうど昼時なので大休止とし、sugiさんがお手製ベーコンたっぷりの中華そばを作ってくれた。

沢の水が陽の光でキラキラ輝き、色づいた葉がひらひらと舞い踊っている。なんの変哲もない川原なのだけれど、ここにいるだけで幸せな気分になれてしまうなんて、我ながら得な性格だと思う。

しばらく苔むした庭園風のゴーロを歩くと、沢床が舗装道路のようなナメとなる。落ち葉が敷き詰められたナメ床を全身脱力しながら歩くことの心地よさ。滑らないし甌穴のような落とし穴もないので、目をつむっても歩けるほどだ。ヒタヒタ、ヒタ・・・ニッコリ。

ところどころあらわれるゴーロや倒木はそそくさと通過したり小さく巻いたりして記憶から追い払う。700m付近からはナメの合間に小滝があらわれるようになり、快適に越えていく。2条5m滝は水流左をフリクションで登る。美しい富士形の滝は左を小さく巻いた。ア

スファルトのようなナメ床がごつごつした石を敷き詰めたような沢床に変わり興味深い。トイ状に水流がある幅広5m滝を越え、緊張するようなところもなく楽しく進んでいくと、意外と早くに右岸にナメ滝を落とす枝沢が合わさる890mの二俣についた。

この先は傾斜を強めてテンバはなさそうなので、二俣から少し戻った右岸の小さな台地にテントを張ることにした。枯木も十分に集まり、こんなに盛大な焚火は初めてというくらいに火をおこすことができた。

今年は北海道の沢へ行ったり、念願の丸山岳に2回登ったりと、3年目の飛躍ができたと自分たちの足跡をたどる。そして来年はもう少し長い沢旅をしようと決意表明。暗闇の中で燃え盛る焚火は見飽きることがない。見上げれば満天の星空だ。すてきな沢納めができたことに満足しながらシュラフにもぐり込んだ。

朝起きると残り火がくすぶっていた。枝をくべてささやかな暖をとる。二岐山に登れるかもという淡い期待を抱いて早く出発するつもりが、7時を過ぎてしまう。

二俣を右へすすむと12m大滝が見えてきた。左から滝の落ち口に斜上する岩の切れ込みに沿って登る。滝上は再びナメとなり、右手からスダレ滝を落とす枝沢を越えて進むと1050mの二俣となる。本流は右だが、ここは左へ進み1200mの鞍部をめざす。

すぐに7x7mの二段ナメ滝があらわれる。問題は二段目。両側はツルツルで巻きはいやらしそう。ナメ滝は傾斜はあるが、よく見ると細かいホールドがたくさんある。そこで空身でロープを引いて登ることにした。少し緊張した分ちょっとした達成感を味わうことができ、ナメ沢歩きのスパイスに。

しだいに水流も細くなり、最後の二俣を左へすすむと水が涸れ窪地となる。最後は少し薄い笹薮をかきわけて、すっきりとした稜線へ。正面には二岐山がどっしりと大きい。あまりにも気持ちがいいところなので、陽だまりハイキングよろしく牛乳でココアを沸かし、おやつを食べながらのんびり休憩。

鞍部へ戻って適当に笹薮を下っていくとすぐに窪が小沢となり、あとは淡々と荒れ気味の沢を下ると1時間ほどで橋が見えてきた。林道に上がって靴を履き替え、時間があるので近くの御鍋神社に立ち寄ってみることにした。

手作り風の素朴な鳥居をくぐって坂道を下っていくと川が流れている平坦地となり、小さな神社の正面に大きな鉄鍋が吊り鐘のように掛けられていた。御鍋神社という名前からして、この大鍋にいわれがあるらしい。

戦いに敗れ奥州清原氏を頼って逃げてきた平氏の一族がこの地に住み着き、再起を祈願して建てた神社とのこと。よくある落人伝説などとは言わず、なるほどと頷く。

神社の前には「日本の巨木100選」に認定された2本のサワラの巨木が天に向かってまっすぐ伸びている。不敬罪かなといいながら木に登り、記念写真をとってから林道へもどった。

岸壁の発達した二俣川を見下ろしながら1時間ほどで二岐温泉に到着。タクシーを待つ間に温泉につかり、湯ノ上温泉駅を経由して長い帰路についた。

7日 塔のへつり駅10:20(弥五島方向へ戻る)-機世橋10:50-林道本流横断点11:45/12:00-550m二俣12:20/13:05-870m二俣手前テンバ15:30

8日 テンバ7:10-稜線9:40/10:20-二俣川林道11:20/11:40-御鍋神社11:50/12:10-二岐温泉13:00

写真集(編集中)

(注記)地図では阿賀川(大川)表記となっているので河川事務所に問い合わせたところ、阿賀川は河川法で定められた一級河川の法的名称であるが、地元では古くから大川として親しまれてきたという文化的背景があるのであえて否定せずとの回答。というわけで、沢登りの記録としては大川と表記しました。