ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2009.10.16
登川米子沢
カテゴリー:

2009年10月16日

 

自分の力による自分のための米子沢。3年前のちょうど今頃、コースを熟知したリーダーの若者パーティーに紛れ込ませてもらい、ノーロープでスピーディーな遡行をしたのだが、あいにくの天候とテンポが早く、ただついて行くだけの余裕のなさ。

その時は、いつか自分のペースで天気のいいときに再訪できるようになりたいと願ったのだった。そしてその願いをようやく実現することができた。

=======================

前夜、大宮駅に集合しレンタカーで清水の桜橋駐車場へ向かう。駐車場にはすでに何台か車がとまっていた。出発が遅かったので仮眠は3時間と、中高年には少しつらい。翌朝軽く朝食をとっていると、すでに2組のハイカーが出発していった。平日なのに、さすが紅葉の百名山。

6時半に出発し、しばらく沢にそった林道を歩き、二つ目の分岐から沢に下りるとすぐ先に、真ん中が開いた大きな堰堤をくぐる。30分ほど涸れたゴーロの川原を歩くとようやく水が出てきたので沢仕度をする。晴れているが、まだ日が当たらない。

ここでちょっとしたハプニング。緊張もなく気楽に歩きすぎたためか、大きな浮石に足をすくわれて転倒してしまったのだ。下あごと下唇の内側を強く打って派手に出血し、あせってしまう。手当てをしてしばらく休むと落ち着いてきたので遡行をつづけるが、やはり気持ちが動揺している。

2条5m滝を越えて緩やかな傾斜の岩盤を進むと右岸でナメ沢が合流する。ナメ沢も上流部が快適なスラブ帯から草原にぬける楽しい枝沢のようで、遡行記録もいくつか見受けられる。米子沢を何度も登った人にお勧めのバリエーションらしい。前方に登れそうにないトイ状滝が見えたと思ったら右岸に赤テープがぶら下がっており、巻き道の入り口を示していた。

当初はトイ状滝だけを巻き、その後に続く連瀑帯はそれほど難しくないようなので沢沿いに進む予定だったが、怪我をして気持ちがなえてしまい、おとなしく高巻くことにした。巻き道は前回よりもすっきりと仮払いされており、途中から沢に下りる踏跡があったので、少し手前で沢にもどった。

連瀑帯最後の滝の前だった。簡単に越えるとすぐに再び緩やかなナメ床となり快適に歩いていく。10mほどの見栄えのする滝が続くが、どれも難しいことはなく気持ちよく登れる。

左岸から栂ノ沢が出合うころからようやく沢に日がさし始め、明るくなって、怪我の動揺も薄らいでいった。今回は軽い裂傷ですんだが、打ち所が悪ければ歯が折れたりの大怪我になったかもしれず、油断は大敵と自らを戒める。

両岸の紅葉が日に照らされて鮮やかさを増し、空はますます青さを増している。3年前の挽回ができ、最高のセッティングだ。12mスダレ条横向きの滝と、その上のツバメ岩が青空と紅葉を背景に美しく凛々しい。このあたりから先は両岸が切り立ち、沢は左へ曲がってゴルジュ帯へと導かれる。

入り口の6m滝を右から登ると、テラスからさらに上に巻き道がついている。ここが要注意の巻き道のようだ。上がりすぎてはいけないと、いったん下りかけたところで単独の男性が追いついてきて、そのままゴルジュに入っていった。

私たちも水線通しで進みたかったけれど、一箇所右岸のバンドからトラバース気味に1mほど降りるところでホールドがないため勇気がなく断念。再び巻き道にもどって上がり過ぎないよう気をつけながら進むと窪があり、そこを偵察気味に下ったところ残置シュリンゲが。

これで懸垂しようとするとさらに近くに2本残置があったので、みんな同じ行動パターンなんだなと妙に安心する。途中のバンドまでクライムダウンすればあとは沢床まで2mほどで容易に降りることができた。ほっ。

ゴルジュ内の滝はおおむね右壁から越えられる。奥のトイ条滝はツッパリで登れるようだけれど、そんな気にはなれず右から簡単に巻く。ゴルジュ出口の10mも一見恐ろしげだが右が階段状だ。

すぐに前方に2段12m滝が見えてくる。一見登れそうに見えないが、2段目の水流左に古いシュリンゲがぶら下がっている。左の泥壁から巻くこともできそうだが、残置シュリンゲに長めのシュリンゲをかけて確保し、バンドを右へ斜上して抜けることができた。緊張しただけに、ちょっとした達成感。

さあ、ここからが米子沢のハイライトの始まりだ。数百メートルにもおよぶ大ナメ帯。初対面ではないけれど、歓声を上げて大感激。しばしたたずみ、この壮大かつ優美なナメにどっぷり浸る。はるか前にいる単独の男性もたたずんでいるようで動かない。

時間よ~止まれ~いまは~出会いのままで~と、矢沢永吉のメロディーが頭をめぐる。初めてのsugiさんも感動しっぱなしだ。米子沢に変えてよかったねと、ニコニコ顔がとまらない。

ナメが終わったあとは、こんなにたくさん滝があったかと思うほどに次々と小滝を越え二俣となる。右は巻機山へ突き上げるが進入禁止のロープが張られている。

沢でロープが張ってあるなんて、よほどのことだ。ルールを守って今回も左へ進む。しだいに小川の風情となり、斜面には草原が広がるようになる。最後は窪をあがると木道となり、避難小屋に導かれた。
途中怪我もあり、時間がかかったけれど、とくに問題もなく遡行できてとてもうれしかった。大げさだと思われるかもしれないが、米子沢は私にとって里程標の一つだった。

巻機山は前回登っているし時間も気になるのでパスしたが、山を眺めながらお茶をわかし、しばしくつろぐ。下山路も紅葉のパノラマロード。ヌクビ沢が一直線に稜線に突き上げていてそそられる。

1200m圏まで下ると右手は二次林ながらとても端正で美しいブナ林がひろがっている。5合目からは多くの滝を連ねた米子沢が俯瞰できる。あんなに急な谷を登ってきたのだね。こうして飽きることなく快適な尾根を下って駐車場にもどった。

翌日は小楢俣川の洗ノ沢へ入るので水上へもどり、前回行ってとても気に入った仏岩ポケットパーク手前の鈴森の湯へ。平日のせいか貸切状態の温泉につかり、そこで食事も済ませて、水上の定宿である道の駅水紀行館へと向かった。

桜坂駐車場6:30-二俣13:00-巻機山避難小屋13:30/14:10-五合目15:55-桜坂駐車場16:45