ブナの沢旅ブナの沢旅
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2009.10.12
三国川芋川ジロト沢左俣
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2009年10月12日

 

 

芋川ジロト沢。このいかにも芋っぽい名前の沢の存在を知ったのは随分前のことだが、自分には関係のないクロウト好みの沢だと思っていた。その後少し経験をつみ、スラブ登りに色気を示した目で改めてジロト沢の遡行記録を読んでみると、ルートの中には最初イメージしていたほど難しくなく面白いらしいという印象に。

今年の5月、samさんからジロトの布晒ノ滝を見物に行こうというプランが出てきた。そのときはまだ早すぎると思ったが9月にゼニイレ沢で快適なスラブデビューをはたして気を良くしたこともあり、再度の計画オファーにいよいよ乗ってみることにしたのだった。

前日、砂防工事が行われている林道終点手前で幕営。4時半起床の予定だったがなかなか起きられずぐずぐずしていると、5時過ぎにsamさんが昨日収穫したクリタケ、キクラゲ、ヤマブシタケがたっぷり入ったうどん鍋を作ってくれた。とくにキクラゲとヤマブシタケは絶品の味でほっぺたが落ちそうなほどおいしく、たちまち元気を取りもどす。

青空が広がり、ようやく遡行意欲が湧いてきた。工事中のために作られた迂回路を通リ、沢沿いの踏跡をたどる。ジロト沢と滝沢出合いを見下ろすと、かなり水量が多く不安になる。スラブが濡れていたらイヤだな・・・何度か渡渉しながらしばらく進み、適当なところで沢に下りて入渓する。

ジロト沢は、行く先にあのスラブの一大伽藍が待ち受けているなど到底想像がつかない、しっとりとした箱庭風の小沢だ。右岸から入る越路沢を分け、小滝を越えるときれいなナメ床となる。

手前で休憩すると目の前にたくさんミズがはえており、小さな実が食べられることを教えてもらう。快適にナメを越えると2段10mトイ状滝があらわれ、左壁から突破して進むと右手前方にスラブ帯が見え始める。

A、Bルンゼを確認し、6m滝を左手から高巻くと、うわっっ、すげーという声がする。いよいよ右またの布晒ノ滝が姿をあらわしたのだ。その圧倒的な全容にしばし呆然とたたずむ。

この滝を攻略しようとしている人たちがいるらしい。この滝を見るだけでもここまで来た甲斐があるほどの素晴らしさ!ここが越後の里山なんて・・・

さて、私たちが進むのは一見ぱっとしない左俣。すぐに視界が開け、目指す大滝がどーんと目の前にあらわれる。上部は陽に照らされているが、ほとんどが日陰で湿っている。

記録の多くでは最初は取り付けないので右壁から上がり、それからは傾斜が緩いスラブを快適に登れると書いてあったが、とてもそんな雰囲気ではない。右壁の草つきを恐る恐る登ってスラブのテラスでクライミングシューズに履き替える。

すべてsamさんがロープを引いて先行し、1ピッチ目は30mロープをつないで右側の乾いたスラブを直上。ここは乾いた岩で快適だったが、2-3ピッチ目はいやらしかった。確かに傾斜はそれほどきつくないのだが、濡れていて滑りそう。何しろ少しでも滑ればただではすまないはずだ。

岩が湿っているので再び沢靴に履き替える。最後4ピッチ目は右上の潅木をめざし、少し巻き気味に落ち口に下りた。ふうっー。これで100m大滝を登りきったわけだ。

滝上は再び落ち着いた渓相の沢となり、ゴルジュの中に小滝がつづく。右に曲がる沢を進むと登れない6m滝となり、右側の垂壁を登るとそこは小尾根だった。

略奪点が目の前だ。自然の妙に感嘆せずにいられない。目の前の80m滝の水流が尾根によって二分され、半分以上が尾根の反対側のインゼルルンゼに流れ落ちているのだ。奪われた水流・・・すぐに略奪愛を連想したためか略奪点という響きにみょうにロマンを感じていたのだが、実際にこの目で見ることができとても幸せ。80m滝は一見威圧的だが、階段状で傾斜も緩く2ピッチで快適に登ることができた。

滝上から臨んだスラブの大伽藍は素晴らしく、ジロトのルンゼをほとんどすべて見渡すことができる。つづく20m滝は左の潅木に入って登り、上部で滝に戻って落ち口へ抜けた。

再び樹林帯の小沢となり、小滝がつづく。前方が開けて稜線が近くなってきたところで尾根に抜けることにした。急斜面の草つきをひと登りするとスラブとなって尾根に上がり、少しの藪こぎで展望台と呼ばれる露岩の小ピークにでた。

360度の素晴らしい展望と、何とかやり遂げたという達成感をメンバーで分かち合い、喜び合ってウルウルしてしまう。ジロトのスラブ帯を背に、ネコブ山がどっしりとした山容を見せている。

いつか残雪期に歩いてみたいなあ。ジロトの頭の先には大兜山の兜のような頭が見える。大兜山は越後100山に選ばれており、藪をこいで登頂した記録や積雪期の縦走記録もある、知る人ぞ知る山のようだ。

のんびり日向ぼっこの休憩をしながら山座同定を楽しんだ後は、雨量計小屋までの藪こぎだ。ところどころ踏み跡がある藪尾根を30分ほどで小屋についた。ここからは刈払いの行き届いた不思議なほど立派な道となる。

あたり一帯は樹肌が白い美しいブナの森。すてきなフィナーレだった。重松越路からは急な小道をロープにつかまりながら下って林道終点までもどった。

大滝を登り終えた時、やっぱり自分にはスラブなんて無理だな、これでもういいやという気持ちがよぎった。けれど展望台の小ピークに腰をおろし、さえぎるものがなにもない大自然に身をゆだねていると、来年はBルンゼに行こう!という声が聞こえてきた。そしてまた来たいなと思った。そんな不思議な魅力をもったジロト沢に会わせてくれて、ありがとう。

 

ジロト1 ジロト2

林道終点7:10-入渓点7:35-二俣9:20/40-略奪点11:50-展望台尾根13:00/40-雨量計小屋14:13/20-林道終点16:00