ブナの沢旅ブナの沢旅
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2009.09.05
湯檜曽川ゼニイレ沢
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2009年9月5日

 

記録では、沢慣れていれば簡単で楽しいらしが、少なくともスラブの部分はノーロープを信条としていたので、気持ちは微妙だった。今なら大丈夫という期待感と、怖くてロープに頼りっぱなしだったらどうしようという不安の狭間で気持ちが揺れ動いていた。だから、これは私のテスト山行みたいなもの。そんな気持ちのあらわれか、取り付きまでの道中、楽しみだといったり、怖かったら振り出しに戻って顔を洗って出直しだなーと、一人でハイテンション。さて、結果は・・・

上毛高原駅でkukenさんに拾ってもらい、土合橋駐車場へむかう。車中話をするなかで、彼が大昔に沢の老舗の会に所属していたことを知り、話が盛り上がる。バイクで一足先に到着していたsamさんを拾って林道奥へ入る。小一時間ほど歩いてガレ石が山積するゼニイレ沢出合いの川原に到着。

沢装備をつけてガレのゴーロを進む。最初の二俣を過ぎるまでの我慢と思っていたが、二俣を過ぎてもいっこうにナメがあらわれない。日差しは強く、暑さで早くもバテはじめる。ときどき立ち止まって振り返ると見える一ノ倉沢の雄大な眺めに慰められる。思わず、後ろ向いて歩こうかななどと軽口。

歩き始めて50分ほどでようやく前方にナメが見えてきた。いよいよだな、と思う。傾斜は緩く好きなところを歩いていける。遡行図ではナメとか小滝が書いてあるが、私にはあまり区別がつかないし、その必要もないように思った。

真っ青な青空の下で、頭上はるか稜線近くまでスラブが続いている。振り返れば一ノ倉沢の展望もより大きく鮮明に。ブナの森を流れるナメ沢をヒタヒタ歩く心地よさとは違う爽快感を全身に感じる。

しばらく進んで傾斜が少し増して来たところでリーダーはロープを出すという。スラブは支点がとぼしいので、万が一にそなえロープは50と40メートルの二本を用意。最初は様子がわからないので私もタイブロックでロープをつないで登り始めた。

けれど、乾いたスラブはフリクションもよく不安を感じなかったので、2ピッチ目からはフリーで登った。傾斜が強いところや滝が出てくるが、ホールド、スタンスともに豊富だ。所々傾斜が緩んで一息つける場所もある。

最初の不安はどこかに吹き飛んでしまい、爽快感にひたりながら無心に登った。はるか眼下には出合の川原が見渡せる。確かに一直線のコースだ。記録の多くには、快適だけれど滑ると一直線に下まで落ちてしまうようなことが書いてあったが、こうして乾いた岩を実際に登ってみると滑る不安はなく、滑っても途中にいくつかあるバンドで止まると思った。快適なのは適度の緊張感を強いるからだろう。

登るにつれスラブの幅は狭まり草つきとなる。前方には稜線が近い。左手には円形劇場のように、美しい草つきスラブが広がっている。けれど快適なスラブ登りはそろそろ終わりらしい。さらに進むと正面の頭上に奥壁が見えてきた。

草に覆われた三俣の真ん中のルートを進むと、いよいよ前方に奥壁が立ちふさがる。かなり手ごわそうだ。右手の谷筋に目がいったが、リーダーは迷うことなく正面右手の急な草つきバンドを斜上し始めた。タイブロックで後に続くが、草の急斜面は下に足がかりがなく、何度か登っては滑り落ちているうちに腕がパンプしてしまう。

そうこうしている間にkukenさんが少し下がったところのリッジからトライしたところ、こちらの方が登りやすく事なきをえた。やっとの思いで藪を抜けるとふたたび快適な岩場となり、ペタペタ登って少し笹をこぐと、虎ロープのかかっている岩場の登山道にでた。ふうっー。なんだかんだと1時間半ほども悪戦苦闘してしまったけれど、それもこれも全部ひっくるめて面白かった。

せっかくだから白毛門の頂上まで行こうというリーダーの提案は、2対1で却下。男性陣は靴を履き替えないので、あっという間に下山準備完了。そこで二人には先に下山してもらう。白毛門の登山道はいつも下りにしか使わないのだけれど、何度歩いても苦手で嫌いな道だ。最後にブナ林となってようやくひと心地つき、湯檜曽川の橋を渡るところで、川原でキャンプをしている男性に目がとまった。

お目にかかったことはないのだけれど、写真で見覚えがあったので思い切って声をかけると間違いなかった。翌日遡行する西黒沢本谷を知るきっかけとなった記録を書いた方だった。いきなり声をかけられて戸惑った様子だったが、kukenさんを知っているというので、おせっかいにも彼を呼んで再会の橋渡し。迷惑でなければよかったけれど・・・こんな具合に翌日の西黒沢本谷がつながったのだった。

 

 

 

 

土合橋登山口8:30-ゼニイレ沢出合9:15-奥壁下12:55-登山道14:30-白毛門登山口16:20