ブナの沢旅ブナの沢旅
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2009.09.19
宝川ナルミズ沢
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2009年9月19-20日
東京駅でsumireさんと待ち合わせて始発の新幹線で水上へ向かう。5連休の初日だけあってめずらしく始発からほぼ満席状態だ。長野県の伊那から参加のmayumiさんは待ち合わせ場所の水上駅で泊って待っていたが、駅員さんに駅泊はできないと釘を刺されつつも、お目こぼしをしてもらったとのこと。

久しぶりの再開に話を弾ませながら、タクシーで宝川温泉奥の林道ゲートまで入ってもらう。6、7人の若者パーティが出発したところだった。共同装備をわけ、ゆっくりと歩きだす。ここは2年前、sumireさんと東黒沢を遡行した帰りに通った道でなつかしい。のんびり2時間ほどかけてナルミズ沢渡渉点へ。2年前の秋に渡渉中に流されるという死亡事故が起きている場所だ。

mayumiさんはベテラン山やのだんな様から、増水していたら遡行は中止するよう言われてきたらしいが、問題なさそうだった。早くも昼食の大休憩を取り、ガスを出してうどんを煮込む、この余裕が心地よい。沢靴の話になった時、私は最近めんどくさいので靴を洗わずにそのままの状態で次の沢に行ってしまうと言ったら、すぐに二人からそれは沢やのやることだと、いいような悪いような反応が返ってきた。けれど、その言葉、すごっく嬉しかったのでした。

沢支度をすませ、沢を渡って広河原へ続く登山道をすすむ。ナルミズ沢の計画が最初にあがったのは最初に入った山の会で5年前のこと。沢登りは2回しか経験がなかったけれど、初めて丹沢以外のきれいな沢にいけると楽しみにしていたところ、天候不順で中止に。

その後沢の会に入ってからも何度かチャンスはあったのに実現せず、最後は一昨年三人で計画したものの当時新婚ホヤホヤのmayumiさんのだんな様からお許しがでなかったという、いわくつきのナルミズ沢なのだった。

最初はゴーロの河原歩きだが、すぐに奥に7m滝をかけた小ゴルジュとなる。左岸の良く踏まれた巻き道をたどって滝上へ。コバルトブルーの深い淵や小滝、ナメが続くようになる。すっきりと晴れていればもっときれいなのだろうと、すこし残念。悪いところは皆無といってよく、少し首をかしげるようなところには必ず巻き道がある。

大石沢出合手前で釣りをしている先行の若者パーティに挨拶をして先へすすむ。正面には端正なピラミダルな姿の烏帽子山が頭をのぞかせている。両岸は開けた草地の斜面で、上部は所どころスラブ壁となっている。大岩の小滝をいくつか乗り越していくと沢幅がしだいに狭まり、ふたたび深い淵の小ゴルジュとなる。左岸から巻くが、途中からは湿地の泥道となって足首まで泥に埋まってしまう。

ヤレヤレと、沢に戻ってしばらく進むと前方に顕著な滝が見えてきた。魚止め滝に違いない。思わず、えっ、もう?いつもはコースタイムをオーバーするのが当たり前なのだが、さすがナルミズ沢。のんびり歩いたつもりでも、意外とペースは順調だ。

近づけばルートは一目瞭然。巻き道もあったが、このくらいは登らなければと、階段状になっている右壁に取り付く。下は問題なかったが、上部がやや立っていてスタンスに乏しく少し緊張して抜けた。ここは全員がフリーで登った。

ここからはテンバを探しながらの遡行となる。ちょうど予定していた二俣手前に一段高くなった広い河原の平地があったので、ここで行動を終えることにした。さらに整地を行ってテントを張った後、三人で手分けをして焚き火用の枯れ枝を捜しに出るが、このあたりは草地で流木がほとんどない。かろうじて集めた小枝で火をおこし、くつろぎの黄昏へ。自然と、会に所属していたときの思い出話に花がさく。

mayumiさんとは入会した年の夏合宿で3人の若者らに連れられて北アルプスの打込谷へ。増水で金木戸川の渡渉を断念するパーティが続出する中、わがパーティは果敢に突破したのだっけ。

途中で流されそうになったり雨に降られてツェルトの中が水浸しになったり。あのときの体験が〔少し大げさにいうと〕トラウマとなり、以来ツェルトは使ったことがない。

sumireさんとは秋の集中で恋ノ又川へ。初めての焚き火おこしに挑戦し、なかなか火がつかずメタを1箱使ってしまったとか、翌日は1日遅れで出発したベテランパーティに追い抜かれ、なに〔モタモタというニュアンスで〕してるのと言われてしまったとかで大笑い。

ちなみに、恋ノ又では当時はまだ新潟の名だたる山岳会Rに所属していたsamさんとすれ違っていたことが判明。その後本人がいうに首になったらしいが、私も自分で自分を首にしてやめたようなもの。越後倶楽部ははみ出し者が似合うのかもしれないなどと少し脱線してしまったが、こうして楽しく1日目を終えることができた。

ナルミズ沢1 ナルミズ沢2

ナルミズ沢3 ナルミズ沢4

4時半に起床。天気予報に反して朝からどんよりとした空模様だ。雑炊で軽く朝食をすませる。沢の水はそのまま飲む気がしないので、沸かしてお茶にしたものを各自1リットルずつ確保して出発する。

昨日よりは傾斜が出てきたナメを進むとすぐに二俣となる。草原の詰めを期待して右俣へ入ると右岸の台地に格好のテンバがあらわれた。昨日のテンバも良かったけれど、こちらの方が展望が良さそうだ。また来ることがあれば、そのときはここに泊りたいと思いながら先へ進む。

はるか先までつづく一筋の道のようなナメをヒタヒタと歩くのはとても気持ちがいい。2段5m滝は左側から簡単に越えられる。連続するトイ状小滝は取り付きまでが深そうなので右岸を小さく巻き、つづく小滝、ナメ滝をすべて簡単に越えていくと草原状の奥の二俣へ。

空はガスっているが草紅葉が始まって美しく、とても心安らぐ光景だ。稜線のコルを目指して左へ進むとしだいに水も涸れ、登山道のような踏み跡に導かれる。

しだいに笹薮となり踏み跡も不明瞭となるが、問題となるほどではない。ほどなくして稜線に出たが、視界が悪いためか、いまひとつ感動がわかない。sumireさんに写真を撮ってもらい、ジャンクションピークへ向け緩やかな斜面の笹薮を登っていくと、光が差してきた。

振り返ると急速にガスが消え始めており、背景の稜線が突然のように姿を見せ始めているではないか。思わず歓声をあげ、二人にも知らせるが、あっという間にふたたび霧のベールに包まれてしまった。

風も強くなり、ジャンクションピークまでは小さなアップダウンを繰り返しながらの急登で、かなり体力を消耗する。メンバーの状態を考えると白毛門コースの下山は厳しそうなので、ジャンクションピークからは代替案として考えてきた清水峠経由で謙信尾根を下ることに決めた。

もう下るだけだよと励ましあい、登山靴に履き替えてどんどん下っていくと青空に。うれしくて、みんなできゃあきゃあ言いながら素晴らしい展望の稜線漫歩を楽しむことができ、ほんとうに良かった。見渡した朝日岳の稜線はその後もずっとガスの中だったのだから。

赤い三角屋根の建物がシンボルのような清水峠は何本もの縦走路が交差する、広々とした開放的な空間だ。蓬峠方面からやってきた4人パーティはここでテントを張っていた。私もいつか谷川馬蹄形の縦走路を歩いてみたいと思っているのだが、もっと体力がないと厳しいだろうなと思った。

携帯がつながったので、白崩避難小屋の前で休憩している間に六日町のタクシー会社に予約を入れる。これで一安心だ。謙信尾根は以前から歩いてみたいと思っていたコースだったので、ちょうどよかった。途中にすてきなブナ林があるということを知っていたからだ。

尾根を下ったところの登川を沢靴に履き替えて渡渉し、ペンキ印にそって進むとすぐに登山道入り口へ。ここからはとても立派な林道を淡々と歩いてタクシーの待つゲート前へたどり着いた。

越後湯沢駅へ向かい、電車の時間を確認してから駅構内にある温泉で汗を流してすっきり、さっぱり。最後は一緒にお蕎麦をたべながら次回は南・中央アルプスの沢を企画しようと約束して、私とsumireさんは新幹線、土合山の家に泊るmayumiさんは上越線のホームへ向かった。

ナルミズ沢5 ナルミズ沢6

ナルミズ沢8 ナルミズ沢7

19日 林道ゲート9:15-渡渉点11:15/12:20-ウツボギ沢出合12:35-大石沢出合13:40-1390mテンバ15:00

19 日 テンバ6:40-二俣7:00-奥の二俣8:10-稜線8:30-ジャンクションピーク10:15/40-清水峠12:15/40-登川渡渉点14:35/50-林道ゲート15:45

写真集(編集中)