ブナの沢旅ブナの沢旅
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2009.09.06
湯檜曽川西黒沢本谷
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2009年9月6日

 

 前日ゼニイレ沢を遡行後、夜土合駅につく仲間を迎えに行く。待合室には先客がいたが、同席させてもらう。いかにもベテラン山や風情で、話をすると横浜の巨大山岳会のリーダーとか。samさんのネット山岳会に共通の知り合いがいることがわかり、話を弾ませていた。待っている間、急遽西黒沢に同行することになったsamさんとkukenさんに(こうなることを想定して準備してきた)遡行図のコピーをわたして軽くブリーフィング。

八時過ぎにsugiさんが到着し、ロープーウェイ駅に移動して仮眠する。翌日は6時に出発予定だったが、朝外に出てみると予想外の雨。士気が下がってしまうが、コーヒーを沸かしながらしばらく様子を眺めていると雨がやんだので30分遅れで出発する。

しばらく沢沿いの林道を登っていくと頭上でロープーウェイが動き出した。なるほど、こういう状況だから西黒沢が登られないのかなと思う。けれどそれはほんの少しの間だけで、すぐに見えなくなった。

田尻沢出合の橋で沢装備をつけ沢に下りるが、最初はさえないゴーロの川原歩きだ。こういうところはさっさと通り過ぎたいので、おのずと早足になる。しばらくするとナメがあらわ、ようやく沢登りらしくなってきた。ゴーロとナメ小滝を繰り返しながら意外と早くザンゲ沢出合へ到着。

さあ、いよいよこれからが西黒沢の本番です。晴れていれば出合から一直線に突き上げるザンゲ沢源頭にザンゲ岩が見えるらしいが、ガスで見渡すことができない。ザンゲ沢を登った記録では、おおむねゴーロと小滝の急登が続くだけのようだ。

熊穴避難小屋に突き上げる枝沢を分け(昭文社の登山地図ではザンゲ沢手前の枝沢を熊穴沢と記述してある)、4mトイ状滝を簡単に越えると10m滝が前方に見えてきた。必要ならば自分がザイルを出そうと思っていた滝だが、近づいてみると右岸の水流脇が登れそうだったので全員フリーで登った。

途中に古い残置があリ、滝頭の壁にはいかにも確保用らしい新しいリングがあった。その後も7、5、7mと次々にナメ滝があらわれるが、すべて楽しく登れる。

つぎの10m滝は上部が逆相気味で登れない。どう巻こうかと左岸の斜面を目で追っている間にsamさんが左岸の草つき急斜面を小さく巻いて登っていった。もう少し戻ったルンゼから巻いたほうが簡単そうだったが、kukenさんもsamルートで登ってしまったので、わたしたちも同じルートで巻くことにした。

急斜面の草つきは滑りやすく大変だったが腕力でなんとか登り、滝の落ち口へのトラバースでお助けロープを出してもらった。前日これくらいの草つきが登れないと越後の沢に行けないといわれたが、その通りだと思う。まだまだ修行しなくちゃ。

ふたたびナメのようなゴーロのような小滝をこえていくと行く手が階段状の大岸壁となる。30m斜滝だ。わあ、さすが谷川の沢だなあーと、気持ちが弾む。谷は開けているので威圧的でなく開放感がある。しだいに青空も出てきて振り返るたびに展望が開けていく。

快適にぐいぐい登っていくが、最後は傾斜が立ってきたので右岸の潅木帯に入って巻き上がった。黒くぬめった2段15m前でしばし休憩。下段は大丈夫だが、上段が立っていて細かそうなので、samさんが途中からロープを投げ下ろした。

たしかに上段がいやらしく、ロープに甘えて最後はごぼうで登ってしまう。しっかり見られてしまい情けないが、途中に残置があったので、きっと一人だったら頑張って登れたはずと自分を慰めて先に進む。

3mのCS滝では少し怖くて大騒ぎしながら水流を直登し、さらにいくつか滝を越えると10m垂直の黒いチムニー滝があらわれた。どうもここが山人さんの記録から要注意だと思っていた二俣手前の滝のようだ。

正面の連瀑が本谷のような錯覚を覚えるが、地図を見ると本谷は左に曲がって出合っている。右岸は一面が草つきスラブとなっており、適当なところから取り付いて高巻けばいいらしい。ところが、ここでもsamさんはさっさと滝の右壁を登ってしまった。あんなところを登るなんてクレイジーだと、3人は素直に右岸のスラブに取り付き、適当なところまで登ってトラバース。

下で見るほど悪くなく、いたるところにトラバースできそうなバンドがあって問題なかった。まだ慣れていないので緊張感はあったが、この爽快感が癖になりそうな予感・・・正面のV字ルンゼに進んだsamさんには大声で本谷へ戻るように指示。

このあたりはリーダーシップを発揮できたかな。ちなみに、ザンゲ岩に突き上げるこのルンゼを「胸をときめかせて」遡行した篤志家の記録によると、すぐに水はなくなり、ガレた渓相になってザンゲ岩の左に突き上げた、そうです。

草つきスラブの高巻きで二俣上の滝をいくつか巻いたようだった。沢幅は狭まり、稜線も見通せるようになって遡行が終わりに近づいていることが感じられた。さらに10、8、8mナメ滝が続くが、核心部を越えた安堵感からか、おまけの滝を消化している感じだった。

階段のようなナメ滝の途中、あまりにも景色がよかったので昼食タイムをとる。天神平とその先に高倉山も見渡せるとても贅沢な絶景ランチだったが、ベンチが水流チョロチョロの岩だったので、ウォシュレットのようだとkukenさん。

最後の8m滝は水が涸れそうで黒光りしている。どちらからでも巻けそうだったが、右岸の草むらに人が入った形跡があったので、その跡を追うように高巻いていくと窪があらわれた。

しばらくは笹をかき分けながら窪を登り笹薮を漕いでいると、遠くで「大丈夫ですかー」という声が聞こえた。すぐに見通しのいい草原となり、前方の大岩に人が見える。あのあたりが登山道らしいと、ふたたび背丈を越える笹薮をトラバースして登山道に躍り出た。大勢の登山者が下っていて、めずらしそうに見ている人もいたが、私は嬉しくてしょうがなかったし、晴れがましい気持ちで一杯だった。

少し下ると天狗の庭と呼ばれる展望台のような大岩で、せっかくだからと登ってみる。すると泳いできた笹薮の斜面を一望に見渡すことができた。そうか、笹薮でごそごそしている姿がここから丸見えだったのだ。こっけいな姿だっただろうなあと、我ながら可笑しかった。
なんとまだ1時を回ったばかりだ。急いだわけでもないが、上出来のコースタイム。samさん達には先に下山してもらい、ブナの沢旅組はゆっくり休み、遡行してきた谷を見下ろしながらのんびりと別世界の天神平にもどった。時間も十分にあるので温泉へ立ち寄ることにしたが、昨日の湯テルメはものすごく混雑していたので、samさんお勧めの仏岩ポケットパーク手前の新しい温泉に案内してもらった。

7月にオープンしたての鈴森の湯は人も少なく広々としてとても快適だったが、車がないと不便なのが難点か。kukenさんに上毛高原駅まで送ってもらい、その2分後には新幹線に飛び乗った。

西黒沢はけっして美渓というわけではないが、これほどアプローチも下山もラクチンで、登れる滝の数々と開放的な草つきスラブが楽しめる、穴場的お勧めの沢です。

ロープーウェイ駅6:30-田尻沢出合7:00-ザンゲ沢出合8:00-二俣11:50-登山道13:00/13:30-天神平14:20