ブナの沢旅ブナの沢旅
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2009.06.15
摺上川烏川~滑谷沢右俣~栗子山~三本松沢左沢~滑谷沢左俣
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2009年6月15-16日

メンバー:ako、sugi

 

今年最初の沢旅に、福島と山形の県境にある栗子山に突き上げる滑谷沢を選んだ。沢歩きを始めてからは、いままで見ることがなかった景色や知ることがなかった歴史との出合を重ねてきたが、今回もすばらしいブナの森と近代史の興味深い一面に触れる機会を得ることができた。

前夜、福島駅からレンタカーで国道13号線から少し外れた大瀧集落跡へ向かう。廃屋が点在する不気味な静けさに覆われた道を進むと行き止まりとなったため、もどって国道の灯りが見える最初の橋の上にテントを張って仮眠。夜は暗くて見えなかったが、朝起きてみて意外な事実を知る。

万世大路の開通後生まれたこの宿場集落は国道13号線の開通で廃村に。けれど昔を懐かしむ観光客が後を絶たず、新たに大瀧宿の茶店としてしばらく営業していたとのこと。一時は観光地的な存在だった模様で、茶店や宿は今でも営業していそうなたたずまいで、それほど荒れてもいない。万世大路の歴史を解説した看板まであって非常に興味深い。幸先のいいスタートにワクワク。

東栗子トンネル手前に駐車してかつての万世大路へ。道はところどころ陥没しているので車では厳しそうだが、少し登ると平らな道となり山側には石垣も組まれていて、かつての大路の面影がしのばれる。そして二ツ小屋隧道へ。

二代目の昭和40年代に作られたトンネルはレトロな雰囲気をかもし出しており、タイムスリップしたような感覚にとらわれる。トンネル手前の苔むした石段を数段上がったところに石碑があり、よくみると明治14年の明治天皇巡幸の記念碑だった。万世に渡り大路として弥栄えるようにと命名したのだろう。

トンネルを抜けると、そこは静寂の世界だった。人知れずひっそりとたたずむ旧道を少し歩くと手すりのコンクリートが剥がれた烏川橋へ。この橋もいつか朽ち果てるのだろうかと思いながら踏み跡をたどって沢に下りると、橋脚は恐ろしく立派で、これならあと何十年も磐石だと思えた。

烏川は小川の風情で水がサラサラ流れている。ほんとに何もない川原歩きの小川なのだけれど、周りの森が美しく、新緑のもと、沢水が日の光に照らされてキラキラ光っている。なんと人を安らかな気持ちにしてくれる光景だろう!しばらく下っていくとあたりはブナの森となり、2時間ほどで滑谷沢出合へ。

ここからが滑谷沢の遡行となる。相変わらず穏やかな流れがつづいている。もともと歩く沢だと思ってきたので、滝がなくてもゴーロでも苦にならない。とにかく森がきれいなのです。

二俣手前の右岸には絶好の広いテンバがあった。二俣を確認したところで大休憩。沢旅で恒例となったソーメンタイム。心配していた虫もまったくいなくて快適だ。右俣に入ると最初は倒木がところどころ出てきて荒れた感じがしたが、すぐに沢登りらしい渓相となり、小滝やナメ滝があらわれ変化がでてきた。これまで見られなかった魚影もでてきた。

小滝はいずれも深くて大きな釜を持っており、水の青さが美しい。両岸は開けているので簡単に巻くことができるし、釣師がはいっているらしく踏み跡もしっかりしている。事前の予報に反して快晴といえるほどの好天で、ナメ沢は晴れていてこそきれいなのよねーと、満面の笑顔。あえて難点を言えば、岩がすべりやすく、簡単なナメ滝でも滑りそうで神経を使う。

途中素晴らしいナメの連瀑帯があらわれる。予想外だったので心躍る。でもとても直登できそうもなく、すべて巻いて全貌をみることができなかったのがちょっと残念。見上げれば、周りはすべてブナ、ブナ、ブナ。大木ではないが樹肌がとても白くすくっとまっすぐ伸びているのでとても美しい。

悪場がないので、いつもは予定時間をオーバーする我が弱小パーティもコースタイム通りだ。順調にテンバ予定地の奥の二俣へ。左沢に入った左岸の段丘に焚き火場があり、さらに一段奥にはブナの大木に囲まれた平地があった。1LDKの立派な物件だ。立地もこの上なし。

まずは焚き火を起こし、ビールを飲みながらくつろぐ。今シーズン初めての沢泊まりは、とてもいい感じでスタートできて満足、満足。日が長いのでいつまでたっても暗くならず、暗闇の焚き火を待てずに7時過ぎには就寝。

快適なテンバで熟睡できたおかげで、今までで一番早い3時半の起床。かなり気温も下がっているようで心なしか吐く息が白い。好天のきざしかな。冷たさに悲鳴を上げながら沢足袋をはき、今日も長い行程なので早立ちを心がける。

出発前にもう一度朝もやのブナ林を見渡して深呼吸し、いざ出発。少し進んで行くと両岸が段丘となり、美しいナメが広がっている。わっ~、きれいだねぇ~。朝からすてきなプレゼント。

ちょっとしたゴルジュで遊びながら楽しく遡行していくと沢が左にカーブし、もろそうな砂岩風の登れない滝に阻まれる。手前の泥壁から巻いて上がると再び穏やかな渓相となり、時々小滝をかけながらしだいに傾斜を増していく。1000m付近の二俣は南に直上する左沢を進むと、雪渓があらわれた。つぎの二俣を右に入り、そのあと細かく出てくる分岐はコンパスの南を確認しながら進む。

1150m付近で水が涸れ、窪地が壁に突き当たってあとは藪の緩やかな斜面をひたすら山頂へ。しだいに藪が濃くなり視界もないので茫漠とした広い山頂で一等三角点を見つけられるか不安だったが、明るい日の光とたくさんある時間に助けられ気持ちには余裕が。これはとても大切なことだ。

あたり一面が平らになったところで木登りして一番高そうな方向を確認して進むと、少し視界が開け藪が開けた場所が見えてきた。思わず、やったあーと歓喜。思ったより広い空間が切り開かれており、控えめでかわいらしい標識がつけられていた。

栗子山に到着だ。今回はとてもスムーズに山頂に到達できてとてもうれしかった。私たち上達したよねーと自画自賛。とは言うものの、いざというときはGPSというあんちょこもあったことは認めておこう。しっかり証拠写真を撮リ、山頂から南の尾根についている踏み跡をたどる。

上は笹で覆われて一見わかりにくいが足元は明瞭に踏んであり、途中からは赤テープもでてきた。ところどころ尾根を巻くところでは眺望も得られ気持ちがいい。吾妻連峰や残雪の飯豊連峰が彼方に聳えている。1202m手前の鞍部へ下るところは広い草原の台地で、点在する山ツツジがアクセントとなりすてきな広場となっている。

けれどここから先は尾根の踏み跡がなくなってしまい、再び藪をかき分けながら鞍部へ下る。急な斜面をずり落ちるように下るとすぐに窪があらわれ、ホッとした。

左沢は途中小滝がいくつかあるものの困難なことはなく、確かに下降に適した沢だ。けれど足元が滑りやすく疲れも出たせいか、何度もこけてしまう。やれやれと、ふと顔をあげあたりを見回すと、この沢も素晴らしいブナ林で覆われていた。足元ばかり見ていてはイカンね。

中沢と出合い、さらに下ると右沢と合流するあたりから沢幅が広がり、これまた極上のナメとなる。もう頬が緩みっぱなし・・・素晴らしいフィナーレだ。滑谷沢出合手前はゴルジュの滝となっていて、滑谷沢には裏見の滝がかかっている。

一見難しそうに見えたが、滝下の釜が見かけほど深くないことがわかり、釜におりてから裏見の滝をくぐって川原にでた。ちょうど正午なり。日のあたる気持ちのいい川原だったので、今度は滝を表から見ながら2度目のソーメンタイムとする。

帰路は右俣を遡上するのだが、一瞬勘違いをして下ってしまい引き返す。裏見の滝はもちろん登れず、右岸の土壁にかかっているトラロープを手がかりに強引に滝上に出る。あとは穏やかな流れを歩いていくだけ。

そろそろ小川風情にも飽きてくるころ、前方に大平橋が見えてきた。少し探すとしっかりした踏み跡が橋上の道に続いており、無事に遡行を終えることができた。不釣合いに立派な橋の先は、かつての万世大路も一筋の踏み跡に回帰している。なんだが、つわものどもが夢の跡の風情。

この先がどうなっているのか歩いてみたい。実際、愛好家もいるようで、この一筋の道をたどると県境尾根をくぐる栗子隧道が山形側に通じているが、トンネルは半ば崩壊して通行は危険らしい。靴を履き替え、ズシリと重くなったザックを背に淡々と長い旧道を歩き、別世界へといざなってくれたトンネルに別れを告げて下界に降り立った。

6月15日 旧道入口5:30-烏川橋6:30/50-滑谷沢出合9:15-二俣11:20/12:04-右俣-奥の二俣15:20

6月16日 テンバ5:30-栗子山8:35-1202m前鞍部9:40-三本松沢左沢下降-滑谷沢左俣12:00/12:50-大平橋13:55/14:20-旧道入口15:55

写真集(編集中)