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2009.05.18
ヒライデ沢~袈裟丸山
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2009年5月18日

 

初めて足尾山塊に足を踏み入れてきました。ヒライデ沢は昨年計画したのですが、悪天で中止となったため今年再び計画。アカヤシオの群生地を見に行こうと、最初にこの沢を教えてくれた沢の大先輩Sさんとの二人旅です。

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当初17日に予定していたが、悪天のため1日ずらすことにした。前夜浅草駅で待ち合わせ、特急「りょうもう」を相生駅まで乗り、最終のわたらせ渓谷線で沢入駅へ向かう。

初めてのわたらせ渓谷鉄道は、昔懐かしいこげ茶色の単車両。車内の超レトロな雰囲気に、まるでテーマパークに来たような感覚で大喜びしてしまう。運転手さんに、えっ、これから山に登るんですかーと驚かれながら沢入駅に降り立つと、ホームにはこれまたタイムスリップしたような待合室で、二人でしきりにいいねぇー。

駅舎は手作りの山小屋風ログハウスでとても快適な空間だ。のっけから観光気分ではしゃぎながらさっそくシュラフにもぐりこむと、待ってましたとばかり自動的に消灯となり、おやすみなさい~。

鳥のさえずりで目覚めると、窓から新緑が目に飛び込んできた。予想通り天気は上々だ。駅舎の横には水車が回り、あたりはきれいに手入れされている。6時半に予約したタクシーは足尾から来てもらうため、往復料金の定額設定になっているとのこと。

駅から折場登山口までは8400円。まあ、仕方ないけれど往復はきびしいので、帰りは直接駅に下るコースをとることにした。不要な荷物を駅舎にデポしてタクシーに乗り込む。

折場登山口までは、よく整備された林道を標高1200mほどまで登っていく。ここでタクシーを降り、少し下るとヒライデ沢入渓点の折場橋だ。連続する堰堤を右岸の明瞭な踏跡から越えると、さっそく4m、2条6m、6mトヨと小滝が続くが、ほぼ水鉛を簡単に越えることができる。この先も矢継ぎ早にナメやナメ小滝があらわれ快適だ。

しばらくすると両岸が開けた伐採跡地となり、斜面に笹原が広がる。青空に新緑が映え、沢はひらけて明るく気持ちがいい。Sさんはアカヤシオが見られないと、しきりに首をかしげている。そのうち出てきますよと、私は花がなくてもすでに満たされている。

この後もゴーロときどき小滝が続き、あっという間に二俣についてしまった。出合横の4m滝を左からこえると傾斜がゆるくなり、渓相は小川の風情となる。途中ナメ床が真っ赤なところがあった。銅山が近いことだし、地層が混じっているのかな。

2時間ほどの遡行ですでに源頭部の様相となり、左岸の枝沢や窪をつめればすぐに登山道に抜けられそうだ。少しあっけないので、もう少し進んで1655mのコルに抜ける枝沢へ。

明瞭な踏跡があり水も涸れかけている。登山靴に履きかえ笹原の斜面を緩やかに登っていくとすぐに登山道へ。ひょんなところから現われた私たちに、通りかかったハイカーが驚いたようだった。

せっかくだから前袈裟丸山まで登ってみることに。途中からは展望がひらけ赤城山が近い。見下ろす山々は新緑が鮮やかだ。彼方には男体山や残雪の日光白根が聳えてみえた。平日にもかかわらず何組ものハイカーと出会う。みなアカヤシオを狙って来ているのだろうか。その人気振りに感心する。

30分ほどで前袈裟丸山頂へ。標識は袈裟丸山と書かれてあるが、後、中、奥袈裟丸と続き、袈裟丸山はその総称とのこと。樹林越しに谷川連峰の山々や武尊山、至仏山が望まれる。少し下った樹林越しからは皇海や康申山からのギザギザ尾根が確認できた。Sさんは後袈裟丸への道に色気を見せていたが、下山路が長いのでここまでとして下ることにした。

山頂直下の急坂を過ごせば、あとは緩やかな歩きやすい笹原の道で、ダケカンバ林が広がっている。尾根が広がる1650m鞍部にはカマボコ型の避難小屋とトイレがあり、キャンプをしたくなるような気持ちのいいところだ。

小丸山へ登り返すあたりから、ようやくアカヤシオが点在するが、どうも最盛期は過ぎてしまったようだった。期待していた群生地というのは尾根から沢に下っていく斜面にあるらしい・・・

展望の小丸で特に目を引いたのは、緑の山並みの中でひときわ目立つ赤茶けた山肌の足尾の山。それでもかつてに比べると山の緑はずいぶん回復しているとのこと。数年前にNHKのテレビ番組で足尾山地の緑の復活と人々の植樹活動を知り感銘を受けたことを思い出した。

しばらく進むと突然無木立の平地となり、小さな石積みの山が点在する賽ノ河原へ。なにやら弘法大師縁の言い伝えがあるらしい。ここで折場登山口へのコースと別れ、塔ノ沢コースを下る。

地元には「小中の山は尾根歩け、沢入の山は谷歩け」という諺があるほどで、新緑が美しい沢沿いのコースは緩やかでとても歩きやすい。このコースのもう一つのお楽しみへと向かう。塔ノ沢が西に流れを変える1150m付近の大岩を登ると、全長3.8mの石造の寝釈迦像が横たわっているのだ。造立年代はおよそ江戸時代中期のことで、足尾銅山で死んだ囚人を弔うために彫られたという言い伝えもあるらしい。

さらに沢沿いをどんどん下っていくのだが、何度も渡渉を繰り返す。テープやケルンの標がなかったら、すぐに道を見失いそうだ。登山口に降り立ってからさらに林道を5キロ歩き、ようやく沢入駅に戻ったときには暑さでバテバテだった。

途中から電車の時間が気になったが、後袈裟をパスしたおかげで何とか間に合った。観光客で賑わう電車にのり、渓谷沿いの車窓を楽しみながら長い道のりを帰路についた。

 

 

 

 

折場登山口6:55-折場橋7:10/7:25-二俣8:35/45-登山道10:35-袈裟丸山11:05/45-小丸山12:30/40-賽ノ河原13:15/20-寝釈迦像14:00/10-登山口14:40/45-沢入駅15:35