ブナの沢旅ブナの沢旅
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2008.04.27
小沢山~稲子山~坪入山~窓明山
カテゴリー:雪山

2008年4月27-29日

 

1年前に膝痛のため変更したコースを、少し修正して再度挑戦してきた。静かなブナの森と白銀の山稜が絶妙に組み合わされたすばらしい縦走を楽しむことができた山旅となった。

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4月は異常に忙しく2泊3日の縦走などできるかどうか不安だったが、なんとか当日を迎えた。ところがやはりというか、早朝の電車で気がついたら待ち合わせの浅草駅を寝過ごし、始発の東武線に乗り遅れるという失態をしでかす。Y さんは当然むっとしている。会津高原駅で接続しているバスに乗れないので、タクシー代を払うことで場を取り繕う。しょっぱなからヤレヤレだったが、車窓の移り変わる景色を眺めているうちに気分も切り替わる。

タクシーで林道に入れるのではないかと期待したが、あいにく除雪作業の真っ最中で、林道入り口から歩き始める。フキノトウを摘みながら山毛欅沢出合へ。今回はテンプラ油を持参して楽しみにしてきたのだ。

ここは去年下る尾根を間違え苦労して降り立った懐かしい場所。今回は1436mから南東に派生する「三本山毛欅峠」の尾根を登って去年どこで間違えたか確認するつもりだ。笹薮はそれほど悪くなく、しばらく登るときゃしゃで端整なブナ林も現われる。

石標があったりブナに切り付けがあったりで、往年の峠道がしのばれる。1000mを越すとしだいに雪もつき始めアイゼンをつける。ところどころ急斜面で12本爪にしてよかったと思った。

1225mの平らなピークについて振り返ると、登ってきた尾根はみえずに左側から派生している尾根が目に入ることがわかった。去年はそちらの尾根に引き込まれてしまったのだ。二つの尾根は並行して走っているのでコンパスでは違いがわからない。

後知恵で地図をみれば納得できるのだが、落とし穴だなと思う。ここからは気持ちのいいブナ林の尾根が続いており、三本のブナが稜線の入り口で出迎えてくれた。なつかしい山毛欅沢山を背後に小沢山へと向かう。

小沢山はだだっ広い台地の山で、広い尾根を少し下ったところの平地にテントを張って初日の行動を終えた。天気は予報に反して曇り空だったが、翌日はきっと晴れるはずと信じてシュラフにもぐりこんだのだが・・・

起きて朝食をとっているとテントをたたく音がし始めた。換気窓から外をのぞくと雪が降っている。風もあって吹雪いているのでしばらく様子を見ることにした。やまなかったらどうしようと、不安がよぎる。寒いので再びシュラフを取り出し、あれこれと考えを巡らす。

悪天候のなかで稲子山の急斜面を登るのは不安だし、坪入方面まで進んでしまうとエスケープルートもなくなる・・・そこで9時までに天候が回復しなかったらコースをかえて去年歩いた山毛欅沢山から恵羅窪山を往復しようということに。とっても素敵なブナの尾根だったからもう一度歩くのも悪くないと自分を納得させる。

そうと決まって気が楽になり、これから行きたい山の話に話題をうつしているうちに外が静かになってきた。雪がやみ、雲の合間からは太陽が見え隠れしている。今から出発の準備をするとタイムリミットぎりぎりだ。少し迷ったが、予定通り進むことにした。

予定より3時間遅い9時半に出発。しばらく行くと尾根が広がりまるで森の中にいるようだ。ここに泊まればよかった。前方にはどっしりとした山容の稲子山がみえてきた。あの山を登るのかぁ~。1400mからは地図で予想していた通りの急斜面が続き、ピッケルを差し込みながら一歩一歩慎重にステップを踏んで登った。

山頂直下は雪庇が切れ落ちたような大きな壁ができている。下から見上げると乗り越えられるかどうか心配だったが、近づくと見た目ほど悪くなく、左側の段差を容易に越えて稲子山の南峯に立つことができた。今回のコースで一番心配していた所をクリアできてほっとした。

ここから150mほどを急降下すると、尾根はたおやかに広がり、大好きなブナのプロムナードとなる。やっぱり進んでよかったねぇとホクホクの笑顔。小さなアップダウンを繰り返しながら進むと坪入山が大きく迫ってきた。

標高差は350m。重いザックと重い足取りの身にとってはつらい登りだ。けれど、どんなにつらくても足を一歩ずつ前に出していればなんとなくたどりつけるもので、3時前に樹氷のシラビソに囲まれた山頂へ。これまでの優しいブナの山並みとは趣がかわり、違う山域に来たような感じがする。

朝から歩いてきた尾根がたおやかに波打って見える。出発は大幅に遅れたが、なんとか予定通りに進むことができたようだ。大きな仕事をやり終えたような安堵感につつまれながら、緩やかな尾根を快適に下っていくと、窓明山が大きく姿をあらわしてきた。

手前の1775mピークまで進みたいところだが、二つの山を越えて疲れが出始めたので1670m付近の樹林の隣にテントを張ることにした。振り返ると坪入山と並ぶように高幽山がどっしりと構えている。三岩岳から会津駒へ続く稜線も大きい。そして鮮やかな夕日が落ちていく。穏やかで静かな夜だった。

とても冷え込んでいるが快晴の朝だ。もう帰らなければならないのかと少しさびしい。山岳会山行の朝はあわただしかった印象があるが、のんびり歩くようになってからは、朝からゆったりとしてしまう。

出発の仕度をしていると坪入方面からショートスキーの三人パーティーがやってきた。いつも誰にも会わない山行ばかりなのでなんだかうれしい。奥只見から袖沢乗越経由で丸山岳を経て三岩岳まで行くのだという。すごいなぁと話を聞くとトマの会だという。納得。

シラビソの樹林をくぐりながら窓明山へ。平たい台地の山頂からは360度の雄大な眺望だ。眼前の三岩岳はスキーヤーならずとも涎の出そうな魅力的な尾根をいくつか引いており、思わず予定を変えて行きたくなる。反対側にはこれまで歩いてきたブナアルプスともいえる尾根がエレガントに長い尾を引いており、はるか先にはピラミダルな山容の城郭朝日山が顕著に聳え立っている。

私のささやかな夢は黒谷川源頭を取り囲む尾根を会津朝日岳から城郭朝日山まであるくこと。いつかきっと実現したい。あれこれ想いをめぐらしながら窓明山をあとにする。

家向山へ続く尾根は真っ白な雪原のようで、真っ青な空とのコントラストが美しい。踏跡のない真っ白な斜面を駆け下りはじめたYさんに、先を越されたと文句を言うと譲ってくれた。

両手を挙げはしゃいで駆け下りる。最高に気持ちがよかった。ありがとう。しばらく下ると痩せ尾根となって登山道が現われるが、1600mあたりからは再び尾根が広がり北側の斜面一帯 は大きなブナが点在するすばらしい森。登山道は尾根の南側を通っていて森からはずれているのが残念だ。

尾根を外れて雪のたっぷりついたブナ林を散策気分で下っていくと家向山への急な斜面が迫ってくる。重い足取りで登り返し、山頂下の斜面の緩くなったところを南東方向へトラバース。家向山に続く南側の小ピークから派生する尾根にのる。

1450mからははっきりとしない尾根が三本派生しており、地図と地形を慎重に確認した。再びブナの緩やかな尾根をくだって巽沢山を目指すが、しだいにブナ林とも雪ともお別れとなってアイゼンをはずす。

ずんぐりと目立たない山頂の巽沢山からはほぼ完全に登山道が現われ、落ち葉で滑りやすい急な登山道をあっという間に下って保太橋沢手前の車道に降り立った。春の日差しは強く、汗びっしょりだ。1時過ぎのバスまで時間はたっぷりあるので、窓明の湯に立ち寄りさっぱりとして帰路についた。

歴史と文化と豊かなブナの森がある会津の山々、ますます好きになりそうだ。

27日 小立岩林道11:10-山欅沢出合11:40/55-1436m稜線15:30-小沢山16:30-1430mBC16:40

28日 BC9:20-稲子山11:30-坪入山14:50/15:05-1685mテンバ15:50

29日 BC6:30-窓明山7:15/30-家向山手前1485m8:10/30-巽沢山10:00-登山口11:00