ブナの沢旅ブナの沢旅
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2007.07.01
麝香熊沢
カテゴリー:

2007年7月1~2日

 

5月の大行沢で味をしめたJR大人の休日3日間12000円キャンペーンを利用して、東北の易しくブナのきれいな沢を探して選んだのが麝香熊沢。遡行記録に乏しく、遡行図もないが、昨年の岳人で紹介されていて名前とともに気になっていた沢だった。

始発の新幹線でくりこま高原駅へ行き、駅レンタカーで湯浜温泉へ向かう。駐車場についたころには小雨が降りだしたが、晴れという天気予報を信じて身支度をする。温泉へ向かう坂道を下るとコンクリートの橋がかかっていて、そこから入渓。事前情報どおり、渡渉を繰り返しながらの大岩のゴーロがしばらく続くが、見上げれば、周りの森が美しい。

只見の叶津川の雰囲気に似ている。硫黄のにおいがすると思ったら、右岸の斜面下に温泉が沸いている場所を発見。かなり熱い湯だった。赤沢出合で休憩。しばらく進むとようやく変化があらわれ、ゴルジュ帯になる。両岸がつるりとして傾斜もあり、とても取り付けそうにない。滝と釜が何段か連なって沢は東に角度を変えているため、高巻きは左岸からとりつく。距離は短かったが、根曲がりだけの藪がひどくて苦労する。遠回りでも右岸側の方が足元すっきりで楽だったかもしれない。密藪から解放され、無事に沢に下りたときにはほっとした。ゴーロ、ナメ、ゴルジュを繰り返しながらようやく3時前に二俣に着いた。左俣の出合はナメ滝が何段も続いていて思わずこちらに入りたくなる。ザックをおいて左俣のナメ滝を登ってみる。フリクションがきいているので気持ちいい。

少し遊んでから本来の右俣へ。できるだけ先に進んでおきたい。二俣から先はようやく待望のナメとナメ滝の連続で、顔はほころびっぱなし。次々とあらわれる数メートル規模の滝はすべて登れて気持ちがいい。

一箇所、深い釜を持った滝の前でどう突破しようか立ち止まって周りを見渡していたら、突然Sさんが釜にドボン。危険なところでなくよかったが、気をつけなければいけない。疲れも出始めてきたようで、テンバを探しながら進む。1200mあたりから次第に両岸が開けてきて、樹林帯を抜け草地模様に。ようやく1250m地点の右岸の少し段丘になっているところに一張り分の平らな草地がみつかった。焚き火ができないのが残念だが、翌日の行程が楽になったのでよしとする。夕日も出てきて、なかなか見晴らしのいい場所だ。

翌朝は5時に起床。曇っていて視界が悪い。天気予報では午後から雨。何とか下山までもってほしいと願いつつ7時前には出発。相変わらずナメが続くが、このあたりの岩盤は赤みを帯びている。すぐに1270mの二俣となり、左沢に進む。再び沢床は黒っぽくなり、ナメ滝が枯れることなく続く。壁のような滝でふさがれ左を小さく巻くと草原に。思わず歓声。その上雪渓がかなり残っていて、沢沿いの斜面にはなんと水芭蕉が咲いている!予想外の光景に思わず興奮してしまう。写真を撮ったり観賞したりして休んだあと再び沢沿いを登っていも

雪渓に覆われるようになったため、いよいよ沢を離れコンパスで北の方角を逐次確認しながら藪にはいる。少し進むと藪を抜け、再び広い草原に出た。とても気持ちのよいところで、晴れていればすばらしい見晴らしに違いない。さあ、これからが本格的な藪こぎだ

と覚悟をして突入したが、うまくルートがとれたのか、30分もかからないうちに登山道にでることができた。結局、ハーネスとロープはザックにしまったままだった。

これまで大行沢、柳沢とも天候不順もあって行程を短縮せざるを得ず消化不良気味であっただけに、完投できたことがうれしかった。

歩きやすい登山道を200mほど登って1575mのピークに至る。風も強く寒いので歩き続ける。視界もないので栗駒山はパスして湯浜温泉に下ることにした。途中には小さいながら池塘も点在し、もう少ししたらお花畑がきれいだろうなと思いながら木道を下っていく。すると登山道の前は大雪渓に。かなり広い幅で下まで続いているようでこれが地図に出ていた残雪期の滑降コースのようだ。雪渓をこえ、1000mを過ぎたあたりからようやく期待していたブナの森となる。ブナの巨木が多く原始の森の姿をとどめている。この森は湯浜温泉に下るまで緩やかに高度を下げながらずっと続いていた。まさにブナの沢旅にふさわしいフィナーレであった。

下山後は登山道を少し戻ったところにある湯浜温泉に立ち寄る。398号線ができるまでは、温湯温泉から4時間歩かなければたどり着けないほどの秘湯だったらしい。素朴なたたずまいの温泉を独り占め。おなかがぺこぺこと途中で立ち寄ったところは食材にこだわりをもった店で、蕎麦と岩魚のテンプラがとてもおいしかった。素敵な沢とブナの森、いい温泉とおいしい蕎麦。麝香熊沢は思い出に残る沢になりそうだ。くりこま高原駅からは最速の新幹線に乗り、2時間ほどで東京に帰ってくることができた。

入渓10:30~赤沢出合11:50~960m二俣14:50~1250m幕営