ブナの沢旅ブナの沢旅
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2007.03.31
赤沢山~宵ノ越山~丸山乗越~白毛門
カテゴリー:雪山

2007年3月31日〜4月1日

 

雪のブナの森を歩きたくて、電車で手軽にいける赤沢山から白毛門のミニ周遊コースを計画した。雪山初級者にとって白毛門は少し心配だったが、この時期になると登山者も多いようで、トレースがついていてまったく問題なかった。ホッ!

新幹線と上越線を乗り継いで土合駅へ。駅から歩いて土合橋駐車場へ向い、ここから適当に柵を乗り越えて急斜面に取り付く。下は雪がほとんどない。サルの群れがうろうろしていてちょっとひるむ。

小一時間ほどで尾根に乗るが、その直下2,3歩が滑りそうなつるっとした泥岩。逃げるのも悪そうだし、せっかく補助ロープ持ってきてもらったんだからと、先行したYさんにロープ固定のやり方を偉そうに指示してごぼうで登る。

1000mあたりからは傾斜もゆるくなり、雪もついてきたのでワカンを装着。土合駅裏から取り付く尾根が合流する1100mで初めて赤布をみる。以降時々つけられていて安心でした。

尾根を境に南側はブナ林、北側はシラビソと林相が顕著に分かれている。しばらくすると左手に台地状のブナ林の広場があらわれ、わくわくしてくる。高度を上げるにつれガスってきたが、かえって森が幻想的で美しかった。

緩やかな尾根が再び急斜面となり、あえぎながら登っていくと赤沢山についた。思ったより時間がかかってしまった。展望はいまひとつだけれど、まずは第一目標をクリア。控えめなブリキの看板が胸元の高さにかかっていたということは、あまり雪は深くない。このコースを知ったきっかけの雑誌の写真では看板は雪に埋もれていたもの。

予定していた丸山乗越まではたどりつけそうもないが、これからが素敵なブナの森を歩くメインコースなので、とまり場はたくさんあるはず。小雪が舞い始め、視界はますます悪くなってあたりは真っ白。忠実に尾根をたどれば間違いないけれど、時々広くなったところではこまめに地図とコンパスで確認。

それでも1380m地点では尾根通しに進んで少し油断しているうちに、コンパスが反対方向をさしているのに気がつく。地図を見ればたしかに広がった尾根は二つに分かれている。まず現在位置が確認できるところまでもどることに。

そうしたら二俣らしきところにちゃんとテープがあった。視界があれば間違うこともないのだろうが、方向が確認できてほっとする。緩やかな上り下りを繰り返しながら宵ノ越山へ。期待通り、素敵なブナの森が広がっている。予報があまりよくなかったので最後まで迷ったが、来てよかった。

相変らず雪が舞い、ガスであたりは真っ白。緩やかな上り下りを繰り返して、あとひと登りで丸山の鞍部に。鞍部というより広い平らな森の中のよう。時間的には予定していた乗越まで行けそうだったけど、いい感じのところだったのでここで泊まることにする。

それぞれ二又の幹をもつ双子のようなブナの木の間にザックをおろし、今晩はこの空間が全部自分のものと、わくわくしながらテントを張る。ビールで乾杯し、一息入れていると一時やんでいた雪が雨となってテントを叩きだした。

ここで行動を終えてよかったねといいあう。遠くでは雷鳴が響き、ときどき辺りが光ったりしてヒヤッとするが、夜中には静まって、外に出ると雲の切れ目から月が出て星も見えてる。それに昼間より暖かい。

翌朝、期待して外をのぞくとあたり一面霧の世界。ちょっとがっかりだけど、予報がかんばしくないなかで、雨さえ降らなければいいというのが今回の山行だった。テントをたたもうと外にでると、なんと人の通った跡がある。

中で食事をしていて気がつかなかったらしい。こういう天候のもとではかえって心強い。これで白毛門行けるね、なんて喜ぶ自分。相変わらずホワイトアウトみたいな状況だが、時々ガスがすうっと晴れてすべてが鮮明に。このコントラストが面白い。ひと登りで丸山の山頂にたつ。だだっ広くのっぺりしていて乗越への尾根がわかりにくい。トレースから先行パーティもうろついたことがうかがえる。

コンパスで方向を確認して目を凝らすと尾根らしい筋がうっすらと見えた。晴れていればなんてことないのに。でも、ガスっているせいで両日ともにルート確認のいいトレーニングになった。快適に下っていくとすぐに鞍部に。

ここも素敵な泊まり場になりそうだ。東黒沢からナルミズ沢へはここを通っていくんだね。夏にまた来るからねと誓って白毛門へ向かう。夏の沢と雪山ってこんな風につながってるんだなと思うと楽しみが増してくる。

ここから400mほどの登りだが、何しろトレースがあるので、随分と楽ができたと思う。一度ガスが少し晴れたときに前方に先行パーティが見えた。たった一日なのに心細さも手伝って人恋しく、追いつけたらお礼を言いたいと思ったけど、あわずじまいだった。ところどころ、スキーで滑り降りたら気持ちのよさそうななだらかなスロープがでてきて、いいなぁ、いいなぁの繰り返し。

1500mあたりからは緩やかな稜線歩きが続く。再び高度を上げ始めたあたりで行く手の雪の斜面が数メートルにわたって崩れていた。稜線もところどころ亀裂が見える。しだいに天候も回復して太陽が出てきた。

あわてて日焼け止めクリームを塗って最後の急斜面をのろのろ登っていくと途中で単独行の中年男性とすれ違う。白毛門を登ってこれから赤沢山に向かうとのこと。やはりきれいな森に魅せられての再訪だという。同じ気持ちを持つ人と話すのはうれしいもの。前方が開け、人が見えてきた。白毛門についたようだ。

短いスキー板を担いだ3人パーティの若者がどうしようかと迷っているようだったので、時間の余裕もあることだしとても素敵なコースだからぜひ行くといいよと背中を押す。しばらく休んでいるとどんどん人が登ってくる。

さすが人気の山だということを実感する。でもこの時期、悪天候でなければ危険もなさそうだ。ほとんどは日帰りピストンのようだけど、ちょっと尾根を外れれば素敵なところがあるのにもったいないと思う。下山もトレースがしっかりあることを確信。まだまだトレースだのみだけど出発点はこんなものだろう。

ワカンをアイゼンに変え、さあ、あとは一挙に下るだけ。一箇所、山頂下の急斜面はバックステップで降りたけれど、見上げると相当の急斜面。けれど、2月の足拍子でTKさんに特訓を受けたおかげで、気分的にも余裕がもてた。

尾根が広がってるところでは尻セードですべり降りたりして楽しさ満杯。昨日から歩いてきた尾根を左手に見ながら、あそこを歩いてきたんだ、きれいだったね、けっこう頑張ったよねと、晴れ晴れしい気持ち。

左手にはジジ岩、ババ岩が。まったく雪がついていない。1100m付近からは白毛門沢の大滝が見えてきた。ごうごうと水音が聞こえる。沢沿いは雪もあまり見えない。今にも沢登りできそうな錯覚を覚えるくらいだが、左岸側の山の沢筋の雪が今にも雪崩れそうに見える。などと沢を観察しながら1000mくらいまで下ると雪もなくなり、アイゼンをはずして木の根が張って歩きづらい登山道を駆け下った。

ちょうど2時のバスに乗ることができ、湯檜曽で降りて運転手さんが教えてくれたバス停近くの、湯の陣というザック姿には不釣合いな立派なホテルの温泉に入る。でもほとんど貸しきり状態の高級温泉が1000円で、ホテルの人も親切だから悪くないと思った。

4月1日からバスのダイヤが改正され、水上から先へはすべて水上止まりにして上毛高原駅へは一本化して運行するようだ。乗客が少ない路線を維持するための合理化策なのだろう。

自分で計画して実行することの楽しさを実感した山行となり、かつトレーニングにもなったのでこれからも積極的に実行したいと思った。夏はブナの森を流れる沢をのぼり、冬はその源頭の稜線を歩く。これが自分のスタイルかなと感じられた有意義な山行となった。

 

3月31日 土合橋駐車場9:00~尾根9:45~赤沢山12:50~丸山下幕場15:30

4月1日  幕場7:55~丸山8:20~丸山乗越8:55~白毛門10:30/11:00~土合橋駐車場13:40