ブナの沢旅ブナの沢旅
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2006.05.03
芦廼瀬川
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2006年5月3ー4日

 

MaT、MiTパーティ恒例の連休の南紀の沢シリーズで、今回は募集のメールが入ってきた。百名谷の一つ、芦廼瀬川に行くという。いつもながらの好奇心で、どんなところか調べてみると、山渓の沢登りガイドブックに紹介されており、淵とゴルジュのよく発達した4級レベルの沢だと知る。それで自分には無縁と思い一旦は忘れたのだが・・・

4月に入り、会の沢オープニングの宴会でMaTさんが近くに座ったので、質問がてら私でも行けるのでしょうかねぇ、などと水を向けると、あっさりと大丈夫という返事。その後は気持ちが揺れ動いていると、MaTさんから、参加者各位あてに計画の打ち合わせに関するメールが届く。えっ、参加するって言っていないのにと・・・ますます、心は揺れ動く。

何人かに相談すると、みんな、いい機会なんだから行けばいいという。こうして1年分悩んだ末に参加することに決めたのだった。その後主催者のMaTさんが事情により参加できなくなったのはとても残念だった。沢での初めての泳ぎに備え、MiTさんにアドバイスをもらいながら、ウェットスーツやライフジャケットやらの装備を調達してその日に臨んだ。

2日の7時40分に本厚木に集合し、元会員のYSさんの車でHYさんと3人、まずは富士市に住むリーダーのMiTさんをピックアップして、一路南紀へ。さすがに遠く、高速を降りてから一般道を南下してから迷ったりで、入渓点に近い上小川集落に着いたのは、すっかり夜が明けた翌朝の7時過ぎだった。こうなると仮眠もなにもない。めいめい朝食を済ませ、装備をつけていざ、出発。

林道を七泰ダムまで歩き、河原に下りるのだが、トラバースするところで足がすくんでしまい、追い上げられて結局ロープのお世話になって降りる羽目に。出だしからこれでは先が思いやられる。エメラルドグリーンの水と白い大岩が散在する光景を目にして、去年の夏にいった打込谷を思い出した。あの時も苦労したなぁ。

しばらく進むと右手前方に巨大な岸壁があらわれ、大きな釜を持つ10mほどの滝、七泰ノ滝が見えてきた。まさか、さっそくこの釜を泳いで滝に取り付くのだろうかと思う間もなく、あっさりと右岸から巻いたのでほっとする。リーダーはしきりに濡れたくないなぁと言っているので、あまり泳がずにすみそうと期待感を抱いてしまう。

このあとも5m、10mの滝が続くが、その上の4m滝も合わせて高巻き、しっかりした踏み跡をたどって、さしたる困難も無く沢床に下った。その先は見上げるほどの巨岩帯となり、思わずため息。疲れそ~。大きな滝はしばらく無いが、ナメや小滝が続く。小滝とはいえ、すべて大きく深い釜をもっており、胸まで浸かったり、きわどくへつったり高巻いたりで、簡単には進めない。

ウェットスーツに撥水性の上下ウエアと、防寒には万全の態勢で望んだおかげで寒さは感じず、しだいに水に浸かることへの抵抗も無くなっていった。ナメはしだいに岩盤帯となり、釜を持つ滝とは趣の異なる美しさをかもし出している。渡渉を繰り返しながら進んでいくと、前方左手にまたしても巨大な岸壁が聳え立っている。ここが200mほど続く「百間嵓」のようだ。

小滝、釜、淵が絶え間なく続き、ようやく慣れか諦めか、自分の境遇を積極的に受け入れられるようになった。右岸にヒイラギ谷を見送ると、またしても大淵の連続だ。ヒイラギ大淵ではいよいよ泳ぎを覚悟したが、右岸壁沿いに胸までの水をこぎながら通過できた。

そしていよいよ今回のハイライトである焼嵓淵だ。目が届く限り先の方まで、緑色に光る水をたたえた長い淵が続いている。けれど流れは無く、静謐で神々しい感じさえした。さあ、これからここを泳いで通過するのだと、気持ちを奮い立たせる。

何ごとも初体験というのは不安と期待が入り混じるもの。ネオプレーンの上着を着込み、ライフジャケットを羽織ってザックを背負い込む。MiTさんとYSさんはなんでもないように、すいすいと先に進んでいった。

つづいて飛び込んだのはいいのだが、浮力がありすぎて泳ごうにもバランスが崩れてしまう。一瞬あわてたが、態勢を取り直して右岸の側壁に身を寄せ、あとはヘツリ泳ぎをしながら100m泳ぎ切ることができた。なぁ~んだ、けっこう大丈夫ではないか。案ずるより産むがやすし、だった。

筋状の滝となって出合う上竜宮谷を左手に見送ると、淵の出口には7~8mの斜曝が。YSさんがロープを引いて空身で釜を泳いで直登し、続いてMiTさんがザックを背負ったままYSさんのザックを浮き袋にして泳ぐ。そのあとの2人はザックをロープにかけて浮き袋にして泳ぐ。ザックに乗っかるとバランスが悪くなるので、のらずに手をかけて進むようにとMiTさんからのアドバイス。ロープで引いてもらっているので楽なことこの上ない。いやぁ~、楽しい。

水にも慣れ親しんできたところで、この谷の核心部である8m滝の釜の前に立つ。ここもYSさんが空身でロープを引いて泳ぎ、滝身に取り付いてクラック状の右手を直登。下部に足がかりがなさそうだったが、つづくMiTさんがシュリンゲで足場を作ってくれた。

取り付きまでロープに導かれ泳いでいくと、滝は轟音を響かせ、両岸が迫ってS字状の淵は薄暗い。なんとか水辺から這い上がり、ザックを担ごうとするが、ロープで上に引っ張られてしまいもたつく。ようやく態勢を整えて、最初の一歩を踏み出そうとするがうまく立ち込めない。

シュリンゲに足をかけ、ようやく少しはいずり上がると、上のバンドにいる二人が見えてきた。しきりに手で合図を送っている。気がつけば、ロープはカラビナに通しただけで、固定されていなかったのだ。あわてて八の字結びになおして、ほとんどごぼう状態でバンドに這い上がる。

ロープをつけたまま前方にある安定した岩盤まですすみ、そこで全員が登り終えるるのを待った。YSさんのザックが取り残された格好になったようで、最後に本人が滝下まで回収にいったようだった。この滝を突破するのに1時間ほどかかった。

全員がそろったところでリーダーが、これでもう、むずかしいところは無いと言った時には、ほんとに安堵すると同時に、多くの手でサポートされたとは言え、焼嵓淵を「果敢に」泳ぎ、続く核心部の滝を無事越えられて、心の中でバンザイをしたのだった。

その後沢の様相は一変し、ナメや小滝が続いて流れは緩やかとなり、岩盤帯が続くようになる。沢が東に向きをかえるトビワタリ沢を過ぎたあたり、右岸の一段高くなったところにちょうどよいテンバを見つけ、一日の行動を終了。

YSさんは今晩のおかずの調達を期待され、さっそく釣竿をもって消えていった。一方、テントを張ったり装備を解いたりしているうちに、他の二人は、はやばやと流木をあつめ焚き火を起こしている。ゆっくりと暗闇が訪れるなか、勢いよく燃える焚き火を囲んで、エキサイティングな一日を振り返る。

怖がらずに体をもっと立てなさい、小さな沢をたくさん登ったら大きな沢も経験しなさいなど、MiTさんからはアドバイスだけでなく、豊富な経験をふまえた興味深い話をたくさん聞くことができ楽しかった。

100名谷制覇にも触手を伸ばしているようで、すでに50谷をものにしたそうだ。100名山よりも何十倍もチャレンジングなことであり、実際には不可能でも、そういう熱望「をもっていつまでも元気で楽しめたら、素敵な人生だと思う。一睡もしなかったため、早々にシュラフにもぐりこむや、あっという間に夢の世界へ。

気持ちも足取りも軽く出発。距離的にはまだ半分残っているが、さしたる悪場もなく、順調に進むと広い川原になってくる。緩やかなナメと岩盤帯が交互に続き、大きな淵が点在する。エメラルドグリーンのプールのようで、暑いときだったら飛び込んで遊びたくなるに違いない。

右岸に連曝をかける細谷をやり過ごすと、つり橋が見えてきた。その先には蛇行する美しいS字の淵が見えてくる。朝日を浴びてきらきら輝いて見える。ここはしっかりした巻き道をいく。

さらに楽しそうなプール状の淵を過ぎると、左岸に笠捨谷がゴルジュとなって流入している。奥には立派な滝をかけており、こちらの沢を詰めてみたいなぁと、YSさん。MiTさんも「岳人」で見覚えのある沢だという。ここでゴルジュを一跨ぎして記念写真を一枚。

もうみんな十分堪能した感じで、リーダーもあとはどの枝沢を詰めて林道にあがってもいいだろうという雰囲気だ。すぐに大きな釜を持った2mほどの狼返ノ滝が見えてくる。ここは釜を腰まで浸かって滝の近くまですすみ、左壁を越えていった。

その後は平地となり、ここで新しい足跡を見つける。どうも人が入っているようだと話していると、前方の堰堤に釣り師が見えた。すぐに彼らに追いつき、しばし歓談。釣ったアマゴとヤマメを見せてもらい、ついでに写真を取らせてもらう。人の釣った魚を写してどうするのと、呆れるHYさん。ヤマメは放流しているのではないかという。いよいよ遡行を終わらせるべく適当な枝沢を探して進むと、怒田谷が緩やかな傾斜で流れ込んでいる。

奥多摩の沢の風情で快適に遡上し、最後は左手のガレ場をすこし登り詰めると、急に立派な国道にでた。こうして2日間の山行を無事終えることができた。とはいえ、まだ4時間の林道歩きという最後の難題が残っていた。釣り師の人たちとも、タイミングが合えば車に乗せてもらうよう話はつけたのだが、かなり下の石楠花公園に車をおいてあるという。

仕方ないかと諦め、歩き始めること20分ほどで後ろから車の音が。おもわず身を乗り出して両手を広げ、体をはってヒッチハイクに成功。あまりの強引さに男性陣はすこし引いている感じだったが、運転していた家族づれのお父さんに頼み込み、営業トークの得意なMiTさんを乗り込ませることができた。少しはパーティーメンバーとしてお役にたちたいという一心の行為だったのだ。

こうして2時間ほどを節約し、つぎなる目的地である果無山脈の八木尾谷の入渓点を探して車を走らせたのだが、また迷ってしまった。適当なところでテントを張ろうと、八木尾谷に続く道の行き止まり近くの民家の空き地を使わせてもらえないかと、家のあるじと掛け合ったところ、行政指導でキャンプは禁止されているとのこと。とくに世界遺産の指定を受けてからはきびしくなったそうで、代わりに近くの有料キャンプ場を教えてもらう。

というわけで、芦廼瀬川を果敢に遡行した「沢や」パーティーは急きょ、にわかキャンパーとなって温泉付きの快適なキャンプ場に紛れ込んだのだった。

(MT、HY、YS、ako)

3日 七泰ダム8:40 -七泰の滝10:00-百間グラ11:200-焼グラ淵12:40-8m滝14:35/15:30-テンバ16:30

4日 七泰ダム8:40-七泰の滝10:00-百間グラ11:20-焼グラ淵12:40-8m滝14:35/15:30-テンバ16:30

4日 テンバ7:00-S字の淵9:20-笠捨谷10:15-怒田谷11:30-林道11:50